Enigmaは3つ、もしくは4つのローターを用いて換字を行う暗号器で、写真の手前のタイプライター状のキーボードに平文を入力すると、その上の文字盤に暗号化された文字が点灯するようになっている。また、逆にキーボードから暗号文を入力すると平文の文字が点灯する。中央の奥に見えるのがローターの初期設定を行うリング(写真は4ローター機)である。

Enigma暗号器の構造。3つの換字ローターを通して暗号化を行う。(出典:Bletchley ParkのTechnical Article "The Abwehr Enigma Machine")

この図に示すように、Enigma暗号器はエントリーディスクの文字から3つ換字ローターを通し、リフレクタによって反転され、また、3つの換字ローターを逆の通ってエントリーディスクに戻る回路を構成する。エントリーディスクの各文字の端子はキーボードのスイッチを経由して通常はランプに接続されているが、キーが押されると電池に接続されるようになっており、押されたキーに対応した暗号文字のランプが点灯する仕組みになっている。

そして、右側のローターは1文字ごとに1ポジション回転し、1回転すると中央のローターを1ポジション進め、中央のローターが1回転すると左側のローターが1ポジション進み、キーを押すごとに変換される文字が切り替わるようになっている。(但し、Enigmaには多くのバリエーションがあり、ここで説明したのは一番基本的な構造である。興味のある読者は、Wikipediaなどを参照されたい。)

使用するローターは3つであるが、暗号器には5~8個の異なる接続のローターが付属しており、どの3つを選択してどの順序で挿入するかによって、どのように暗号化されるかが変わる。また、暗号化にあたり各ローターをどの初期位置から開始するかは任意に選ぶことができるので、初期位置の違いにより、合計26×26×26の17576通りの異なる暗号化ができる。従って、このEnigma暗号を解読するためには、各ローターの挿入順序と初期セッティングを推測することが必要となる。