デジタルカメラは、撮影した画像をカメラ内でJPEGやTIFFに変換する「現像」という処理を内部で行っている。しかし、デジタル一眼レフカメラの普及にともなって、現像処理を行う前のデータ(RAWデータ)をユーザーがパソコンで自由にパラメータを設定して現像処理を行なうことに注目が集まるようになった。パソコンでのこの処理を行うソフトをRAW現像ソフトというが、カメラメーカーが自社で添付している製品以外にも多くのサードパーティーや個人プログラマーが制作したソフトが販売、提供されている。アドビ システムズの「Lightroom」やアップルの「Aperture」、市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX Developer Studio 3.0」、ソフトウェア・トゥーの「DxO Optics Pro」などが有名である。

このような状況の中で、新たなMac用RAWデータ現像ソフト、ArcSoftの「DigitalDarkroom for Mac」が登場した。ArcSoftはこれまでデジタル写真、ビデオの画像編集、ファイル管理ソフトの開発、販売で実績を持っており、その経験を活かしてRAW現像ソフト分野への参入となった。日本での販売元はジャングルが担当している。

DigitalDarkroomは独自の技術によって実現した"圧倒的な高速処理"が最大の目玉で、他社製品の約9倍という速度での処理が可能だと謳われている。また、最近のRAWデータ現像ソフトのトレンドでもある、RAWデータ以外の画像ファイル、JPEG、TIFFの補正にも対応している。現在はWindows版が先行販売されていて、Mac版は8月21日よりダウンロード販売が、9月21日よりパッケージ版の販売が開始される。ジャングルのサイトでは、機能制限はなく、使用日数制限のみの体験版が先行配布されているので、今回は新たに登場したMac版でその実力を検証してみたい。ただし、今回は体験版でのレビューなので、その点は予めご了承いただきたい。

シンプルな構成

インストールは専用のインストーラを使用するタイプなので非常に簡単。ソフトをインストールする場所を設定するだけだ。デフォルトではアプリケーションフォルダが指定されているのでそのままインストールすればいい。インストールが終了すると、デスクトップにエイリアスが自動的に作成されるので、これをダブルクリックして起動することができる。必要とされる動作環境はMac OS X 10.3、10.4でPowerPC G4以上のプロセッサ、512MB以上のメモリ、50MB以上のハードディスク空き容量、アップデートのためのネットワーク環境となっているが、推奨環境はPowerPC G5、Intel CoreDuoプロセッサ、768MBのメモリ、1GBのハードディスク空き容量となっているので、高速な動作を期待するなら推奨環境で動かすようにしたい。

起動した状態。画像編集モードでウインドウが表示されている。シンプルなウインドウ

最初に起動すると画像編集画面モードで起動する。ここでファイルメニューから直接RAWデータを開いても作業は可能だが、手早く目的のファイルを探し当てたい場合、画面右下部にある「ブラウザの表示」でブラウザモードに切り替え、サムネイルを見ながら目的の画像を選択したほうが効率がいいだろう。ブラウザのサムネイルは2段階に大きさが変えられるので、ファイルの量に応じてサムネイルサイズを変えるといい。なお、ブラウザモード、画像編集モードどちらのモードでも最下段に表示されるサムネイルエリアには、選択したRAWファイルを登録することができるので、まずはブラウザで現像したいファイルを選択して登録しておき、画像編集モードで1枚ずつ現像していく。

サムネイルエリアの右上にある「ブラウザの表示」をクリックすると左のようにブラウザモードに移行する。サムネイルはウインドウ右上のサムネイル大/小アイコンをクリックすることで大きさが変えられる。右は小さく表示にした場合

画像を選択し、サムネイルエリア上部中央に表示される「追加」ボタンをクリックしてサムネイルエリアに画像を追加する。ドラッグして画像の追加ができないのはやや不便だ。ブラウズエリアのスクロールアローでの移動が極端に遅いのは製品版出荷までには改善してほしい

画像編集モードでは下段のサムネイルエリア以外に、右にヒストグラムやナビゲーター、各種パラメータ、左にプレビューエリアが表示される。プレビューエリアでは1枚の画像をプレビューするほか、補正前/後の画像を並べて表示する『ビフォーアフター表示』、2つの異なる画像を並べて表示する『比較表示』、が行える。ビフォーアフター表示はどの程度補正してるのかを確認したい場合に便利で、比較表示では、似たような写真を並べて比較して、目的の画像を選択するときなどに重宝するだろう。

画像編集モードでファイルを選択した状態。ここから右に表示されているヒストグラム、各種パラメータ用ツールパネルを使って現像処理を進めていく

ウインドウ左上に並ぶアイコン。左からファイルを開く、ファイルのエクスポート、アンドゥ、リドゥ、復元、画像の左回転、画像の右回転、プレビューをウインドウにあわせて表示、プレビューを原寸表示、プレビューを4倍で表示、レシピのコピー(後述)、レシピの貼り付け(後述)となっている

画像編集モードでは補正前後が比較できるビフォーアフター表示、2つの異なる画像を比較できる比較表示が選択できる

ハイライト/シャドウ警告表示にすると、ディティールがとんでしまうハイライト部分が赤く、つぶれてしまうシャドウ部分が青く表示される

「ブラウザ表示」ボタン左の「Exif」をクリックすると現在表示している画像のExifデータが表示される

ヒストグラム表示横にあるアイコン。左からプレビュー表示、ビフォーアフター表示、比較表示、ハイライト/シャドウ警告

豊富な調整機能

現像パラメータは非常に豊富で、カラースペース・露出補正・ホワイトバランス・詳細補正(シャープネス・ノイズ)・トーンカーブ/レベル補正・ハイライト/シャドウ・トリミング/傾き調整・赤目除去・ほこり/傷の除去・カラーエフェクト・色調製・レンズ補正と12項目にも及ぶ。さらに、それぞれのパラメータのなかでも調整項目が細かく分かれているので、非常に細かな調整が可能になっている。

それぞれのパラメータは前述の項目ごとにタブ化されていて、通常はタイトルバーのみが表示されている。機能を利用するときには目的のタイトルバーをクリックして展開し、操作するという方法をとる。もちろんすべての機能を展開した状態にしておくことも可能だが、多くのスクロールが必要になるので実用的とはいえない。調整はスライダのドラッグと数値の直接入力が可能になっているので、現像処理にまだ慣れていない人にも、使い慣れて、数値入力で素早く作業したい人にも対応できる設計だ。