アドビシステムズ社グループプロダクトマネージャー、エミー・ファン氏

2006年6月に発表されたFlashPlayer9は、Flash CS3時代を予感させる重要な内容を含んでいた。そのFlashPlayer9が年末にも大幅なアップデートを予定している。FlashやActionScriptの今後を予測する上で重要なFlashPlayer9 update3(以下、アップデート3)の概要について、アドビシステムズ社FlashPlayer担当グループプロダクトマネージャーのエミー・ファン氏にうかがった。

アップデート3では、主にパフォーマンス向上に注力しており、さまざまな新機能の追加や機能強化を図っている。また今回はクロスプラットフォームで提供することを重視しており、はじめてWindows / Macintosh / Liunx版をすべて同時に出荷する。

追加される新しい機能としては大きく分けて4つある。まず一番目に挙げられるのが、ハードウェアのアクセラレーションによるフルスクリーンモードだ。アップデート3はハードウェアでスケーリングするため、レンダリングのスピードが向上し、高解像度なブラウザ上で再生している動画をスムーズに再生できるのが特徴となっている。もちろん従来のバージョンでもフルスクリーンをサポートしており、高解像度の動画を再生できたが、コンピュータの処理能力が高くなければ再生が難しかった。しかし、アップデート3ではより多くのマシンで高解像度の動画をフルスクリーンで再生できるという。「ウェブブラウザでこれだけのHDクオリティの映像が提供できるということはアドビにとっても非常にエキサイティングなことです」とエミー・ファン氏は語る。

720pのHDビデオが処理能力が高くないマシンでなくてもスムーズに再生される

2番目はOn2に対応するコーデックのデコードに際しマルチコアのCPUをサポートしたこと、またホスト・プロセッシングやフィルタリングを追加することで映像の画質を改善したことが挙げられる。そして3番目は、マルチコアのCPUを使うことで、ベクターレンダリングもより強化されていることだ。「米Adobe社内のテストでは1CPUあたりのレンダリングの速度が20~30%改善するという結果が出ています」と同氏。Webでよく使われるベクターレンダリングが速くなることは、特にデザイナーやデベロッパーにとって、これまであった性能上のネックが解決されることにつながる。

そして、最後に挙げられたのは大きなビットマップを縮小したときの画質が改善されたこと。同氏は「従来では画像編集ソフトで大きな画像を縮小していくと画像が粗くなってしまったが、アップデート3ではスムーズに見えるようになる」と説明する。

Papervison 3DはActionScriptを使って3Dのライブラリを作りデベロッパー向けに提供としているオープンソースのプロジェクト。FlashPlayer9アップデート3で再生すると、魚の動きがスムーズになるとともに画像のジャギーが少なくなり、より美しく再生される

左はcarlosulloa、右はnoventaynueveのサイト。ActionScript3を使うことでスクリプティングのパフォーマンスが非常に上がる