ワイヤレスジャパン2007内のネットワークカンファレンス「4G+将来NW構想フォーラム」では、NTTドコモとKDDIの両社が、現在の携帯電話システムの次に構想する次世代ネットワークについて講演を行った。

ドコモ、2012年に下り1Gbpsを超える「4G」へ

NTTドコモでは、無線アクセス開発部長の尾上誠蔵氏が「ドコモの4Gに向けた発展構想と取り組み - Super3GとIMT-Advanced」の演題で講演した。

同社は、現行のW-CDMA規格の拡張方式で、下りを高速化するHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の商用化を2006年8月に開始した。HSDPAの理論上の下り最高速度は14.4Mbpsとされているが、端末の仕様にいくつかのカテゴリーが定められており、カテゴリごとに速度が異なっている。高い速度のカテゴリに対応しようとすると、その分準備に時間がかかる。同社が採用したのは、下り最大3.6Mbpsのカテゴリ6だ。「できるだけ早くサービスを開始することを優先して、『低い』カテゴリから始めた」(尾上部長)が、今後順次速度を上げていく。尾上部長は「端末がある程度普及しなければならない。ネットワーク効率を考えると、標準搭載に近くなることを期待している」と話す。2006年には、全世界で100種類のHSDPAサービスが開始され、普及が加速しているという。

2012年頃に登場する見通しである次世代規格「4G」は、将来は下りの速度が1Gbpsを超えるようになるとされる。現行の3.5Gと4Gの間に位置するのが「Super3G」だ。アクセス方式としては下りにOFDMA、上りにSC-FDMAを用い、高速化が図られる。

W-CDMAの標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」では、当初下り100Mbps、上り50Mbpsとしていたが、2年程度の議論を経て、現在では、20MHzの帯域で送受信にそれぞれ4本のアンテナを用いるMIMO方式の場合、下りは最大320Mbps、同それぞれ2本の場合は最大170Mbpsになるという。同社は今月より実証実験に着手しており、下り最大約300Mbpsの伝送速度を目標とする。

Super3Gは、3Gの長期的発展型であり、既存の3G周波数を効率的に使用して、高速化など応分の改善を図ることと、ネットワーク構成を4Gにも適用できるようにすることにより、4Gの無線機能をもった基地局を導入するだけで、円滑に4Gへの移行を進められる態勢を整えておくことが狙いだ。

さらに、HSDPA/HSUPA(High speed uplink packet access: 上りを高速化するW-CDMA規格の拡張方式)を高度化した規格として「HSPA+(またはHSPA Evolution)」があり、3GPPで議論されている。変調方式として下りに64QAM、上りに16QAMを採用する見通しで、既存の設備をほとんど変更することなく実現できるという。

4Gへの取り組みとしては、2006年12月には、送受信アンテナ数を12本使用するMIMOで、最大約5Gbpsのデータ伝送をに成功している。「IMT-Advanced」は、2005年11月にITU(International Telecommunication Union: 国際電気通信連合)での会合で採択された「IMT-2000の後継システム」の名称だ。さらに広帯域の周波数帯により、高速移動時には100Mbps以上、低速移動時では1Gbps程度の伝送速度が目標とされる。標準となる技術について、具体的な提案が始まり、2010年頃には規格が固まる見込みだ。

KDDI、「CDMA2000 1xEV-DO Rev.B」と「UMB」を検討

KDDIからは、技術渉外室 企画調査部標準戦略グループ主任の田村知之氏が「CDMA2000技術の現状と将来展望」を解説した。同社は、「CDMA2000 1x」のサービス「CDMA 1X」を2002年4月に開始、2003年11月には、「CDMA2000 1xEV-DO Rev.0」を「CDMA 1X WIN」として商用化、2006年12月からは、さらに高速化した「CDMA2000 1xEV-DO Rev.A」のサービスを始めている。

2006年に、同「1xEV-DO Rev.A」の機能を拡張した同「Rev.B」が標準化されている。「Rev.B」では、搬送波を複数束ねることでいっそうの高速化を図る「マルチキャリア」を用い、下り速度を現行の3.1Mbpsから4.9Mbpsに上昇させる。

また、IEEE802.20系技術のUMB(Ultra Mobile Broadband)も検討されている。「UMB」では、MIMOと通常のアンテナを同時にサポート、同一の周波数を複数の端末などで同時使用する「SDMA(Space Division Mutiple Access)」技術とMIMOの組み合わせなどにより高速化を実現させ、下りは最大288Mbps、上りは同75Mbpsに向上する。

標準化動向については、2007年4月に、インタフェース規格が発行されており、この10月にはネットワーク仕様が発行される予定だ。田村氏は「CDMA2000の流れは、W-CDMAの同じコンセプトより先行して、サービスを市場に提供している」と話す。