日本オラクルは20日、同社の「アプリケーション統合アーキテクチャ」(AIA: Oracle Application Integration Architecture)の詳細に関する説明会を開催した。AIAおよびAIAの具体的な構成要素となる新製品「プロセス統合パック」は10日付けで発表済みだが、その際に説明しきれなかった詳細内容を改めて説明する形となった。

藤本寛氏
日本オラクル 執行役員 アプリケーションビジネス推進本部長

全体概要を説明した同社の執行役員 アプリケーションビジネス推進本部長の藤本寛氏は、AIAおよびプロセス統合パックを「今年度最大の目玉となる製品」だと位置づけた。また、全体的な戦略に関して、Oracleでは"Innovation & Acquisition"(革新と獲得/買収)と表現されるM&A戦略を推進しているが、同氏は今後さらに"Integration"に注力していくことを明らかにした。

"Innovation"はいわば独力での技術革新であり、同社ではすでにグリッド対応などの形でエンタープライズソフトウェアに求められる信頼性、可用性、保守性などを実現してきた実績がある。一方、"Acquisition"は企業買収によって「時間を買う」もの。独力で開発し直していては市場の変化に間に合わないが、優れた技術を持つ企業を買収することでごく短時間で製品機能を強化できる。ここ数年のOracleが買収に積極的なのは周知の通りで、アプリケーションの分野ではPeopleSoftやJD Edwardsなどを買収して同社のERPソフトウェアであるOracle E-Business Suiteの機能を補完している。

続く"Integration"は、買収の結果獲得された製品群の相互連携を実現する取り組みとなる。アプリケーションに関しては、E-Business Suite、PeopleSoft、JD Edwardsの3製品を包括する新アーキテクチャに基づく「Oracle Fusion Applications」を2008年以降に提供する予定となっている。ただし、それまでの間、既存の異なるパッケージアプリケーションの統合をどうするかという点が直近の問題として残る。これを解決するための具体的な手段となるが、AIAの定義および具体的なアプリケーション連携のソリューションとなるプロセス統合パックである。

オラクルの3つの戦略"Innovation" "Acquisition" "Integration"

藤本氏は、AIAについて「アプリケーション間のシナジーを実現し、"バーチャルスイート"化する際の"骨髄"と位置づけられる」と説明している。AIAは将来のFusion Applicationに使われる技術のうち、現時点で提供可能で既存のアプリケーションに対して適用可能な部分を先出ししていく、という形で実現されたものだという。つまり、現時点で複数のアプリケーションをAIA/プロセス統合パックで接続したユーザーは、将来Fusion Applicationの世代になったときにもシステムの自然な移行が可能になるわけであり、長期的なマイグレーションパスが確保できるというメリットが期待できる。

大本修嗣氏
アプリケーションビジネス推進本部 アプリケーション統合アーキテクチャ推進部 ディレクター

続いてAIAの詳細説明を行った同社のアプリケーションビジネス推進本部 アプリケーション統合アーキテクチャ推進部 ディレクターの大本修嗣氏は、AIAの根本的な考え方を、「Enterprise SOAを実現するための具体的なステップ」と位置づけた。SOAは元々はシステム統合のための技術ではなく、柔軟で変更が容易なシステムを低コストで実現する技術なのだが、現時点ではSOAに基づいてサービス化された処理が蓄積されていないため、いわばEAIの代替手段として、標準インタフェースとして部分的に使われている段階だ。AIAはSOAに基づいてアプリケーションを統合していくための具体的な手段となり、将来、基本的な機能がすべてSOA化されたEnterprise SOAの段階に達するまでの過渡状況を効率よく推進していく手段となるという。

AIAのゴールはSOAによるアプリケーション統合だ

AIAは、「業種別リファレンスモデル」「プロセス統合パック」「Oracle Fusion Middleware」の3層で構成される。また、業界団体であるOAG(Open Application Group)が定義するOAGIS(OAG Interoperability Standard)に基づくEnterprise Business Objectを共通オブジェクトとして利用する。AIAでは当初パッケージアプリケーション間の統合を実現する手段として提供されるが、将来的にはパッケージとユーザーの自作アプリケーションを統合することにも対応していく。このため、Oracle自身が提供するだけでなく、AIAに基づいた具体的なプロセス統合ソリューションをパートナーやインテグレータが独自に開発することも想定されている。

藤本氏が紹介したデータでは、日本のIT投資額の36%が複数システムのインテグレーションに費やされているという。SI業者にとっては大きなビジネスが存在する分野とも言えるが、一方で新規システムのIT化や機能開発などに取り組む時間が足りなくなるという問題も顕在化しつつあるという。AIAに基づくプロセス統合パックでは、Oracleのアプリケーションパッケージを対象として、具体的な統合の手法が事前定義されて提供されるため、統合実現に要するコストや期間が大幅に削減できるという。米国での事例では、プロセス統合パックを使って統合を実現した場合コスト削減効果は15 - 30%というデータも紹介された。

大本氏が整理したAIAのメリットは、ユーザーにとってはコスト削減、SIパートナーにとっては開発期間短縮、そしてオラクルにとってはサービスの品質向上と売上増をもたらすと期待されている。

AIAのメリット

AIAのキーコンポーネント