ドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本孝昭氏

J-SOX法の施行も控え、また情報漏洩などのコンプライアンスに関わるトラブルが相次いでいることからも、内部統制をどう実現していくかが企業の関心事となっている。そのためのコンサルティングサービスやソリューションもいろいろ提案されているが、J-SOX法で規定される「財務報告の信頼性」がカバーする範囲は、内部統制の大きな目的の一部分に過ぎない。ドリーム・アーツでは、同社の企業情報ポータル/グループウェアである「INSUITE Enterprise(インスイート エンタープライズ)」を用いて内部統制の強化を支援しているという。同社の代表取締役社長の山本孝昭氏に聞いた。

業務現場の現在の課題

現在の内部統制に関する話題の中心は、基幹業務/バックオフィス業務に限定された形となっています。これは、当初内部統制に関わったのが監査法人系中心だったことも理由でしょう。一方、内部統制の本質的な目的として挙げられているのは「業務の有効性と効率性」であり、これらは必ずしもバックオフィス系の定型業務に限定されるものでありません。実際に企業内のホワイトカラーの人たちの業務を分析してみれば、定型的な業務に携わっている時間はむしろ少なく、付随業務やその他の業務といった非定形的な業務に費やしている時間のほうがむしろ多いでしょう。

事業が成熟していくにつれて、定型業務が増えてきます。逆に言えば、業務の中から定型化できる部分を見つけ、効率よく処理できるようにすることが事業の成長には不可欠です。当初は混沌としていた作業が、やがて定型業務に収斂し、効率を上げていく。これが高度成長期に見られた典型的な事業成熟モデルでしたが、現在では「混沌状態のままずっと推移していく」というパターンも珍しくはなくなってきました。

「高度成長モデル」は、いわば「大量生産/大量販売」を前提としたシンプルなモデルであり、生産能力/販売能力/配送能力といった要素が事業の成否を決定づける要因だった時代には典型的でした。しかし、現在ではテクノロジのコモディティ化も急速に進展してきており、より可変的な要素がビジネスのさまざまな局面に複雑に絡んでくるようになってきています。関係因子が膨大な量になっており、各因子のライフサイクルもまちまちという複雑な状況になったのです。

業務の種類を、「主業務 or 付随業務/雑務」「定型/ルーチン or 非定型/突発・随時」という2軸で4分類したマトリックスを作ってみると、実は非定型的、付随的な業務が圧倒的に多く、定型的な主業務を圧迫しているという現状が見えてきます。

業務の種類を分割して分析すると、主業務が圧迫されていることがわかる

この状況を、当社では「情報とコミュニケーションの洪水」と表現しています。洪水を引き起こしている主要因のひとつはIT、とくにメールの利用です。メールは送り手にとって圧倒的に有利なツールであり、結果としてユーザーが相互に情報を浴びせ合うという状況を容易に作り出します。「念のためのBCC」などによって、情報が無駄に複製され、情報量が爆発的に増大していきます。この膨大な情報を処理するために時間を取られてしまい、本来こなすべき本質的な業務が圧迫されて来ていることが問題です。