ニワンゴは、現在提供中の「ニコニコ動画(γ)」サービスを6月18日で終了し、同日15時より新たな機能を加えた「ニコニコ動画(RC)」を開始する。ニコニコ動画(RC)では有料の「ニコニコプレミアム会員」を新設し、より快適な専用サーバの利用、マイリスト登録数の大幅増加などのサービスが利用できるという。今年1月15日に「ニコニコ動画(β)」としてサービス提供を開始した同サイトが、半年の紆余曲折を経て自立したサービス継続を模索し始めた。

神話レベルの驚異的成長が産んだ激流

「β」の登場からYouTubeのアクセス遮断を経てのサービス終了、続くID登録制のクローズド「γ」サービスを展開していたニコニコ動画。その間、幾多の歌やダンス、MADムービー、クイズなどなど、無数の才能が絶えずそこに投入され続け、激動の半年間で動画系サービスの潮流を変え続けてきた。

「γ」サービス開始から72日目となる5月17日には、登録ユーザ数が100万を突破、さらにID登録数は4月の1日平均10,000件から5月以降は1日平均15,000件以上と加速。トラフィックも伸び続け、6月10日には負荷によりサービスが2時間停止したにも関わらず、過去最高となる1日4,300万PVを記録したという。この状況に対応するため、日々スタッフによるサービス改良と回線の増強が実施されてきたが、それでも追いつかない状況が続いていた。

「ニコニコ的格差社会」(開発者ブログ)は実現されるか

こうした中で登場する「RC」はどのようなサービスになるのだろうか。

同社の発表ではインタフェースが一新されることが挙げられている。詳細は不明だが、全く異なる物になるわけではないようだ。また、新機能として「マイメモリー」機能が実装される。これは、ユーザーがある時点で動画を視聴した際のコメントの状態を保存しておけるというもの。動画と共に再生されるコメントは1本につき最大1,000件(動画の長さにより250件~)で、それを越えると最新の1,000件が再生され、古いコメントは見ることができなくなるが、ログは残っている。「マイメモリー」では、そのログの"今"の状態をリストに保存しておくため、コメントが増えた後でも保存した時点の状態を視聴できるようになる。サービスの中でコメントをコンテンツの一部として重視する考えが現れた機能だと言える。

また、「RC」で初めて有料の「ニコニコプレミアム会員」を導入する。現在同サービスは、ID888888番以降のユーザーについては利用時間が2:00~19:00までに制限されているが、プレミアム会員ではこの時間制限がなくなり、登録すればすぐに24時間利用が可能だ。他にもより快適な専用サーバを利用できる、常時高画質での動画視聴、コメントのカラーバリエーションの追加、動画投稿サイト「SMILE VIDEO」へのアップロード容量増加など、様々な特典が受けられるようになる。さらに、「マイメモリー」機能については、視聴した時点のみでなく任意のある時点でのコメントの状態を保存しておくことができるという。

料金はクレジットカード決済による月額課金(月額525円)またはWebMoneyによる90日チケット(1,680円)。6月中に会員登録をすると、当月の利用料金は無料となる。なお、現時点で「γ」サービスに登録しているユーザーは、引き続き無料ユーザーとして「RC」を利用できる。

ニコニコ宣言(仮)を掲げ、ビジネス海に漕ぎ出す

初めて有料版の導入にに踏み切ったニコニコ動画だが、これにより予想される収益ではまだ成り立たないという。今後もニコニコ動画が運営を維持するためには、サービスの早急な収益化が必須だ。

もう一つ収益の軸となり得る広告については、現在のところページ上部のバナー(今のところ多くが自社広告)や、アメーバビジョンの動画が再生される際にページに表示される「マイクロAD」などわずかで、収益には結びついていない。この規模の会員数とPVがあれば媒体としてのポテンシャルが大きいことは間違いないが、サービスの特性上、広告効果の面では他の媒体と数字だけでは比較が難しそうだ。

これまでに動画系サイトで用いられている広告の事例としては、Gyaoが行っている"CM"を流す手法や、アメーバビジョンが動画再生後の画面に表示させるバナーなどがある。

今年、ニコニコ動画と前後して登場した「字幕.in」は、その後、同事業が法人化され5月24日に「字幕.in株式会社」が設立された。また、今月に入って大手プロバイダniftyが「はみだし@nifty」企画第1弾として「ニフニフ動画」を開始。ブロードバンド時代の本命と考えられていた動画系のサービスに突き抜けた成長が見られなかった中、ニコニコ動画の存在が大きな変革をもたらしたと言って良いだろう。

ニコニコ宣言(仮)」において効率や利便性でないところに存在意義を謳ったサービスが、どのようにその主旨を貫きつつサービスを存続させるか、今年後半もその動向が注目される。