「2007 Symposium on VLSI Technology」が12日、京都市内のホテルで開幕した。会期は14日までの3日間。初日の招待講演「Fully Integrated VLSI CMOS and Photonics "CMOS Photonics"」では、米LuxteraのCTOであるCary Gunn氏から、同社のシリコンフォトニクス技術についての紹介が行われた。

Luxteraは、2001年に設立されたファブレスの半導体企業。銅配線は速度の限界が見えてきており、10Gb/s以上は難しいとも言われているが、光伝送を使えばこれを解決できる。同社は独自の"CMOS Photonics"技術により、モジュレータ、 ゲルマニウム光検出器、WDM(波長分割多重)フィルタ、光スイッチ、アッテネータ、ホログラフィックレンズなど、光インターコネクトに必要な機能をダイ上に統合することに成功した。

通常の光モジュールでは高コストが問題となるが、同社の技術では一般的なCMOSプロセスが採用されており、低コストであることが謳われている。同社からは、2×10Gbのトランシーバ「Aurora」がすでにサンプル出荷中だ。

接続 10Gbase-T 光モジュール CMOS Photonics
消費電力 10W 3W 1W
実装密度 low low high
レイテンシ high low low
伝送距離 <100m 300m >300m
コスト low high low

同社は、まずHPC分野に製品を投入し、次いでコンシューマ用途へ拡大していく計画。HPC分野には、今年第4四半期にも製品を発売するという。

シリコンフォトニクス技術における従来の大きな課題の1つは、光ファイバーとダイのインタフェースだった。ダイ上の導波路の断面積は0.1μm2で、一方、光ファイバーのコアの面積はそれよりもはるかに大きい。これは、「消防ホースからストローに水を入れるようなもの」(同社)である。

ここではレンズを使うことが考えられるが、導波路をダイのエッジまで持って行く必要があったり、コーティングなど、コスト的には高くつく。同社はホログラフィックレンズを用いることでこれを解決。露光・エッチングといったプロセスでシリコン基板上に形成できる構造で、直上からの光を90度曲げて導波路に入れることができるという。

また、10Gb/sのモジュレータには、Mach-Zehnderとして知られる方式を採用した。これは光を2つに分け、位相をシフトした後で再合成するもので、位相のズレによってOn/Offを容易に制御することができる。

光伝送はまだ高価なために一部の分野でしか利用されていないが、安価・小型になれば、あらゆる銅配線を置き換える可能性がある。氏は講演の最後に、CPU、HDD、ビデオ、PCIバスなど、PCの様々なインタフェースを光インターコネクトに置き換えられるという将来ビジョンを示した。