Seasarファウンデーションは27日、法政大学において、ソフトウェアエンジニア向けの技術カンファレンス「Seasar Conference 2007 Spring」を開催した。同カンファレンスでは、Seasar2の今後の方向性や新設プロジェクトの概要などを発表。多くの技術者が来場し、大きな盛り上がりを見せた。本稿では、同カンファレンスで発表された主なトピックや、会場の様子をお伝えしよう。

Seasar2.4の特徴と次期バージョンの開発方針

Seasar Conference 2007 Springの最初のセッションを務めたのは、Seasarプロジェクト チーフコミッタのひが やすを氏。同氏のセッションは、「Javaの生産性が低いと思う人?」「Javaで開発していて楽しくないと思う人?」という質問から始まった。

会場ではあまり手が挙がらなかったが、ひが氏は最近「Javaは生産性が低い」「Javaで開発していて楽しくない」という意見をよく聞くという。そこで、ひが氏はそのように思われている理由を分析し、浮かび上がった問題点を解決するという方向でSeasar2.4の開発を進めた。その目玉機能として挙げられるのが「Hot Deploy」である。この機能が搭載されたことで、アプリケーションサーバを再起動することなく変更を即時に反映できるようになり、開発生産性を飛躍的に向上させることに成功している。

ひが氏のセッションでは、かなり多くの時間がデモに費やされた。プロジェクトを作成してから簡単なマスタ管理アプリケーションを完成させるまでの一連の作業が示されたほか、TeedaやHot Deployの利用法なども紹介された。セッション参加者は、Seasar2.4を使用することで、開発生産性が向上し、開発を楽しめるようになることを実感できたのではないだろうか。

そして気になる今後だが、次期バージョンのSeasar2.5について、ひが氏は「ブルーオーシャン戦略」というものを掲げた。

ブルーオーシャン戦略とは、W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏による著書『ブルー・オーシャン戦略』で使用されているマーケティング用語である。競合相手のいない未開拓の市場のことを指し(逆に、価格競争や機能競争が激しく、血みどろ状態の市場は「レッドオーシャン」と呼ばれている)、高齢者や幼年層を取り込んだ任天堂の家庭用ゲーム機などが成功例として挙げられることが多い。

ひが氏は、この家庭用ゲーム機市場と比べながら、Javaのフレームワークにおいてブルーオーシャン戦略を進めるにはどうすればよいかを分析。その答えとして、機能が肥大化して複雑になりすぎたJava EE仕様の網羅性で他フレームワークと争うのではなく、「ユーザが使い方を覚えやすいフレームワークを作ることを目指す」という結論を導き出した。具体的には、Java EE仕様への準拠を優先してパフォーマンスが低下していた部分を取り除いたり、Seasarコミュニティで育ててきた機能をSeasar本体に取り込んだりしていくという。

また、Seasar2.5からは、全ての仕様をメーリングリスト上で決定するという。それをSeasar Specification Requestという形でまとめた後に実装を進めていくとのことだ。Seasarユーザが積極的に仕様決定に参加すれば、Seasar2はさらに使いやすいフレームワークになるだろう。Seasar2.5のリリースが楽しみである。

The Ashikunep Kotan計画

Seasar Conference 2007 Springでは、The Ashikunep Kotanというプロジェクトに関する発表も行われた。The Ashikunep Kotanは、Seasarファウンデーション配下のプロジェクトとして活動を開始している。

近年、リフレクションなどを使って実行時に様々な機能を追加するようなフレームワークが人気だが、The Ashikunep Kotanは「今日できることは今日する」という哲学の下、(実行段階ではなく)コンパイル段階で様々な機能を追加する「コンパイル時ソリューション」の提供を目指している。

セッションでは、そのコンパイル時ソリューションのベースとなる「Irenka」のデモが行われた。Irenkaを使用すると簡単な設定でコンパイルの挙動を変更できることが示され、今後の可能性を感じさせる講演となった。

Irenkaの正式版は2007年秋のリリースが予定されている。その後は、Irenkaをベースとしたフレームワークや、応用プロダクトが開発されるようだ。将来が期待されるプロジェクトである。