あー、ついにこのときがきてしまったか…

カンファレンスや学会、技術研修など、エンジニアにとって海外出張は意外と身近な存在だ。慣れてしまえばなんとかなるものだが、これが初めての渡航となるとニッチモサッチモいかない。特に、コミュニケーションが苦手な方が多い国内のエンジニアにとって、この問題はことのほかやっかいだ。

ここでは、そうしたエンジニアに向けて【コラム】エンジニアのための英語術ではとりあげないような緩い英会話をさくっと紹介したい。案外役に立つと思うので覚えておくとよい。

思った以上に通じないイングリッシュ、オーノー

英語教室に通っているとか、家族友達が英語を喋るとか、英語が身近にあるような環境で育っていないと、初海外はそれほど簡単にはいかない。日本の義務教育で勉強したレベルの英会話は思った以上に通じないものだ。もうこれはしかたがない。だれとでも支障なく会話できるようになるには【コラム】エンジニアのための英語術などを参考にして、今後気合いを入れて勉強するしかない。

初海外では、まず凹むことに、英語発音を聞き取ってもらえない。日本語訛りの英語は「発音が平坦でなかなか聞きにくい」んだとか。彼らは発音というよりもイントネーションで感じるので、イントネーションがめちゃくちゃだとなかなか理解してくれない。こちらが英語で喋っても相手が理解するまでに若干のタイムラグが生じるのは、なんと言おうとしているのかを推測して補正するのに時間がかかっているからだ。

そしてまた凹むことに、これまた相手の英語が聞き取れない。これも耳が慣れていないとどうにもならない。とりあえず最初は英会話がうまくいかないと思っておけばよいだろう。最初に諦めておくと、それなりの対応策が浮かび、案外なんとかなるものだ。

もっとも、専門性が高いエンジニアの場合、会話が通じなくてもテキストになった資料があれば仕事はできたりする。ただし、たとえ仕事をこなせても、日常生活でとまどっていては、せっかくの海外出張がつまらないものになってしまう。そうならないよう、以下では、最低限覚えておくべき実用イディオム、およびそれらのイディオムだけでしのぐための小技を紹介したい。

チップを払うぞ

日本ではほとんどない、「チップを払う」という習慣。これがなかなか慣れない。初海外ではまず、訪れる国や地域のチップの相場や支払いが生じるシーンをあらかじめ調べておく必要がある。

英会話を避けたい場合はクレジットカードで支払うとよい。料金が印刷されたレシートを渡されるので、その料金を基に標準的なチップ額を求め、レシートにチップ額と総金額を記入する。例えばタクシーでチップ相場が10%くらいだとすると、元金額が23ドルなら、チップが2ドル30セント、合計で25ドル30セントになる。この場合、ざっくり25ドルにするとして、チップの欄に2ドルと書き、合計金額欄に25ドルと書けばよい。

クレジットカードが使えない場合は、25ドルを支払って「Keep the change」と言えばよい。釣りはとっておいてくれ、ということだ。要するに「おつりはチップな」ということになる。

仮にここで50ドル紙幣しか持っていない場合に「Keep the change」と言うと27ドルもチップとして支払うという憂き目にあってしまう。それはなんとしても避けたい。そんなときは「I'll pay 3 dollars for you」などと言えば3ドルがチップという感じで伝わる。しかし焦っていると言葉が出てこないものなので、細かいドル紙幣を十分懐に潜めておいて「Keep the change」で凌ぐのが無難かもしれない。

トイレにいくぞ

トイレに行けないとなると、これは死活問題だ。トイレは「bathroom」か「restroom」。bathroomは日本語からすると風呂場を連想しそうだが、これで問題なく通じる。日本語ではトイレなので「toilet」という言葉を使ってしまいそうになるが、toiletが日本語と同じニュアンスの「トイレ」を表現する国や地域は案外限られている。toiletは便器という意味になることもあるので避けた方がよい。

ついでに触れておくと、「あいつはラビーにいったよ」とか言っているようなら、それもトイレのことだ。ラビーはlavatoryの略称である。

飯を食うぞ

日本では券売機で食券を購入すれば、あとはコミュニケーションをとらなくても飯が食える。しかし海外ではそうもいかない。頼んだメニューに対してあれやこれやと聞かれる。これが億劫でスーパーで購入したものしか食べなくなるとか、飯を食わないで凌ぐとかいったエンジニアも出てきたりする。食事は元気の源なのでぜひとも急場を凌ぐ言葉を覚えてしまいたい。

相手が何を聞いているかわかっていても答え方がわからないとか、そもそも言っていることもわからないなら、「Your recommend please」。これで凌げる。あなたのお薦めでひとつよろしく、という意味だ。食事以外でも使えるのでこいつも覚えておくとよい。

特に卵料理を頼む場合には、「どう調理するか」を聞かれるので心の準備をしておきたい。目玉焼きが「sunny-side up」、両面焼きが「tipped over」、いり卵は「scrambled eggs」、オムレツは「omelet」だ。最初は好みのものをひとつ覚えておくとよい。

酒を飲むぞ

酒飲みは、どうしても夜になると酒が飲みたくなる。こればかりはどの国にいても変わらないようだ。

バーでもレストランでも、1杯目の注文は意外と簡単だ。大抵はメニューがあるからそいつを指さしでもすればクリアできる。

困るのは、メニューが下げられた後のおかわり。これをしのぐために、「もう一杯同じのちょうだい」という言葉の「one more glass」を覚えておくとよい。空になったグラスを手に持って言えば確実に伝わる。ただし、まだ酒が入った状態で「one more glass」と言うと、空のグラスがもう1個出てきかねないので、空のグラスを手に取ってから言うよう注意したい。

かなり必要最小限だが、これらを知っているのと知っていないのとではかなり違ってくる。ただし、これだけだといつまでもブッキラボウな英会話だから、いずれはhaveとかgiveとかgetとかcouldとかwouldとかを使った自然な会話を身につけたい。しかし、最初のステップなこんなところだろう。