【インタビュー】

"幻の『天外魔境』"から生まれた冒険小説! - 桝田省治が語る『ハルカ』

1 『天外魔境』から『ハルカ』へ

野口智弘  [2007/05/24]
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今年3月、エンターブレインより1冊の分厚い冒険小説が世に出された。タイトルは『ハルカ 天空の邪馬台国』(以下『ハルカ』)。著者はゲームデザイナーの桝田省治氏。帯にはこう書かれている。「これが『天外魔境』の原型だ――広井王子」

この1冊が、ある世代のゲームユーザーにとって、どれほどのインパクトを持つかについては、若干の説明が必要となるだろう。

広井王子氏が企画・監修を手がけ、PCエンジン用の超大作RPGとして世に送り出された、1989年の『天外魔境 ZIRIA』と1992年の『天外魔境II 卍MARU』。その完結編となる『天外魔境III』は『天外II』の中心スタッフである桝田氏らによって準備が進められていた。しかし、対応ハードとなるPC-FXの不振などもあり、企画は中断。長い沈黙期間を経て『天外魔境III』は2005年にプレイステーション 2用ソフトとして復活するが、これに桝田氏は関与せず、過去の準備企画とは別作品としてまとめられた。もちろんこの復活劇は喜ばしいことではある。しかし、同時にかつての『天外魔境III』はこのプレイステーション 2版によって上書きされた……はずだった。

その矢先の『ハルカ』の出版。それは驚くべきことに桝田版の『天外魔境III』を下敷きにしているという! 幻のシナリオを小説化した12年目の奇跡の「転生」。その内幕と、ゲームデザイナー流の小説作法を、桝田氏に聞いた――。

桝田省治(ますだしょうじ)
1960年生。『桃太郎伝説』のアシストをきっかけにゲーム業界に関わり、『天外魔境II』で総監督・脚本を務める。その後『リンダキューブ』『俺の屍を越えてゆけ』『我が竜を見よ』といった多くのゲームを世に送り出し、個性派のゲームデザイナーとして根強いファンを持つ。近年は小説家としての活動も多く『鬼切り夜鳥子(ぬえこ)』シリーズ(ファミ通文庫)が続刊中

編集者の執念が実った「あの作品」のノベライズ

――『ハルカ』の成立経緯はどういったものだったんですか?

「この企画はもともと担当の彼(編集・久保氏)がやりたがってたんだよね。じつは僕は3年間ぐらいずっと『やりたくない』って言い張ってたんだよ」

編集・久保氏(以下: 久保)「僕は桝田さんのゲームのノベライズを担当していて、その流れで『天外III』を、というのは何年も前から打診していたんです。プレイステーション 2で『天外III』が出たときもハドソンさんに『ノベライズを出させてください』とお願いしました。ただ、そのままやるのではなく、こちらとしては桝田さんのプロットを使ったノベライズをやりたい。ゲームと小説、お客さんはどちらのバージョンも選べます、というのを企画したんですが、実現には至らなくて。私自身も桝田さんのファンの方たちと会う機会があって、そのときに『天外』の話をすごくされていたので、何らかの形で世に出してみたいという思いは常にありました。それで桝田さんに会う度に『どうですか?』みたいな話をして、嫌がられてたんですけど(笑)」

「だったんだけど、その前に僕が初めて書いた『鬼切り夜鳥子』が自分でも書いてて面白かったという事情もあって、『じゃあもうちょっと違うのも書いていいかな』と思っていたときに悪魔が忍び寄って来たんだな(笑)。あとは本物の『天外魔境III』が出たじゃない? で、そこから少し時間が経ってほとぼりも冷めただろうから、もういいかな、というのもあるにはあった」

久保「そういう意味ではちょうど桝田さんのほうにゲーム制作の端境期があって、『夜鳥子』で小説の感触もつかんだと。『じゃあやりましょうか』といいタイミングが重なったと思いますね」

期待に違わぬ大冒険と、猥雑さあふれる桝田節が堪能できる『ハルカ 天空の邪馬台国』。売り切れ続出につき、一部ではプレミア価格も!? 6月上旬には全国書店に再び並ぶとのこと

(あらすじ)
高校二年の夏休み直前、とある事件で停学となった「張政」こと張政美。自宅の蔵で見つけた青銅鏡に浮かび上がった少女に導かれてたどりついた先は、なんと三世紀! そして空には「邪馬台国」が浮かんでいた!!――種族を越えた戦争のさなかに展開する、時空を超えた究極の遠距離恋愛の行方は!?

ふたつの世界を行き来する幻の『天外魔境III』

――過去に桝田さんが準備していた『天外魔境III』とはどんなものだったんですか?

「基本的には広井さんのオーダーに沿って作ってるんだよ。普通の少年がある日女の子に出会って、恋しちゃって、がんばっちゃう。そういうボーイ・ミーツ・ガールをやろうよ、っていうのが一番大きなオーダーだったのね。それと『I』が板東で勾玉、『II』が大和で剣だから、『III』は残った九州・四国と鏡を使おうというのも当然あって」

「で、鏡をどう使おうかなあ、というところで考えたのが、鏡がふたつの世界をつないでるっていう話だった。元のゲームはこれと同じように舞台がふたつあるんだけど、『ハルカ』のような現代と古代じゃなくて、確かあだちひろしさんが南北朝時代と古代、というのを想定してたんだよ」(※あだちひろし=レッドカンパニーの創立期より広井王子氏と数々の作品に携わる。現在はフリー。『天外魔境』には脚本、『天外魔境II』には翻案として参加)

「なぜかって言うと、南北朝時代ぐらいまで不思議なことはみんな鬼とか妖怪のせいだった。つまり魔法と科学が同居してた怪しい中世の時代と古代とを行ったり来たりさせる想定だったの。でもゲームでなら絵で見せられるけど、現代と異なるふたつの時代を小説で描くのはしんどいじゃない? だったら片方を現代にすれば説明も省けるし、現代の側に主人公を置けばいまどきの言葉も使えるから『ハルカ』ではそうしちゃってる」

「ただ『ハルカ』で使ったのは『天外III』の設計図というよりは部品だよ。時系列も壊しちゃったし。要はイベントを構成するときに、時間軸の違うふたつの世界があるわけ。で、そこに共通する人物がいる。例えば千年間氷漬けで寝てましたとか、転生を繰り返して生き残ってますとか、なんでもいいけど因縁話を作らなきゃいけない。そういういくつかの構成要素をもう1回抽出して、場合によっては敵でやったことを味方でやったり、男がやることを女でやったりとかはしてる。でも、それを変えてもトーン自体は変わらないから。そういう変更はゲームでもやるんだよ。『もうちょっと綺麗なお姉ちゃんを並べてよ』みたいなのはよく言われるしさ」

久保「あくまで原型であって当時の『天外III』そのものではないですよね。そこは桝田さんの新しいオリジナル小説ということで、あとは読み手の方が想像して楽しんでもらえればいいのかなと思います。『天外魔境』という言葉をどこまで出すか、というのも悩みどころだったんですが、そこは広井さんにすごく間に立っていただいて、帯の文章に関しても『これでどうですか?』と提案していただいて」

「広井さんもまあ、喜んでくれたみたいだね。『勢いがあって面白いね』とは言ってたよ」

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インデックス

目次
(1) 『天外魔境』から『ハルカ』へ
(2) ゲームデザイナーが小説を書く、ということ
(3) 「斬新じゃダメなんだと思う」

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