世界第2位の「VC投資大国」になった中国VC市場には、それなりの魅力がある。

昨年は計99件のEXITがあった。これは昨年の投資案件総数の4分の1に相当し、EXIT機会が多いといえそうだ。最も大きなものはIPOで43件あり、EXIT全体の43.4%を占めている。そのうち海外上場と国内上場がそれぞれ33件、10件となっている。2番目は株式売却で、41件(41.4%)あった。内訳をみると、M&Aが25件、MBOは4件、他社VCへの株式譲渡が12件。清算、株式増発など第3のEXITを果たした案件が15件などとなっている。

ただ、これだけ高い関心を呼んでいる中国VC市場にして、平均収益率で信頼できるデータが見当たらないのは問題だ。筆者が把握している成功案件に限って投資収益率をみると、最低でも22%、最高では40倍と案件によって大きな幅はあるものの、総じて極めて高いパフォーマンスである。中国VC市場の収益率は、往々にして米国より高いと主張する専門家もいる。著名な経済学者である張維迎氏は、海外VCファンドが中国VC市場で暴利を得ていると指摘している。

さて、魅力に富んだ中国VC市場であるが、いくつかの問題にも直面している。その一つは法的環境整備の遅れだ。舶来品であるVCファンド、VC投資などに対して、中国ではそれに必要な法的環境整備が十分にできていない。特に知的所有権、会社制度、パートナー制度、税収制度など重要な基本制度がまだまだ整備されていないのだ。これらの問題はVCファンドの収益性、安全性などに関わっているため、早急な解決が業界内外から広く望まれている。

二つ目の課題は専門人材、とりわけ実践的人材の欠如だ。VCは中国においては新興分野であるため、VC投資などの専門人材を育成する教育体制やトレーニング体制などがまだ整備できていない。

そして三つ目の課題は、体制上VCファンドがファンドを公募できないことだ。公募ができないため、VCファンドが高い融資コストを払わざるを得ない一方、大規模融資がしにくい状況となっている。当然VCファンドの投資能力自体も制限を受けてくる。

最後の課題は、VCブームの中で、VCファンドも創業者も目先の利益を最優先する傾向を強めていることだ。これはVC市場、そして中国経済の長期発展を損ないかねない問題で、VCファンドが存在する生存空間自身を危うくする可能性さえ孕んでいる。

2005年、2006年と、中国の大舞台で、国内外のVCファンドが華麗なパフォーマンスを見せていた。今年も同様の期待ができそうではあるが、上記のような問題点の表面化などから、今年が整理整頓の初年になるではないかとの見方もある。今後の展開が注目の的になるのは間違いないところだろう。