昨年のVC投資を産業領域別でみると、例年のように、TMT(Technology、Media、Telecommunication)と非TMTの二大領域で分けられる。

TMTの投資案件総数は237件、投資額は13.8億ドルで、全投資案件数と投資総額の65.5%と63.3%を占めている。一方、非TMTの投資案件数は117件で投資金額は7.6億ドル。それぞれ32.3%と34.6%だ。投資領域が確認できていない投資案件が2件で、投資金額は4,600万ドル。いずれにせよTMTが中国ではVC投資のメイン領域になっている。

TMT領域での投資を詳しくみてみると、インターネットベンチャーへの投資案件が137件、投資金額で7.9億ドル、TMT領域の投資案件総数の57.8%、投資総額の57.5%を占めている。ITベンチャーへの投資案件は60件で投資金額は4.0億ドル、それぞれ25.3%、28.9%となっている。テレコミュニケーションベンチャーへの投資案件は30件で、金額は1.8億ドル、12.7%、12.9%となっている。投資対象不明の投資案件が10件あり、金額は9,500万ドルだ。

インターネットベンチャーは、TMT領域において最も重要な投資対象となっている。また、非TMT領域における投資は、伝統産業、娯楽、新エネルギー、医療、教育、商業サービス、金融、新材料など多くの産業分野に分散している。

海外VCファンドと民族系VCファンドには、それぞれがメインとする領域がある。総数268件の海外VCファンドによる投資案件のうち197件(73.5%)がTMT領域に、71件(26.5%)が非TMT領域に投入されている。TMTは海外VCファンドによる投資のメイン領域になっている。

総数64件の民族系VCファンドによる投資案件のうち、23件(35.9%)がTMT領域に、37件(57.8%)が非TMT領域に投入されている。すなわち、民族系VCファンドのメイン投資領域は、非TMT領域と言えるわけである。

海外VCファンドがTMTをメイン領域にしている背景には、海外VCファンドが、この領域で中国でも充分通用する豊富な経験と強力なスキルを持っていること、新興産業の多いTMT領域では、中国政府による管理や規制にも、ある程度高い国際性、協調性が認められることなどが挙げられる。

ちなみに、中国でのVC投資状況を昨年のデータから地域別でみてみると、北京市、上海市の2大都市と、広東省、江蘇省、福建省など沿海数省で確認されたVC投資案件が計305件で、投資金額は19.1億ドル、投資案件総数の84.3%、投資総額の87.3%を占めている。統計からは、VCファンドによる投資が大都市と沿海部に集中している構図が浮き彫りになった。

とりわけ、TMTへの投資状況では、北京市が117件(北京での総数140件の83.6%を占める)、上海市が54件(同70.1%)、広東市では27件(同67.5%)となっており、TMTへの集中ぶりが目立つ。大都市と沿海部が市場、産業基盤、人材などにおいて内陸部より競争力があることが、こうしたVC投資地図と構成になっている要因と考えられる。