さてこれはなんだろう? という話になる。一見すると、既存のIntelのコアのどれとも似ていない。だからといって、新コアを新たに作ったという事も考えにくい。そんなに新しいコアを急に作る事はできないからだ。勿論、ずっと以前から水面下でUMPC向けのコアをこっそり開発していた可能性も皆無ではないが、まぁ現実的とは思えない。となると、論理設計を既存のコアから流用し、フロアプランを45nmプロセスに合わせてやり直した、と考えるのが妥当に思える。では、どのコアだろうか? といっても、そもそも余り選択肢はない。現実問題として流用できる範囲だと、

  • NetBurst(Prescott/CederMill)
  • Banias/Dothan
  • Yonah
  • Melom
  • Penryn

あたりしかない。これ以前のコアだと、SSEをはじめとする様々な拡張命令を新規追加する必要があるからで、フロアプランのやり直しのレベルでは済まない。次に、NetBurstも現実問題としてはありえないだろう。SilverthorneはTDP 0.5Wを狙う製品であり、NetBurstを使ってこれを実現すると、動作周波数が100MHzを切りかねない(切ったところで実現できるのか、も甚だ怪しい)。これは使い物にならないだろう。Melom/Penrynも、現実問題としては難しい気がする。4MB L2のConroe/Melomのダイサイズが143平方mm、2MB L2のAllendaleで111平方mmとされている。Photo17の数字を元に考えると、Penryn 6MBで107平方mm、Penryn 3MBで79平方mmといったところ。Penryn 3MBをSingle Core化して、更にキャッシュを削減しても、30平方mmに達するかは微妙なところだ。乱暴な計算だと、Allendaleをそのまま45nm化して、更にSingle Core化すればダイ面積は4分の1になる計算だが、プロセスの微細化がCPUコアとキャッシュに均一に掛かるわけではないのと、I/O Padの面積はプロセスの微細化に無関係(ここはパッケージ側の要求するサイズで決まる)から、やはり無理がありそうだ。

なので、そもそも候補としてはDothanかYonahということになる。YonahそのものはDual Coreだが、Core Solo用にYonah-1Pが存在するから、どちらでも可能性はありそうだ。そこでPhoto40に戻ると、Core部の寸法は概ね5.1mm×2.2mmで11平方mm程度になる。これを65nmで作成すると倍の22平方mm、90nmならば44平方mmということになる。では実際に各々のコアはどうか? まずYonahだが、Photo41の緑色の部分がコアにあたると見た場合、この部分の面積は約18.1平方mm程度である(Yonah全体のダイサイズは90平方mmと発表されている)。一方Dothanだが、Photo42の赤で囲った部分がコアと見た場合、ほぼ43平方mmといったところだ。実際にはDothanの方にはBIUも含まれているわけで、これだけみると、どちらでもありえるということだろう。

Photo41:このプレゼンテーションは2005年7月にMooly Eden氏が来日した時のもの。

Photo42:これはIDF Spring 2003におけるMobility Briefingのプレゼンテーション資料より流用。

では実際にはどちらか? 筆者としてはYonahを使っている可能性を推したい。理由はいくつかある。既にDothanコアを使っているわけで、消費電力を下げながら性能を落さないor上げたいのであれば、IPCの向上したコアを使うほうが得策である。この点でYonahが有利なのは言うまでも無い。64bitやSSSE3/SSE4のサポートは無いが、SSE3までは実装されている事もメリットに挙げられる。VTも実装されているので、このあたりをDothanに追加するくらいなら、Yonah-1Pを使ったほうがはるかに早い。それともう一つ、Photo40でL2 Tagが片寄せされているのがわかる。実はこれ、Yonah-1Pの特徴である。Yonahは共有L2キャッシュを低レイテンシでアクセスするため、中央にTag RAMを起き、その両側にL2を配するという特殊な構造だが、Yonah-1Pではこれをそのまま半分にぶった切った結果、L2の脇にTagが並ぶ構造になっている。おそらくはL2に関して、このあたりはYonah-1Pからそのまま持ってきたのではないかと思う。