SoC Updateその2

それでは、もう一つのSoCであるTolapaiについて触れておきたい。こちらは基調講演の説明(Photo29)以上のものが今回は無かったのであるが、おおよその狙いなどは理解が出来る。Tolapaiがターゲットとしているのは、エンタープライズ向けのネットワークコントローラと推測される。実はこのマーケットも、先のCE向けと良く似た構図が広がっている。つまり、IAアーキテクチャをベースにしたマシンの上で専用ソフトウェアを動かすケースが非常に多いのだ。たとえばIBMのSAN Volume Controllerと呼ばれるSANのディスク制御コントローラの中身はというと、内部はIntel Xeonで構築されており、この上で専用ソフトウェアを走らせて処理を行うといったケースが非常に多い。この手のハードウェアの場合、ソフトウェアの果たす役割の比重が非常に大きいから、ハードウェアそのものは汎用のものが望ましい。ただ最近は更なるスループット向上のニーズが高いため、負荷の大きいパケット処理とか暗号化/復合化処理を専用ハードウェアでやらせる方向性が次第に明確になりつつある。

Photo29:SoCにする場合、Geneseoでアクセラレータを繋ぐのは馬鹿らしいので、当然FSBを使ったTightly Coupledな構成となる。そこで、ここでもQuickAssist Technologyを使って統合ということになる。この場合汎用CPUコア上で動くプログラムはAALを使ってアクセラレータにアクセスするということになるだろう。

こうした動向を考えると、汎用品であればXeonにGeneseo経由でアクセラレータ、なんて構図が適切なのであるが、関係するものを全部SoC化してしまえば、更にコストを下げることもでき、しかも省スペースと省電力化も可能ではないか? というのがTolapaiの目的の様だ。このマーケットの場合、たとえばCISCOなどは圧倒的なシェアを持つが、彼らは基本的に全部自前でASICを起こしているから、コスト面ではどうしても高くつく。従って低コストというのはシェアを握る上で大きなキーとなる(当然AMDのOpteronも競合製品だから、こちらとの対決のためにも安価なほうが好ましい)。また昨今のサーバーシステムの場合、消費電力とか実装密度が非常に大きな問題となっている。これは別に日本だけではなく、最近ではあちこちの国でデータセンターの床面積が足りなくなっただの、床面積が足りても電力供給や空調が追いつかなくなっただのという話も出ており、ここでのアドバンテージを示すことは、非常に大きなファクターとなる。基調講演では、Tolapaiが従来の4コアCPUで汎用プログラムを使った場合と比べて、高いスループットを低消費電力・低スループットで実現できることを示しており(Photo30)、こうしたネットワークコントローラ類への採用を強く意識していることが判る。また、当初はエンタープライズの中核向けといった話かもしれないが、それだけではなくエントリ向けソリューションも考えている風情があり(Photo31)、Tolapaiのみを搭載したエントリサーバなんてものも現実的なのかもしれない。

Photo30:これはVPN回線を使ってVoIPを実現する場合の試算。ちなみにTolapaiシステムの数字はシミュレーションによる推定だそうである。

Photo31:RAIDとかはともかく、Virus Scanとかは大規模システム向けというよりも、Entry Server向けといった趣。実際スケールメリットを出すためには、上から下まで全マーケットで使ってもらうほうが好ましいのであって、将来は同社のIPX42x/43xというSMB向けネットワークプロセッサの代替になる可能性もある。というか、オリジナルはこっちを狙っていた可能性大である。

最後にもう一つ。「で、TolapaiのNew IA Processorって何? まさかIA-64ってことは無いよね」としつこく聞いて廻った結果、Pat Gelsinger氏からはっきりと「Core Microarchitectureを搭載する」という答えを貰った。実はこのTolapai、2007年2月にVR Zoneなどからリーク情報が出ているのだが、明らかにこれと話が違っているのが判る。VR Zoneのそれは、どちらかというとIPX42x/43xの代替品といった趣(3つのGbEコントローラを搭載するあたりも、いかにもそれらしい)であり、このプレゼンテーションが事実だとすれば途中でプランが変わった可能性が高い。つまり、最初はRegidential Gateway向けNetwork Processorのみの代替品であったが、途中からTolapaiのターゲットがEnterprise向けの幅広いレンジで使うものに変わった、ということだ。少なくとも基調講演の内容は、VR-Zoneの記事と一致していない。まぁIntel内部で色々あった、ということではないだろうか?