4月21日より、神奈川県・川崎市市民ミュージアムにて「韓国現代マンガ展」が始まった。韓国を代表する30人のマンガ家の作品を展示する今回の企画展は、川崎市と韓国・富川(プチョン)市の友好都市締結10周年を記念して行われるもので、韓国マンガにクローズアップしたものとしては国内初となる。川崎市市民ミュージアムはこれまでに「みんなのドラえもん展」「横山光輝の世界展」を開催するなど、マンガ関連の企画展に力を入れており、今後も韓国マンガ界との交流を続けていきたいとしている。

貴重な生原稿が並べられた展示風景から。このほかに韓国のアニメ上映なども行われている

期間は6月3日まで。開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館(ただし4月30日は開館。5月1日は休館)で、観覧料は無料となっている。

今回の企画に携わった川崎市市民ミュージアムスタッフの浜崎好治氏と、尹鐘淑(ユン・ジョンスク)氏に、韓国のマンガ事情を中心にお話をうかがった。

――企画展の成立経緯からお聞かせください。

浜崎氏「韓国マンガを取り上げる企画自体は以前からあったのですが、なかなかタイミングがなかったんです。今年、川崎市と韓国の富川市との友好都市締結が10周年ということで実現しました。富川市は韓国のマンガ特別市と位置づけられていて、文化活動の拠点となっています」

――現在、韓国においてマンガはどういった位置づけですか?

尹氏「若い世代にも人気はありますが、子供のものという見方は根強いです。日本のように大人が電車のなかで読むような習慣はありません。その代わり韓国は受験大国なので、学習マンガと呼ばれるものが非常によく売れています」

――大人の娯楽としては映画などが主流ですか?

尹氏「やはり映画とドラマが強いです。とくに韓国人はテレビドラマが大好きなので、マンガに比べると実写の層が厚いようです」

――韓国マンガの特色を教えてください。

尹氏「韓国では日本よりも先にIT化が進んだので、雑誌よりもインターネットを発表の場とするマンガ家が増えています。FLASHアニメも日本より盛んですね。それと日本は新聞に載っているマンガは主流ではないですが、韓国ではブラックなギャグや風刺の作品もかなり人気があります」

――デジタル着彩が進んでいるためか、全体的に鮮やかな色使いが多いですね。

尹氏「韓国の人はもともと派手な色使いが好きですね。お国柄もあると思います」

――韓国のマンガやアニメの輸出状況は?

尹氏「マンガやアニメは映画と同じように国が支援していることもあり、韓国から欧米に向けてのコンテンツ輸出も積極的に行われています。どちらかと言うとアメリカよりヨーロッパで受け入れられているようです。『日本が一番難しい』と言われますね」

――それはなぜですか?

尹氏「日本がマンガ大国だからということもありますが、システムの違いもあるようです。例えば韓国のマンガ家はオフィスを構えて、自らが社長としてマネージメントを行いますが、日本では編集者や出版社が窓口になります。韓国のマンガ制作に編集者や出版社はあまり関わらないので、そういった部分で勝手が異なるようです」

――韓国のマンガ雑誌も閲覧できますが、日本では掲載誌が違うマンガも同じ雑誌に載っていますね。

浜崎氏「作品ごとの契約のようですね。かつては日本の出版社がかなり高額の使用料を提示していたこともあって、かえって海賊版が横行してしまったこともあったそうですが、いまは改善されているようです」

――日本のマンガと韓国のマンガを両方掲載している雑誌もあります。

浜崎氏「そうですね。ただハングルは左から右に読むので、マンガ雑誌をふくめて韓国の出版物はすべて右開きです。逆に日本のマンガ雑誌は左開きなので、両方を掲載している雑誌は、巻頭側から右開きで韓国マンガ、巻末側から左開きで日本マンガが並んでいます」

4月28日には関連イベントとして、韓国の有名マンガ家6名が来日。キム・ドンファ氏、イ・ヒジェ氏といった韓国マンガ界の重鎮のほか、『らぶきょん Love in 景福宮』で日本でも人気のパク・ソヒ氏も来日。ライブドローイングやサイン会などが行われるという。お隣の国のマンガ事情を知る貴重な機会として足を運んでみてはいかがだろうか。

日本でもコミックスが100万部のヒットとなっているパク・ソヒ氏の『らぶきょん Love in 景福宮』。パク氏は28日のイベントにも出席する予定

28日に出席するメンバー、クォン・カヤ氏の作品。クォン氏の日韓合作マンガは『週刊コミックバンチ』でも連載された

「サンデーGX」(小学館刊)で連載され、アニメ映画にもなったヤン・ギョンイル氏の『新暗行御史』

若い世代のファッションリーダーとして高い人気を誇るというチョン・ケヨン氏の作品

カン・ソンス氏の『偉大なるキャツビー』。ポータルサイト「Daum」に掲載された作品で、縦に並ぶ構成

フロア奥では韓国のキャラクターグッズを多数展示。幼児向けのものから、ティーン層のファッションになっているものまで、じつに様々

韓国マンガの閲覧コーナーから。現地のコミックスだけでなく、日本語訳されたものも並んでいるので、気軽に読むことができる

韓国の女の子の部屋を再現したブースも。お隣の国でも、やはり女の子はピンクが好きなようです!?

韓国版の「少年ジャンプ」。ただ中身は『PLUTO』『名探偵コナン』『xxxHOLiC』『浦安鉄筋家族』といった日本の人気マンガが混在している。「少年マガジン」の『金田一少年の事件簿』と「少年ジャンプ」の『BLEACH』が並ぶのもかなり新鮮

こちらは「Booking」というマンガ雑誌。2500ウォンで320円ほど。日韓のマンガが載っており、目次を見ると巻頭側には右開きの韓国のマンガが、巻末側には左開きの『鋼の錬金術師』『犬夜叉』『蒼天の拳』が並んでいることがわかる。『クレヨンしんちゃん』は4コマなので中盤に配置