紹興酒のように琥珀色で、味わいはまるで蜂蜜のようにトロリと甘い……そんな日本酒。これは、日本酒を蔵元などで長きに渡って熟成させた"長期熟成酒"と呼ばれるものの一例である。

その長期熟成日本酒を扱う飲食店が近年、増えてきている。中には熟成酒のみを扱うバーも登場し、話題を集めているという。都内を例に挙げると、昨年7月には長期熟成日本酒を約20種類扱う軍鶏料理専門店「庵狐 恵比寿店」(東京・恵比寿)、東京・銀座に長期熟成酒バー「酒茶論 銀座店」が相次いでオープンしている。

昨年12月に開業した東京・新橋の長期熟成酒専門店「花」も注目の店。長期熟成酒の種類は約200を誇り、圧巻の品揃えとなっている。初心者でも楽しめるよう、おすすめの酒と肴を組み合わせたコースを提案し、好評とのことだ。

東京・新橋の「花」。男性だけでなく、女性も多く来店する

一方で、"自宅で気軽に楽しめるように"と取扱店も増加傾向。最近の動きとしては日本酒の長期熟成酒のみを扱うオンラインショップ 「オールド・サケ・ギャラリー」 、「伊勢丹新宿店」(東京・新宿)内の長期熟成酒を専門的に販売する「長期熟成酒セラー」が3月にオープンしている。デパートでも取り上げられ、長期熟成酒の注目度の高さを物語っているといえる。

このように、徐々に注目度を高めている長期熟成日本酒。ここからは製造方法や種類などについて詳しく触れていく。

製造方法についてはその名の通りで、"日本酒を長期間熟成させたもの"ということは容易に想像が付くだろう。肝心なのは熟成期間。1985年に発足し、熟成酒の啓蒙活動にも注力している長期熟成酒研究会では「蔵元で満3年以上熟成させた清酒」とし、これが一般的な定義となっている。

熟成時にはタンクや瓶を使うのが一般的。樽熟成のウイスキーとはこの点が異なる。基本的には10度前後、もしくは0度近くで熟成を進めていき、年月が経過するにつれ、糖とアミノ酸の反応によって色が濃くなり、同時に香りの成分も変化していく場合が多い。しかし、種類によっては同じ20年という年月を経過していても黒っぽい色になり、トロリとした甘口に仕上がるものもあれば、無色透明のままということもある。

アルコール度数については、時間を経るほどにアルコールが気化するので、経過年数に反比例して下がっていく傾向もある。1999年に当時の国税庁醸造研究所が243年を経た熟成酒の成分を分析したところ、アルコール分が2.1%だったという事実もあるほどだ。