こうしたAOLとの水面下での交渉を経て、「予想よりもはるかに長い時間」(Gaimプロジェクト)をかけて最終的な和解にこぎつけたという。この和解により新バージョンのリリースが可能になり、さらに和解の経緯でGaimの名称を捨て、新名称としてPidginを採用することとなった。Pidginを英和辞書で引くと「混成語」を意味しており、複数の言語が自然に交わることで誕生した言語のことを指す。GaimプロジェクトもWikipediaの「Pidgin」エントリを参照するように述べており、言語そのものの意味を意図することで間違いないようだ。同時にGaimプロジェクトの他のソフトウェアの名称も変更が行われており、テキストベースのGaimクライアントが「Finch」、IMプログラミング用のライブラリが「libpurple」へと、それぞれ変更されている。

以上を踏まえ米AOLにいくつか質問を投げてみたところ、「今回のGaimとの件に関してはいっさいコメントできない」との返答を得た。

Gaimプロジェクトのリリースを見る限り、問題の争点がAOLの名称を使った商標問題にあるのか、あるいはAIM互換クライアントを作成すること自体に問題があるのかの判断が難しい。だが北米ではIMサービスとしてのAIMのシェアが非常に高く、GaimでAIMをサポート対象外にすることは考えにくい。Gaimがプロジェクトの進展を止めてまでAOLとの交渉にこだわったのも、AIM互換の部分に問題があったと判断するのが自然だろう。

実際、前述のAOLの質問状の中で、米AOL広報のErin Gifford氏はAIMの互換性に関する部分についてのみ返答を行っている。Gifford氏はAOLのAIMへのスタンスについて、「ユーザーのセキュリティとネットワークを守るのがAIMにとって最も重要な関心事であり、もし当該のネットワークがハッキングされ、非認証でのリソースの利用やセキュリティを脅かす行為につながるのであれば、ユーザーとネットワーク保護のためにしかるべき措置を取る」とコメントしている。

今回の和解により、GaimプロジェクトはPidginの名称で新バージョンのリリースが可能になった。プロジェクトによれば、早ければ今週にも新バージョンがリリースされることになるという。現在は製品版がPidgin 1.5.0、ベータ版がPidgin 2.0.0 beta6となっている。新ベータのリリースを経て、バージョン2.0の製品版リリースもそう遠くないものと考えられる。