【レポート】
『たそがれ清兵衛』、『隠し剣 鬼の爪』、『武士の一分』の時代劇三部作が国内外で絶賛され、今や世界から注目される山田洋二監督。その最新作『母べえ』がクランクイン、川口市のSKIPシティで製作会見が行われた。
『母(かあ)べえ』は、太平洋戦争前後の東京を舞台に、混迷の時代を明るく懸命に生き抜いた母の物語。つましくも幸せに暮らす人々を無残に飲み込んだ時代に、笑顔を忘れずに生きた母親の姿を通じて、家族の素晴らしさや人の幸せのはかなさと尊さを描いた作品だ。
今作が80本目の監督作品となる山田洋次監督は「長い間、この作品を夢見ていた僕にとっては、とても感慨無量の時となっております」とコメント。
「何年も前からですが、竹内浩三と言う、若くして戦争で死んでしまった詩人の映画を作りたいなと考えていました。で、竹内浩三の詩を世に出す大きな仕事をしたのが、実は野上照代さんだった。竹内浩三の話を聞くために野上さんに何度もお会いするうちに、私こんなことを昔書いたんだけどもね、と照れくさそうに一冊のコピーした冊子を出した。そこには野上さんの少女時代の思い出話、お父さんとお母さんの物語が書かれていた。僕はそれを一読した時に、ああ、こんな映画を撮りたい、作りたいと思っていたんだと気づきました」。
そんな意外なきっかけを明かし、山田監督はさらに続ける。
「その時に既に、この映画の全体の形までが、頭の中に浮かんでしまったんですね。そんな感じでこの映画が立ち上がり、ついにクランクインした。『母べえ』と言うタイトルは、お母さんをそんな風に呼んだ、極めて知的な家庭にある独特のユーモアが、作品全体にあふれた感じの映画になればいいなぁと。そのユーモアで、大声を上げて笑ったり、涙ぐんだりしながら、日本の大きな歴史的転換期についてふと思いを馳せることが出来る、そんな映画に出来るといいなぁと思っています」。
主人公・野上佳代には、山田監督が「母べえはこの人がいいなぁと思っていた」と言う吉永小百合。
「もう撮影は始まっているんですけれども、この作品に参加できる喜びを噛みしめております。山田監督がこの台本の1ページ目に、はじめに、ということでお書きになった言葉があります。台本を頂いて、その言葉を読んで、胸がいっぱいになりました。監督の思いを少しでも表現出来たらと願っております」と意気込みを語った。
原作者は、長年にわたり黒澤明監督のスクリプターを務めてきた野上照代。「原作と言われると大変恥ずかしい。私の中では"素材提供"みたいな気持ちなんです。22年前に読売のドキュメンタリーで賞を頂いた時は、本当に幼稚なもので。山田さんの、泉のように湧き出るイメージがどんどん膨らんで、ドラマがどんどん広がるんですね。ですから原作より全然ドラマチックだし、ずっと愛情にあふれた素晴らしい作品になります。本当に山田さんには、吉永さんが出て下さったことも含めて感謝しておりますが、私以上に、50そこそこで死んだ父と母がさぞ喜んでいると思います」。
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