【レポート】

中国ネット広告界揺るがすクリック詐欺

1 ネット業界最大の驚異とまでいわれる「クリック詐欺」

    西山楓  [2007/02/13]

    営業ノルマ達成の最後の手段は…「自分」

    王さん(仮名)は中国のネット広告代理店に勤めるOL。彼女は常日頃、営業ノルマを達成する最後の決め手は「自分」しかないと考えている。王さんがノルマ達成の決め手にしているのは、事務所でのデスクワークでもなければ顧客への積極セールスでもない。自宅にほど近いネットカフェなのだ。

    ネットカフェに着くなり、彼女は数十分おきにパソコンを替えてアクセスしていく。それぞれのパソコンでの操作内容は同じだ。つまり、複数のサイトを開いては内容を閲覧することもなく、ウェブサイトに載っている広告をクリックしていくのである。同時に、彼女はQQのチャットウインドウを複数開いては広告のリンクを纏めて友達へ送信、「クリックしてちょうだいね」と念を押していくのだ。

    こうして、知らず知らずのうちに数時間が経つ。彼女は帰り際に、会社で精算するためにネットカフェで領収書を発行してもらう。ネット広告代理店の営業員としての王さんの仕事は、そこで終わる――

    この何時間かの間に起きたことは、いわゆる「クリック詐欺」なのだ。これまでのところ、世界中どこの国でもこれを犯罪行為とは断定していない。しかし、これこそ間違いなく、急速に膨張しつつあるネット広告業界のグレーゾーンなのである。本来はクリック回数に応じて料金を支払うしくみのネット広告だが、人力あるいはプログラムにより、消費行為を伴わない大量のクリックで、広告主の懐から検索エンジンや広告代理店の方へとお金が流れていく。

    中小ユーザーにも有用なネット広告だったが―

    クリック詐欺は、オンライン広告の、クリック数に応じて料金を支払うモデルに巣食う。ここでいうクリック詐欺とは、ある人が当該広告に全く興味がないにもかかわらず、単にクリックによる収入を得るため、手動あるいはコンピュータプログラムを利用してユーザーになりすまし、正常の広告クリックを模倣する時に発生するものだ。

    なぜこれが重要な問題となり、中国の一部の評論家が「ネット業界最大の脅威」とまで言い始めたのだろうか。その理由は他でもない。検索エンジンに基づくネット広告が全世界に向けた強力なセールス手段で、しかも数百億ドル規模の巨大市場であることを証明しつつあるからだ。

    これは、広告産業史上、最も成長スピードの速い代物なのだ。その成長の原動力は、広告業界のどうしようもない現状を変えてほしいという期待からきている。伝統的な大衆セールスの弱点は、広告主自ら、広告投資の半分が無駄な出費であることに気づいているものの、残りの半分が果たしてどの程度効果を発揮するのかすら定かには掴めないところにあった。

    だが、検索エンジンを利用した場合、広告主はユーザーの検索結果にピンポイントで対応する広告を結びつけることができる。最も理想的な状態は、関連製品に興味を持っている人だけがその広告をクリックし、広告主もクリックした分にだけ料金を支払うという仕組みだろう。そうすれば、理論的には最大限、無駄な出費を減らすことができるはずだ。こうした新たな広告形式が、広告分野に足を踏み入れたこともない多くの中小企業に注目された。元来、中小企業が散在する細分化市場においては、伝統的な大衆メディアは適合しなかった。しかし、Googleや、中国では百度の広告ビジネスのおかげで、顧客発見コストが劇的に下がる可能性が出てきたのだ。もちろんこれこそが両社の成長神話を支える屋台骨だった。

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