【レポート】
AdobeとMacromediaの合併により、一つの会社がPDFとFlashというメディアを持つことになった。この、PDFとFlashを真の形で融合するのがApollo(コードネーム)だ。17日、アドビ システムズは報道関係者を対象にこのApolloのデモを行った。Apolloは、2007年上半期に提供開始が予定されている。
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ギャレット イルグ社長 |
「2006年(会計年度)、アドビは、前年度比27.9%増と、R&Dへの投資を積極的に行った」(アドビ システムズ代表取締役社長 ギャレット イルグ氏)。この投資のうち、少なくない額がAdobeとMacromediaの統合、特にApolloの開発に使われたのは想像に難くないだろう。
ApolloはAdobeに新たなオポチュニティを提供する重要な技術となるだろう。
PostScriptという業界標準技術で大きな成功を収めたAdobeは、次にPhotoshopとIllustratorというデスクトップソフトウェアを手がけた。次いで、PDFというフォーマットとこれを取り巻く製品群はAdobeを企業向けソリューション分野に進出させた。
そして、Macromediaを傘下に収めたAdobeが現在取り組むのは、エンタープライズで標準的に使われるプラットフォームの構築。Apolloはこのプラットフォームの柱ということになる。
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太田禎一氏 |
Apolloは、Ajax(HTML+JavaScript)とPDFそしてFlashという3つの技術を1つのアプリケーションとしてインテグレートする技術だ。Ajaxに関してはApple Safariの"コア"、WebKitを、PDFとFlashに関してはAdobeの持つエンジンを、ランタイムに組み込む。
「ひとつひとつの技術はすでに標準的に用いられているものであり、デベロッパが新たに習得する必要がない。また、開発ツールなどもこれまでのものを利用できるので再投資を行う必要もない(※)。さらに、Windows/Linux/Mac OS XというクロスOSを実現するので投資効果も非常に高い」--アドビ システムズ プロダクト&セールスエンジニアリング部 プロダクトスペシャリストの太田禎一氏は、Apolloのメリットをこのように語る。
※: ApolloのアプリケーションはJavaにおけるjarファイルと同様、必要なリソースとマニフェストをzipで圧縮、パッケージにしたものに過ぎない。つまり、Apolloのために特別な開発ツールが必要になるわけではない。太田氏によればAdobeからはパッケージングのための無償ツールが提供されるという。
また、これまでWebを通じブラウザ上で利用されていたこれらの技術を、ブラウザの制限から開放するものでもある。
このメリットはいろいろあるが、ギャレット イルグ社長は、アプリケーションのブランドコントロールが可能になることを挙げる。つまり、ブラウザのバーに出るアプリケーション名やアプリケーションアイコンをデベロッパがコントロールできるということだ。特定のWebサービスのプロモーション用クライアントとして使いたいときに便利だろう。デモにおいて太田氏は、eBayで作られたオークションクライアントを紹介、このアプリケーションのウィンドウは「eBayカラー」、eBayのロゴが埋め込まれたものとなっていた。
ApolloはAjax・PDF・Flashを"マッシュアップ"するWeb 2.0時代の仮想マシンとして、Java VMがエンタープライズで圧倒的な地位を築いたように、有力なものとなりうる。特にSaaS(Software sa a Service)のクライアントとして活躍が期待される。ギャレット イルグ社長も「AdobeとしてSaaSには大きな期待を寄せている。様々な分野で取り組みを行うが、ApolloはSaaSのクライアントとして有力だ」とする。
もうひとつの活躍の場は携帯電話になるだろう。当初、モバイルデバイスへの対応は行われないが、将来的には当然対応するはずだ。太田氏はHTMLレンダリングエンジンとしてWebKitを選択した理由の一つとして、すでにモバイルデバイスへ移植されていることを挙げる。まずはApple iPhoneでも注目を集めるスマートフォンの分野、そして現在JavaからCまでキャリアごとに様々なプラットフォームにわかれる携帯アプリ。ともに想定されるニーズも大きく、アドビとしても攻めがいのあるところだろう。
一方で、Apolloの課題は、デベロッパとデベロッパを結びつける役割を誰がおうのか、という点だろう。ApolloはAjax・PDF・Flashのインテグレーションであり、それぞれのデベロッパから興味を持たれるだろう。しかし、例えば、PDFのデベロッパとFlashのデベロッパをいかにして1つのビジネスに参加させ、いかにコミュニケーションを取らせ、いかに成果物を生み出させるのか--ここは大きな課題になる。例えば、開発ツールひとつとっても、PDFとFlashをひとつの開発ラインにのせるためのものは見当たらない。Adobeとしてもそうした開発ツールの提供予定はないという。
ギャレット イルグ社長はすでに日本のパートナーにApolloのデモを披露し、好評を得ていると語る。これらのパートナーをいかに説得し、多く持ち、そして、いかに大きなエコシステムを作るか、まさにプラットフォームビジネスの難しさを乗り越えていくことになるだろう。
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