【レポート】

風車とソーラーで南極へ走る「ZEVEX」の冒険

4 次世代PHEVで準備万端

    湯木進悟  [2007/01/01]

    どこでも充電できるEV四駆へ

    ZEVEXでは、その活動方針として、大切に守り続けられてきたものがあるという。

    同代表の鈴木一史氏は「何かの研究成果を求められることが多い、企業や大学の研究チームとは異なり、たとえ大した成果は出せなかったとしても、とにかく現場に挑んでやってみるスタイルを貫いてきました。机上で理論を立てていたとしても、実際にやってみないとわからないことが、世の中には数多く存在します。実地の肌感覚を身につけて、皆で経験を積みながら前進していく……。これこそ、市民団体のZEVEXの強みだと信じています」と語っている。

    実際、氷点下20度を下回る厳冬期の間宮海峡横断に挑んだ「ARK-1」にも、極寒地でのテストを行ったからこそ新たに見えてきた改良点が多々あったようだ。

    同氏は「皆でアイディアを出し合い、入念に設計を進めたARK-1でしたが、手袋すら外せない極寒の走行環境で、ネジ1つ操作するだけでもいかに大変か、身をもって実感できました。南極走破は単に頭の中で想定した氷点下35度ではなく、本当に現場を踏まえた設計で挑めるようになったと感じています」とコメントする。すでに現在、改良を重ねた新EV四駆「ARK-2」の研究開発もスタートしているという。

    開発途上のARK-2

    風力発電および太陽光発電の自然エネルギーを活用し、いかにしてEV四駆で南極大陸を走破するのか? ZEVEXメンバーによる学習会、体力作り、EV四駆の研究開発など、海外アタックの「間宮海峡Zero Emission横断チャレンジ」以後も、順調に準備は進んでいる。しかし、このまま南極走破まで時がかさむならば、ZEVEXでモットーにしている経験の強みが薄れてしまうのは残念である。

    南極走破への体力作りを目指して行われた雪中トレーニング

    ZEVEX学習会

    そう考えた鈴木氏は、眠っていた初代EV四駆「SJ2001」を、新たに「プラグイン・ハイブリッド電気自動車」(PHEV: Plug-in Hybrid EV)へと改造し、国内の一般路上でEV四駆を操る経験を着実に重ねていく活動スタイルの採用を決定した。現状のバッテリ性能では、どうしてもSJ2001の連続走行性能は限られたものとなる。しかしながら、PHEV仕様に改造することで、バッテリ残量が落ちてきたら外出先でもコンセントから充電したり、車載の発電機を回しつつ充電しながら走行することで、たとえ国内の路上走行でも、より広い活動エリアでEV四駆経験を積み上げていくことが目標に掲げられたのだという。

    SJ2001をPHEV仕様へ改造

    車載の発電機をガソリンで回しつつ長距離走行が可能に

    もちろん、ガソリンを使って発電機を回しながらの充電走行を行うならば、排出ガスゼロを目指す"Zero Emission"は達成されなくなる。そこで、南極では風力・太陽光発電のみで走行するとはいえ、国内でも、できるだけZero Emissionに近いPHEV走行を実現するためのアタックが繰り返されるようだ。

    街乗りで燃費50km超を達成!

    昨年11月末、筆者はPHEV仕様に生まれ変わったSJ2001に同乗しつつ、どこまで地球環境に優しい街乗り走行が実現するかに挑む国内アタックの取材機会に恵まれた。まず出発時点で、SJ2001に搭載された16個のバッテリは、安い深夜料金を利用したフル充電が完了。午前10時前に、神奈川県川崎市のZEVEX川崎ピットを出発し、西の大和市にあるZEVEX大和ピットへと向かった。

    ZEVEX川崎ピット

    PHEV仕様に生まれ変わったSJ2001

    これがSJ2001の運転席だ!

    助手席でSJ2001の走行を初体験した筆者だが、第1印象は「えっ、これが本当にEV四駆なの? 普通のジムニーと変わらない走りだなぁ」というものだった。路上ですれ違う人々の目にも、何ら違和感なく走り続けていく。加速性能も十分だし、そのうえエンジン音がないために静かである。とはいえ、ドライバーの西村剛之氏によれば、運転のコツというものがあり、経験を積むうちに快適な走行スタイルをつかめてきたのだという。

    できるだけバッテリに負担をかけない走行で、Zero Emissionに近づき、連続走行距離や燃費(電費)も伸びていくようだ。鈴木氏によると、多くのZEVEXメンバーが、その感覚を肌で感じられるようになる人材育成こそ、PHEV国内アタックの目的であり、南極走破に準備万端で挑める態勢作りなのだという。

    一般道を走行するSJ2001

    かなりの走行スピードが求められる大通りや、勾配のきつい坂道が続く地点に差しかかると、スムーズに2台の発電機が稼動して、バッテリ負担を和らげる配慮も払われつつ、無事にZEVEX大和ピットへ到着。ここで、SJ2001はコンセントにつながれ、しばらく充電される。充電中にかかった電気料金も、エコワットで計測して、データ収集を実施。充電後、今度は南の海岸線を目指して走り出したSJ2001は、江ノ島へと到着した。

    鈴木氏は「当初、EV四駆やZEVEXへの世間の反応は鈍く、必ずしも良いものばかりではありませんでしたが、間宮海峡Zero Emission横断チャレンジに挑んだ頃から、少しずつ反応が変わってきました。ZEVEXの冒険は本気なんだ、がんばってほしいといった、応援メッセージが増えてきたのです」と語る。実際、江ノ島でも、ZEVEXのチャレンジに理解を示す親切なショップ「湘南ライセンス」の野口捷代社長および店内スタッフの皆さまが、快くSJ2001の充電用にコンセントを貸してくださった。

    江ノ島の湘南ライセンス前でSJ2001を充電

    店内で快く充電用コンセントを貸してくださった

    さて、ここまでは万事順調に進んできたのだが、帰路で思わぬ事態に巻き込まれる。予想外にも夕方のラッシュで道路は大渋滞。楽しかった海岸ドライブから、再びZEVEX大和ピットへとたどり着いた時点で、すでに外は真っ暗で、おまけに雨まで降ってきたのである。ZEVEX大和ピットでの充電後、ライトを点灯して、ワイパーを回すなど、予定よりもバッテリを消費する走行スタイルで、果たして燃費(電費)記録へのチャレンジは成功するのだろうか?

    日が沈んで暗くなり、雨も降ってくる中で、ZEVEX大和ピットにて最終走行への準備が整えられた

    スタート地点のZEVEX川崎ピットへと戻ってきたのは午後9時過ぎ。そこから、本日の走行データの検証が始まった。総走行距離は約86.8km。バッテリ充電を補うため、走行中に発電機を回すのにかかったガソリン消費量は約1.5L。つまり、1Lあたりの走行距離は約57.87kmとなり、実に街乗り走行で優に燃費50kmを超えてしまったのである! ちなみに、出発前から道中のコンセントによる充電に要した電気料金の総計は、あくまでも概算であるが約340円だった。

    ZEVEX川崎ピットにて、SJ2001の入念な最終チェック

    鈴木氏は「わざと上り坂の少ない道を選ぶ、走行距離が伸びやすいように交通量の少ない道でテストする、夜間は走らないなど、いろいろと好記録の出やすい環境でアタックを行ったのではなく、できるだけ都会で渋滞が多い普通の生活スタイルに近づけて、このパフォーマンスを達成していることに意義があると思います」と振りかえる。

    緊張した面持ちでガソリン消費量データの検証を行う鈴木氏

    燃費50kmを越える街乗り走行達成を喜ぶZEVEXメンバー」

    ZEVEXの南極走破までの道のりは、決して楽なものではない。ARK-2の開発は、まだまだこれからであり、何よりも挑戦資金という大きな壁がある。しかしながら、とにかくできることから、次々と現場に飛び込んで体験していく――このスピリッツで今後も突き進むならば、本当に道は開けてくるような気がしてしまう。ZEVEXメンバーと一緒に過ごしていると、そんな力強い励みが得られた。常に挑戦者として冒険を続けるZEVEXへ、今後も心からのエールを送りたいと思う。

    関連記事

    関連サイト

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      本音ランキング

      特別企画

      マイナビニュースマガジン