【インタビュー】
神山健治氏が監督した『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズは、充実したビジュアル面だけでなく、緻密で完成度の高いシナリオ面でも高く評価された。「アニメの脚本は5人対5万人」を持論とする神山氏は、脚本作業を重視する監督のひとりだ。しかし意外にもその経歴は、演出や脚本をストレートに志向したものではない。まずはアニメ業界を目指したきっかけからうかがった。
「もともとは『スター・ウォーズ』を見たときに『こんなものを自分で作りたい』と思ったのが一番最初だと思うんですよ。その『スター・ウォーズ』の直後に『機動戦士ガンダム』を見て『これだ!』と。『アニメなら日本でもあれを作れるんだ』と思ったんです。だから『ガンダム』という作品は僕のなかでは金字塔のような作品なんですよね」
『スター・ウォーズ』の日本公開は1978年夏。『機動戦士ガンダム』の放映スタートは1979年4月。神山氏が12~13歳だったときの出来事だ。現在でも多大な支持を得るふたつの映像作品が、当時の神山少年に与えたインパクトは想像するに余りある。
「それから高校時代に文化祭で8ミリアニメを上映したのがきっかけで、プロになろうと思って『アニメを作ってそれを手土産に業界に入るんだ』ぐらいのつもりでやってました。結局できたものはひどいもので、若気の至り的な感じでしたね。当然そんな簡単に夢はかなわなかったわけです。ただ何年か自主制作を続けてるうちに、やっぱりどこかプロの世界にコミットしていかざるを得なくなってきて……」
その神山氏はキャリアを美術スタジオ――平たく言えばアニメの背景を描く仕事からスタートさせている。神山氏の経歴が異色と言われる所以だ。一般的にアニメ監督になる道はふたつあり、ひとつはアニメーターとして出発し、動画→原画→作画監督→監督とステップアップしていく方法。もうひとつはアニメスタジオの雑用をこなす制作進行となって、現場の動かし方をマスターした上で監督となる方法だ。一概には言えないが、美術という専門職から監督になることはやはり稀である。なぜ神山氏は美術スタジオの門を叩いたのだろうか?
「自主制作のときに一番できなかったのが、レイアウトの取り方と背景なんです。作画に関してはまだ教則本があったほうだと思うんですけど、レイアウトと背景に関しては『こんなに描けないもんかなあ』と思ってて、それでたまたまスタジオ風雅さんというところで新人を募集してたんで『これはレイアウトを盗むのにいいかもな』って……。だから動機については本当に申し訳なくてね。ただ自分で言うのもなんだけど、美術は美術としてかなり本気でやったんですよ。入ってから『こいつは本当に不真面目だな』って言われることは多分なかったと思うんですけどね(笑)」
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