【レポート】

フォークソノミー、マッシュアップ…研究とビジネスのコラボ始まるか? - PLACE+

6 オープンにしつつ、寡占にする時代

    美崎薫  [2006/11/28]

    スタンダードと主導権

    ワーキングショップらしく、最後には、全体の討論となった。

    河口助教授が、「建築系のGISでなくて、Googleマップが主流になってしまった」と現状を分析した。

    「Googleがマップ上に広告を載せる日が来たら、既存のシステムはもっとだめになる可能性がある」と、Googleがビジネス的な驚異でもあるという意見もあった。Googleは売り上げのほとんどを広告で占めている広告企業である、ということは、ジャーナリストの佐々木俊尚氏の指摘の通りである。

    会場からは「デファクトスタンダードがデジュールスタンダードよりも強くなることはよくある。CADのときにもAutoCADは圧倒的な市場シェアを占めて標準になってしまった。地図でも、以前は国土地理院が地図はこういうものと認定していた。でもクローズでやっていたために広まらず、Googleマップでユーザー数は桁違いに増えて、デファクトスタンダードになりつつある。ユーザーに使われるものが出てくるのかが重要なのであろう」という声もあった。

    「標準を使うよりもスタンダードにあわせる」とリクルートメディアコミュニケーションズの舩見高貴生氏。

    デファクトスタンダードとデジュールスタンダードが争う様は、これまでのコンピュータの普及の縮図でもあるわけだが、圧倒的に高機能なものをフリーで配布し、そのあとに広告化して収入を得るというGoogle的な戦略は、現在のあたらしいビジネスモデルになっている。

    暦本氏は、「場所に対する口コミサイトが毎週1個できている状況。規格をちゃんとするのはこの業界では無理」と業界ウォッチの経過を語る。どのくらいの数があるのかはとても把握しきれないという。

    リクルートの舩見氏は、「アルプス社はスタンダードなGIOタグ。Flickrは独自タグ。独自タグはAPIが公開されないと扱いにくい」という。Flickrマップでは、GIOタグに加えて、また別のタグを採用し始めたのだそうだ。Flickrで読み込むことはできるが、そのタグを外には出さないようになってきているという。オープンにしつつ、寡占にする時代なのである。

    プライバシー問題

    無線LANとログにおけるプライバシー問題もある。

    プライバシーを守ることは重要である。

    河口助教授が「Wi-Fiトラッキングシステムはログをとられたら怖い。どう乗り越えたらいいんでしょうね。盗撮カメラとおなじレベルで個人情報が漏れ、無線LANの機器は小さくなればずっとわかりにくくなる」と疑問を投げかけた。いま現在は、研究者などが実験的に使っている段階だが、一般に広まると、どのように使われるかわからない。「パンドラの箱を開けているような気がする」

    暦本氏は「ソニーCSL所属で、外部での仕事が多く、必然的に移動も多い脳科学者の茂木健一郎氏に実験的につけてもらおうというアイデアがあるが、微妙に嫌がっている。プライバシーがあるのだなと思うが、どれがプライバシーなのかがわかっていない」のが現状だという。

    プライバシーを守るためには、なにがプライバシーなのかを知る必要がある。もちろん、いまここにいるということは、たとえば自宅は留守である、ということを意味するため、基本的にいまここにいるという身体情報は、きわめて高度なプライバシーで守られる必要がある。その範囲をどこまで共有するのかなど、課題を整理して社会的な合意を作っていく必要がある。

    西尾教授は、「暗証をかければいいのでは?」と単純に断言。

    あるいは将来、Wi-Fiシールド、Wi-Fiスクランブラーのようなものができるようになるのかもしれない。ミノフスキー粒子か。

    ライフログへ

    そう。これから数年のうちに「すべてを記録し、それへ自在にアクセスすることが可能になる時代」が来る。それを「ライフログ」と呼ぶ。blogが文字や写真による自分の記録であるとすれば、ライフログはユビキタス&モバイル&ウェアラブルコンピューティングによる自分自身の人生と生活の記録である。

    筆者の「記憶する住宅」や「SmartCalendar」は、ライフログの先駆的なツールだが、暦本氏はこうしたライフログを「ぜんぶ系」と呼んで、1998年ごろからいろいろな研究を始めていた。たとえばPHSを使った位置情報システムや、最近では音楽をぜんぶ蓄積するとか、である。

    いま、写真ならFlickr、地図はGoogleマップ、blogははてな、SNSはmixiなどのように、Webツールによるログシステムがそろい始めている。これらはやがて、統合された環境となっていくだろう。

    SmartCalendarに代表される「時間を扱うツール」に加えて、位置情報が加わることで、ライフログは加速度的に進歩することになる。

    いよいよ、そのXデーが迫ってきている。

    1998年にPHSで位置と写真とコメントを融合したAnnotated Reality

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