【レポート】

PlaceEngineは「位置情報2.0」 - 位置情報とLifelogの可能性

    美崎薫  [2006/11/25]

    位置情報を情報化するワークショップ開催

    『PLACE+ 新世代ロケーションアウェア技術 サービスに関するワークショップ』が11月24日、国立情報学研究所で行われた。

    そのPLACE+において、ソニーコンピュータサイエンス研究所 インタラクションラボ室長の暦本純一氏が、2006年7月からスタートしている「PlaceEngine」について発表した。

    PlaceEngineは、ソニーと東京大学が共同で研究するノートPCやスマートフォンなどの無線LAN(Wi-Fi機器)で現在位置を記録できる技術だ。

    ソニーコンピュータサイエンス研究所 インタラクションラボ室長の暦本純一氏

    GPSから無線LANへ

    通常、位置情報をとるためには、GPSや携帯電話のアンテナを使用するのが一般的だが、これらには大きな欠点がある。GPSは基本的に屋外で使用するもので、測位に20秒ほど時間がかかることが多い。衛星が見つからない場合には、5分以上かかることもある。携帯電話も同様で、携帯電話を使用できない場所では、位置を測位できない。ビルの影など衛星が見えない場所でも使えないし、高さはわかっても、いまいる場所がビルの何階なのかを知ることはむずかしい。

    東京の人口は日本の1/10に達している。すなわち東京で移動に地下鉄を利用し、オフィス内で大部分の時間を過ごす人間にとっては、GPSと携帯電話では、生活時間帯の大半で位置情報を把握できない、ということになるわけだ。これはGPSの大きな問題である。

    これはなかなか悩ましい。生活時間の大半をオフィスで過ごすのであれば、そこでの記録がほしい。オフィスでも、自席にいるのか、会議室にいるのかでは、意味が違う。トイレに入っているのまでは知りたくないとしても、きめ細やかな記録は重要だ。

    GPSと無線LAN(Wi-Fi)の比較

    アクセスポイントデータベース

    人工衛星と地球という固定された環境と異なり、無線LANのアクセスポイントを利用するPlaceEngineの場合、「そのアクセスポイントがどこにあるのか」を登録したデータベースが必要となる。PlaceEngineでは、アクセスポイントID(MACアドレス)と、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を位置推定に用いている。実験では、公開されているアクセスポイント800カ所の周辺15,000カ所を計測し、初期データベースを構築した。アクセスポイントには一般ユーザーのアクセスポイントも含まれる。アクセスポイントは外部から接続できなくても、MACアドレスと強度情報は得られるため、位置推定には充分なのだ。

    2006年7月のスタートから4カ月が経過した11月24日現在では、ユーザーの登録などにより、30万カ所がデータベース化されているという。ちなみに、初期のデータベース構築は、アルバイトを使った力業で実現したそうだ。最近、ジョガーであるという暦本氏自身も、スポーツタイプのリュックを背負って歩き回ったらしい。

    無線LANを使用できない場所は、サーバーに登録することで、取得できない場所として地図にマッピングされ、次からはその場所の情報を得ることができるようになる。フォークソノミー的な活用法である。

    2006年7月にスタートしたPlaceEngine.com

    存在しないアクセスポイントを登録することができる

    都内のアクセスポイントを示した模式図。かなり真黒になっている。アクセスポイントの密度が高いということを示している

    位置情報という名のライフログ

    「テーマは位置情報系なのですが、必然的にLifelogに関連してきます。私自身もここ数カ月間、数分単位で自分の位置をloggingしてます」と暦本氏はいう。「いつもいる場所」をログ化して、その場所を拡大して表示すれば、認知心理学でいうところの「心理的な認知マップ」さえも可能だという。

    位置情報は、GoogleマップとGoogleマップのAPI公開以降、活気あふれるジャンルとなっている。PlaceEngineもGoogleマップに組み込むことが可能だ。

    「散歩中に見かけた店の名前」を知ったり、「パーティーで同席したひとにメッセージを送る」ようなことが、位置情報によってきわめて容易になる、と暦本氏。親しい間柄なら、リアルタイムに位置情報を交換することで「近くにいるみたいだからランチでもいっしょにどうですか」などのようにコミュニケーションを加速することもあるだろう、とも。位置情報は、究極の個人情報のひとつだが、それを共有することで、親密さを増すことも考えられる。

    PlaceEngineは、フリーで公開されており、自由に使うことができる。現在使用可能なのはWindows用の「PlaceEngine クライアントソフト for Windows XP」と、WillcomのW-ZERO3用「PlaceEngine クライアントソフト for Willcom」の2種類。

    2007年春にソニーは、このPlaceEngineを搭載したPSP用のソフト「みんなの地図2」を発売する予定である。

    位置の情報は、GIS、Lifelog、体験記録など、さまざまなものに関係してくる。

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