【レポート】

「11gのリリースは来年夏」- Oracleが展開するデータベース&グリッド戦略の今後

    五味明子  [2006/11/20]

    10月にサンフランシスコで開催された「Oracle Open World 2006」で、少しだけその姿を見せた「Oracle Database 11g」(以下、11g)。14日に東京で行われた「Oracle Summit 2006」のセッションで、日本オラクルのシステム製品統括本部 営業推進部部長 杉崎正之氏は「(11gの開発自体は)ほぼ終了している。2007年夏には出荷できる予定」と語った。11gはOracleにとって単なる「自社製品の新バージョン」ではない。SOAやグリッドといった、同社がここ数年に渡って展開してきたあらゆる戦略・アーキテクチャの「集大成」ともいうべき製品だ。"The Future of Database Technology"と題されたセッションで、杉崎氏は同社のデータベース事業を振り返りながら、11gによって実現される機能について解説した。

    現行バージョンの10gは、杉崎氏によれば「(9iからの)シフトが成功したデータベース」だという。事業の柱のひとつとなる商品に"grid"を意味する"g"を付けるほど、グリッドコンピューティングはOracleの事業展開において最も重要な位置を占める。「前バージョンの9iでは、データベースの計画外停止を防ぐためにRAC(Real Application Clusters)を実装した。24時間365日、本当にシステムを止めないのは難しいが、それを可能にしたのがOracle 9i」(杉崎氏)。そして9iで実現した高可用性をさらに発展させるべく、次にOracleが目指したのが、企業内に散在するリソースの一元管理を可能にする"Enterprise Grid Computing"だ。

    「10gによって複数のアプリケーションを1つの基盤で動かすことが可能になった。ハードウェアを効率的に利用し、必要なときに必要なだけリソースを使うことができれば、大容量で高速な環境と運用管理コストの大幅な低減が期待できる」(杉崎氏)。めいっぱい負荷がかかっているシステムの横で、メモリもCPUも遊休状態にあるシステムが存在する-グリッド採用のメリットはそういったリソースの無駄を減らせるところにある。

    杉崎氏は「日本ではグリッドの事例がまだ少ない。グリッドを採用すればもっとコストを下げることが可能になるのだが」と指摘する。アメリカでは、Amazonのようにデータウェアハウスでもグリッドを採用している企業が多いが、日本では「可用性が非常に重要視されるので、そこまでの普及に至っていない」(杉崎氏)という。だが11gの登場により、そんな状況にも変化が訪れるかもしれない。

    11gでは実に500近い機能強化※1がされているというが、残念ながらOOWではグリッド強化部分に関してはほとんど明らかにされなかった。「理想はデータベースとアプリケーションサーバが常に通信しあい、一方のリソースが足りなくなれば一方のリソースを使える状態を保つこと。だがこの状態を実現するにはリソース配分が非常に難しい」と杉崎氏は言う。適切なリソース配分のためには、グリッド管理機能(Grid Control)の強化が欠かせないが、11gではどの程度実施されているのか、次のRC版での情報公開に期待したい。

    ※1 データベースを停止することなくパッチを適用することが可能な「Hot Patching」、SQLプロファイルを自動的に作成する「Automatic SQLTuning」、ファイルサーバからのデータ読み出しを高速かつ安全に行う「Oracle SecureFiles」、重複データをポインタに置き換えデータセグメントの圧縮効果を高めるJITコンパイラの採用、など。詳細はOOWのレポートを参照。

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