【レポート】

村井純、山口英が語るJPCERT/CCの過去、現在、そしてインターネット

3 インターネットのこれから

    小山安博  [2006/10/28]

    インターネットは自由と創造性のためにある

    さて、村井・山口両教授といえば、日本のインターネット黎明期からの立役者の2人だ。2人の話はJPCERT/CCの話からさらに拡大していく。

    「インターネットは自由と創造性のためにある」と村井教授。「自由に、創造的に(何かを)作るための基盤がインターネットであって欲しい」(村井教授)。しかし、インターネットには安全性や信頼性がないとされる風潮に対し、「医療のためのアプリケーションのようなセンシティブな利用のためには、ルーティングも洗練され、TCP以外のレイヤーができなければ要求に応えられない」(同)と、今後インターネットを改善する必要性も認める。

    そうした意味では「NGNが一番ありがたい」(同)という。IPをベースに新しいネットワークを作ろういうことで「今の若い人は燃え上がってきたと思う。WIDEのミーティングがこんなに活気があるのは久しぶり」(同)。

    ただ、NGNに対する不満も両者は話す。「(NGNに関する報道発表は)インターネットが安心じゃないと書いてある。すでに作られている経済基盤を切って捨てて、NGNという不安(をあおる)ビジネスを助長させているのは、情報セキュリティのコミュニティが許してはいけない」(山口教授)として、すでにビジネスとしても不可欠となっているインターネットの安全性・信頼性をさらに向上させる必要性を訴える。

    村井教授も、「閉じたネットワークなので安心という方向に向かうのは1つのソリューションだが、インターネットのスピリットは維持しなければならない」と話す。「すべての人が参加できるインターネットを安心、安全にすることが重要。悪いやつを排除して、少数の知っている人だけしかいないから安全(なネットワーク)だというのは、いろんなビジネスチャンスや創造性にもとづく産業ができなくなる」(同)。

    村井教授の心配の種は、VoIPのようなリアルタイム性を要求されるアプリケーションだという。現在、地球の裏側までパケットを飛ばして戻ってくるのに130ms程度が必要で、VoIPのようなアプリケーション向けに対しては「ほとんど余裕がない」(村井教授)。そうしたレイテンシの問題があるのだそうだ。

    これには国際的に大きな問題があり、ネットワーク的には日本は「西の果てにある」(同)。日本から中国、ロシアを通るルートが分断されているためで、ロンドンへのルートもインド洋に向かう南ルートを使わなければならず、仮に中国、ロシア経由でロンドンへ回線が敷かれていれば距離にして半分、時間にして1/3以下でパケットが到達するそうだ。

    村井教授によれば、VoIPはトラフィック自体はたいしたことがないものの、チャネル数が急増しているそうで、ネットワークの安定性や信頼性確保のためには今までとは違ったテクニックがいる、という。

    VoIPのような新しいアプリケーションが増えているように、インターネットは、安価にデジタル情報を扱える基盤だ。インターネットを「誰でも使えるところを地球上におかなければならない。安くやる(実現する)のがインターネットの挑戦、金をかけずにいいものを作るのがインターネットの心意気」(村井教授)。

    ちなみにこれは、2001年9月のインターネットのトラフィック。9.11のころである

    そしてこれが現在。日本からは米国に向かうトラフィックはあるが、西回りのルートがない

    ロシアにファイバを設置できれば「いびつな」(同)状況から脱せられるという

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