【レポート】
Oracle OpenWorld(OOW) 2006も3日目となり、盛り上がりが最高潮へと達するころ、米Oracle CEOのLarry Ellison氏による基調講演が開催された。立ち見も出る超満員の会場の中、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が終了する西海岸時間の13時(東海岸時間16時)のタイミングで、同社のNasdaq上場20周年を記念するクロージング・カウントダウン・セレモニーが催された。会場にはNasdaqからの関係者も駆けつけ、新興市場としてのNasdaqの盛り上げに長年寄与してきたOracleの業績がたたえられた。
祝福ムードの中でスタートした基調講演でEllison氏が語り出したのは、Oracleの過去と未来についてだ。近年Oracleは「グリッド(Grid)」というキーワードを前面に出した戦略を推し進めているが、同氏がそのライバルとして挙げるのがメインフレームだ。高い信頼性とパフォーマンス、だが値段は高くメンテナンスは容易ではない--これがメインフレームに対する一般的なイメージだろう。Oracleが動作するPCやUNIXアーキテクチャのマシンは、それ単体での信頼性やパフォーマンスはメインフレームに及ばないものの、複数組み合わせることで互いの弱点を補い、より高度な処理を行うことが可能になる。
「PCをグリッドとして集めることで、メインフレームよりも信頼性の高いシステムをより安価に構築することが可能になる。例えばグリッド内で64台のマシンが動作していたとして、1台ダウンしたとしてもシステム全体では1つのアプリケーションを継続動作させることができる。PC1台自体は非常に安価だが、複数集めることでメインフレームの能力を超えることが可能になる。これがグリッドの効果だ」とEllison氏は強調する。「システム導入の際も、メインフレームでは導入前に業務ワークロードを見積もって最適なシステムを選択する必要があるが、PCグリッドではその必要はない。もし処理能力が足りなければ、適時いつでも追加が可能だからだ」と柔軟性の面でもメリットがあると述べている。Oracleのこうした試みはVer 6時代のVMS向け4ノードクラスタまでさかのぼるが、その後Ver 8のRAC(Real Application Cluster)を経て、10g Gridで結実する。来年2007年中旬リリースが予定されている次世代版のOracle 11gでは、128ノードのクラスタリングが可能となっているという。
「幅広いプラットフォームに対応するのもOracleの魅力だ。PCの世界でいえば、プロセッサはAMDとIntel、OSではLinuxとWindowsの2種類の選択肢がある。だが価格やオープン性の面でみれば、Linuxが有力な選択肢となる。スタンダードでオープンなアーテキテクチャを採用したLinuxはOracleにとっての重要な出発点だといえるだろう。実際、長年にわたってOracleはLinuxに対して大きな投資を行ってきた。例えば1998年には、商用としては初のLinux向けDBをリリースしている」とEllison氏は続ける。
「だがOracleがコミットしているのはLinux OSやオープンソースコミュニティだけではない。同時にLinuxを使うカスタマーをいかに保護するかが重要になる」と同氏は述べ、その取り組みが「Unbreakable Linux」登場へとつながったという。「例えば金融会社がLinuxを基幹システムに利用する場合、"(信頼性や保障という面で)お墨付き"を必要としている。つまりここで最も大きな問題となるのは、エンタープライズクラスの信頼性をLinuxカスタマーにいかに提供していくかという点だ」(Ellison氏)
「カスタマーはアップグレードを嫌う傾向がある。それは、アップグレードにともなく各種リスクを避けるためだ。だが現状で "○○のバージョンには○○のパッチを" "△△のバージョンには△△のパッチを" といったように、OSのバージョンや環境に応じて異なるサポートをベンダー側が提供する必要があり、なかなか対応が難しい。また別の問題として、知的所有権(IP)に関する問題も挙げられる。以前、SCOがベンダー側だけでなく、Linuxを利用する大手顧客を相手にIP侵害の訴訟を起こしたが、カスタマー側としてはたまったものではない。こうしたリスクをすべてひっくるめてベンダーが安心してLinuxを利用できる環境をカスタマーに提供するのが、Linuxの利用をさらに拡大するための道だ」というのが同氏の意見だ。
「本日発表するのは、こうしたリスクをすべてOracleがベンダーとして保障し、Red Hat Linuxを利用するユーザーに対してフルサポートを提供するサービスだ」と述べ、従来のUnbreakable Linuxを拡張する「Unbreakable Linux 2.0」プログラムを発表した。
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Linuxへの取り組みの歴史。業界としては初となるLinux向け商用DBをリリースしたのもOracleだ |
2002年にスタートした「Oracle Unbreakable Linux」。Linuxでエンタープライズクラスのサポートをユーザーに提供する試み |
Unbreakable Linux 2.0では、Red Hat Linuxを利用するユーザーに対し、Red Hatのサポート契約と同等のサポートを提供するサービスだ。例えば、バグやユーザーに固有の問題が発生した場合、Oracleが自ら動いて問題を解決するパッチ等のバイナリを迅速に提供する。バイナリイメージはRed Hatと同じRPMで提供されるため、Red Hatのサポートなしでもそのまま自身のRed Hat Linuxシステムを使い続けることができる。Oracleによれば、すべてのバージョンのRed Hat Linuxをサポートし、アップグレードなしで旧バージョンのシステムをそのまま使い続けることが可能だという。
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2002年に発表されたUnbreakable Linuxをさらに発展させて、より信頼性が高く、知的所有権(IP)問題からユーザーを保護するLinuxのエンタープライズサポート「Unbreakable Linux 2.0」が今回のメインテーマ |
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Unbrekable Linuxは「Network」「Basic」「Premier」の3種類が用意される。またプロセッサ数に応じてBasicとPremierには2種類の料金メニューが用意されており、計5種類の料金体系となる |
Red Hatの提供するサポートサービスとの比較 |
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プロモーション価格として2007年1月31日まで50%オフの価格でサービスの提供が行われる |
Red Hatのサポートサービスを受けているユーザーを対象に、OracleのUnbreakable Linuxサポートへと移行を促す。Oracle製品自体は従来どおりRed Hat、SuSE等のプラットフォームでの動作をサポートする |
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Unbreakable Linuxサポートの特徴は、Red HatのサポートサービスからOracleのサポートへと移行したとしても、Red Hat Linux向けパッチのバイナリ・ダウンロード・サービスの提供をOracleより受けられる点だ。実際のアップデートの過程をデモで紹介する |
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ダウンロードしたRPMイメージを展開することでアップデートできる。このあたりの手順はRed Hatの場合と同様だ |
Linuxでのエンタープライズクラスサポートの提供に対し、DellやIntelなど、業界各社からの賞賛コメントが寄せられた |
今回のEllison氏の発表で、Oracleは「フルスタックでのシステム提案」という目標を達成するための最後のピースをLinuxで補完したことになる。ではなぜ、Linuxの中でもRed Hatなのだろうか? 同社によれば「LinuxディストリビューションでのRed Hatのシェアを考えれば、Linuxでビジネスする以上はRed Hatを避けて通れない」という理由のようだ。
では、Red Hat LinuxのサポートをOracleがどのように提供するのだろうか。Ellison氏によれば、Linuxとしてソースコードはすでに公開されているため、問題が発生すればOracleの技術者が全力でソースコードの解読と解決にあたり、可能な限り迅速に対策パッチの提供を行う予定だという。「Linux自体はオープンなものであり、作業自体は何の問題もない」というのが同社のスタンスだ。
だが周知のように、LinuxディストリビュータはOSの販売それ自体ではビジネスは成り立たず、あくまでサポートをビジネスにしているのが現状だ。今回の発表でOracleがRed Hatのサポートからユーザーを自身のサービスへと誘導することで、結果的にRed Hatのビジネスチャンスを奪う可能性もある。Ellison氏はこうした指摘に対し「Oracleは何もRed Hatを殺そうとしているのではない、カスタマーのLinuxへの適合速度を速めようとしているだけだ。適度に競争原理を持ち込むことで、製品(とサービス)はより良いものとなっていく。われわれの目標は、すべてのLinuxをより良いものとすることだからだ」と述べ、基調講演を締めくくった。
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