【レポート】
現在、絶賛劇場公開中のディズニーのフルCGアニメ「Cars」。SIGGRAPH 2006にて、この「Cars」を製作したピクサーのスタッフ2名が壇上に立つ「Vrooom Vrooom:SIGGRAPH at 500 Horsepower」と題されたスペシャルセッションが開催され、その製作秘話が語られた。
「Cars」の登場人物は全て自動車。その自動車達は生きていて、互いに話し合い自発的に動く。まず、課題となったのは、こうした世界観の中に生きる車達を、映画ではどう表現すべきかであった。
「子供のとき、自動車は顔に見えたものです。ヘッドライトが目。グリルやバンパーが口……というように」(Gary Schultz氏)
確かにそう見えるし、大人でもその多くは車のフロントデザインは顔として見たときにかっこいいかどうかという判断をしているだろう。ただし顔に見えるからといってかならずしも演技や感情表現ができるとは限らない。過去にディズニーでは「小型クーペのスージー 」(Susie the little Blue Coupe:1952年)という車を擬人化した作品を製作しているが、この場合は車の目を窓ガラスに、そして口をフロントバンパーあたりに設定している。
確かに車は前述のように、ヘッドライトを目に見立てて顔に見えるのだが、アニメ映像の表現手段としてこの方法をとると、顔のパーツが車の前部に集中してしまうことになり、そのフロント以外の大部分が身体ということになってしまい、プロポーションとして芳しくない。まるで虫やヘビのような生き物に見えてしまう。そこで、ピクサーではフロントガラスに目を描き、口をバンパー付近とする「スージー」と同じ表現技法を採用することにした。
続いて検討要項になったのは「形状とディテール」の問題。
「フロントガラスに目を書くのは良いとして、フロントガラスは斜めに付いているので、ここに普通に目のテクスチャを書いてしまうと、視線が斜め上の空を見ているような感じになってしまいます。互いに目をそらして話し合っていては不自然だし不気味です。そこで、フロントガラスのジオメトリの傾きは無視して、真っ直ぐ前を見ているような表現を採用することにしました」(Gary Schultz氏)
「真円の瞳」テクスチャを用意し、そのままフロントガラスに貼ったとしても、フロントガラスは斜めなので楕円に見えてしまうはず。「Cars」では、どんな時もこちらを見ているように目の表現部分だけは3Dを無視し、視点から見て真円となるように表現している。そして、車のフロントは顔に見えるので、そのままではフロントライトを目に見立てた顔と、フロントガラスに目を置いた顔とが二重に見えてしまうことになる。
そこで、フロントバンパー付近のディテールはあっさりとシンプルすることでこれを抑止するデザイン方針になったという。また、フロントガラスに目がある都合上、室内が透けて見えたり、オープンカーだったりすると、擬人化表現として不自然に見えてしまったため、「Cars」の世界観ではオープンカーはなく、また、前後左右の窓ガラスも透過させない不透明表現としている。
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