【レポート】

放送と通信のせめぎ合い、中国では

2 IPTV商用化の阻害要因とは

西山楓  [2006/08/10]

IPTVの普及は困難な道すじ

政策面での制約と地方保護主義の存在が、IPTVの推進を困難なものにしている。昨年12月、上海文広と泉州電信が提携して打ち出した「百視通」ネットテレビが泉州広電に止められた。その後、浙江広電が浙江省全域でIPTVを封殺、IPTVの全国推進に暗い影を落とした。

現在の管理体制下では、テレビ放送用コンテンツがしっかりと放送部門に握られ、通信部門にはテレビ放送運営資格がない。とくにIPTVへの参入許可権が放送部門にあり、通信部門は手も足も出せない状態だ。通信側はIPTVにおいて、一貫して政策的に不利な立場に立たされてきたわけだ。にもかかわらずIPTVを推進しようとするのであれば、広電総局の許可を得るだけでなく、各地方の広電当局との関係も上手く整理していかなければならず、これはかなり長い道程になることだろう。

中国のブロードバンドユーザーの72%は、ADSL環境にある。ADSLではダウンロード速度が理論値で2Mbps、実測値では数十~数百kbpsにとどまるため、スムーズに番組放送が提供できる状態にはなっていない。また、技術的にIPTVを支えるブロードバンドネットワークと映像圧縮フォーマットなどの技術は、まだ発展途上にある。IP協議に基づく伝送速度ではネットワークサービスの品質を保障することができず、また、サーバーの単位時間内における応答数にも制限がある。そのため、同時に受け入れられる視聴者の数も限られている――これらの要因がIPTVの大規模商用化を阻害している。

さらに番組ソースおよび番組管理、番組コンテンツの貧弱さが、IPTVの展開スピードに直接影響している。IPTVに関する政策が依然不透明な状況下、番組コンテンツ提供業者は過度の投入を嫌っている。また、政府はインターネットにおける映像管理より、テレビ運営面での安全管理のほうをより重視している。通信業者はインターネット上の映像管理においては経験があるが、テレビ放送での安全管理においてはまったく無経験だ。これも広電当局がIPTVを疑う点の1つで、IPTVの普及速度にかなりの影響を及ぼすものと見られる。

政策、技術、コンテンツおよびユーザーなどの幾多の要因により、IPTVの推進は今後も困難な発展の道すじを辿ることになるだろう。広電当局が当分の間、映像コンテンツの管制という政策的優位にあることが、困難さに拍車をかけよう。無論、広電にも現段階においては電信と全面的な競争を始めるだけの実力が備わっていない。予期できる将来において、IPTVとデジタルテレビとの競争は徐々にその範囲を拡大し、短期スパンでは局所的な競争、長期スパンでは、やがて全面的な競争に踏み込んでいくだろう。

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