【レポート】

アキバ発・つくば着の"ITエクスプレス" - TX、列車内無線LANを8月に商用化

    大塚実  [2006/07/26]

    つくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道など5社は、共同で記者会見を開催し、2005年から整備を進めてきた列車内無線LANインターネット接続環境の構築完了について発表した。2005年8月の開業時より実施してきたトライアルは7月末で終了し、8月24日からはNTTドコモによる商用サービスが提供される。

    左から、NTTBP代表取締役社長の小林忠男氏、NTT東日本ブロードバンドサービス部長の井上福造氏、インテル代表取締役共同社長の吉田和正氏、首都圏新都市鉄道代表取締役社長の高橋伸和氏、NTTドコモ執行役員の徳広清志氏

    TXの列車内・駅構内での無線LANインターネット接続環境を整備してきたのは、首都圏新都市鉄道、インテル、NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の3社。当初は1編成のみ、区間も秋葉原-北千住間に限られたが、順次利用可能なエリア・編成を拡大し、7月20日には全区間での整備を完了。そして車両も7月末までには、秋葉原-つくば間を運行するTX-2000系の全16編成で利用が可能となる見込みだ(ただし、守谷まで運行のTX-1000系では利用できない)。

    TX-2000系には、このようなボックスシートもある

    アクセスポイントは車両ごとに用意されている

    トライアルは、TXが開業した2005年8月24日から続けられてきたが、当初モニターの定員を300名としていたところ、予想を超える応募があり、これまでに約4,500人、3万アクセスの利用があったという。ネットワークを構築したNTTBPの小林忠男代表取締役社長は、「こういったトライアルをこれまでに数回経験したが、モニター数が増えていくのは普通はせいぜい2~3週間まで。今回のトライアルでは、それが右肩上がりで増えてきており、このサービスに対する関心の高さを表しているのではないか」と述べた。

    利用者数とアクセス数の推移

    モニターからの評価も改善

    今回の無線LANシステムのユニークな点は、列車外への通信にも無線LANを採用したことだ。列車内を無線LANのホットスポットにするのは、これまで成田エクスプレスなどでも例があるが、列車から外部への経路が携帯電話などであったために、高速な通信は難しかった。しかしTXでは、全線58kmを駅端に設置した38局、駅間の中継局27局によりエリアカバー、モバイルIPによる高速ハンドオーバーを実現した。

    ほとんどの区間を無線LANでカバーできるようになった(青い部分)

    速度の比較。平均で1Mbps超のスループットを実現している

    指向性アンテナにより、駅端からの無線LAN到達距離を長くした。平均800m程度だという。しかし、駅が離れている区間だとそれでも届かないエリアができるため、途中に中継局を設置(これは同500m程度)、中継局と駅との間は、25GHz帯のWIPAS(Wireless IP Access System)で接続した。そして列車内には、車両ごとにアクセスポイントを用意、エンド・ツー・エンドでのワイヤレスブロードバンドを実現している。

    システムの全体図。時速130kmで走るTXは各ゾーンを15~20秒で通過する

    車両間もワイヤレス。ケーブル配線が不要なので、コストダウンの効果も

    実際の駅端に設置されているアンテナ(裏側)。中央の大きいものが2.4GHzの無線LAN用で、その下は中継局用のWIPASアンテナ

    かろうじて左端に中継局が写っている。ここには、WIPASアンテナのほか、列車接続用の無線LANのアンテナなどがある

    列車の前後には、アンテナが設置されている(上下に2つ)

    TX-2000系の車両。6両固定編成で、現在16編成が配備中

    商用サービスは、TX開業からちょうど1年となる8月24日より、NTTドコモの無線LANサービス「Mzone」「mopera U」が利用可能となる。次いで、NTT東日本も「フレッツ・スポット」のサービスエリアとする予定で、年内には提供を開始する意向だ。利用には契約が必要となるが、トライアルユーザーに限り、1カ月間の体験キャンペーンも用意されている。

    「点」から「線」へのエリア拡大

    両コースの利用料金など

    列車内から無線LANのみを利用する高速インターネット接続は「国内初」(NTTBP)となるが、最初の路線としてTXが選ばれたのには理由がある。首都圏新都市鉄道の高橋伸和代表取締役社長は、ITの発信基地となりつつある秋葉原と、大学・研究施設が集まるつくば市を結ぶという立地条件を指摘。TXを「ITエクスプレス」と呼んだうえで、ITに対して熱心なビジネスユーザーや学生が多い路線であると述べた。

    東京のほか、つくばにも本社があるインテルの吉田和正代表取締役共同社長は、「列車内での無線LANの利用は革新的」とする一方で、「これが最終目的ではない」とコメント。沿線駅周辺の商業・公共施設などでも無線LANやITの活用を推進し、「IT技術を地域の活性化にどう役立てるか、TXの沿線を通して検証していきたい」とした。

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