【レポート】

FTF Americas 2006 - Power ISA 2.03の発表

AMDがATIの買収を発表して大騒ぎになった24日だが、それとは余り無関係な組み込み業界系では大きなイベントであるFreescale Technology Forum Americas 2006がフロリダ州オーランドにあるJW Marriott and Ritz-Carlton Conference Centerで始まった(Photo01)。名前から判るとおり、Grand Lakeという湖に面したリゾートホテルで、実際会場の外は完全なリゾートである。ここで3日半(初日はパネルディスカッションが半日あるだけ)に渡り、ピークで同時23、合計で257ものテクニカルセッションが開催されるという猛烈なものである。ものがものだけに、速報といったネタは期待できない(というか、ありえない)が、まぁのんびりとこのFTFのレポートをしてゆきたいと思う。

初日はPower.org関係のパネルディスカッションに2つ参加したので、ここからPower.org関連の話題を簡単にお伝えしたい。

Power.org

案外に知名度は高くないが、PowerPCに関連するベンダーにより結成された、Power.orgという団体がある。設立は2004年12月で、2006年2月にはFreescaleもFounderとしてこれに参加している。この団体、Founder / Sponsor / Participant / Developerの4つのレベルで参加が可能だが、面白いのはDeveloperは無料で参加できること。例えばPowerPC Architecture Bookを入手したいと思った場合、この登録を行えば簡単に入手が出来る。現状全世界で4000人以上が登録しているそうで、実際筆者も今登録を行ったばかりだったりする。

さてそのPower.orgの組織はIEEEなどに似た構成となっている(Photo04)。左上のPAAC(Power Architecture Advisary Council)がアーキテクチャの総括作業を行っており、またこれと並行して複数のTechnical Commiteeが様々な標準化を行っている。現状Technical InitiativeとしてはPhoto05の様な項目が挙がっている。ただ進捗は当然分科会によって異なっており、大さっぱにはPhoto06の様な感じだそうである。

Power ISA 2.03

このPower.orgの最新の成果が、Power ISA 2.03だが、いきなりこの話をする前に、まずPowerPCのアーキテクチャ的変遷をちょっと紹介したい(Photo07)。もともとはIBMのPowerチップを元に開発されたPower PCだが、まずIBM / Motorola / AppleでBook I / II / IIIというPowerPC Architectureが開発され、これが1.10となる。このうち32bit ISA(Instruction Set Architecture)がMotorolaのPowerPC Book E(Embedded) 1.0に引き継がれ、一方IBMはPower PC Book I / II / III 2.02を策定。このうち64bit ISAに関してのみFreescaleのPowerPC Book E 1.9に取り込まれる。要するにIBMとFreescaleが、PowerPCのISAをそれぞれメンテナンスするという無駄の多い作業が続けられてきた訳で、これを一本化したのが今回のPowerPC ISA 2.03という訳だ(Photo08)。Book 1 / 2 / 3の違いを簡単に説明したのがこのプレゼンテーション(Photo09)で、要するにOSやSpecial Driverを書くのでない限り、Book 1 / 2で用が済むわけだ。あとはServer系CPUの場合はBook3s、Embedded系CPUの場合はBook3eに準拠させる形でインプリメントを行えばよい、という話である(Photo10)。IBMはこのPowerISA 2.03(おそらくはBook 3s)に準拠したPowerPC 970のReference Boardを今年第3四半期中にリリースし、一方Freescaleは同社のe200/e500 CPUコアが既にPower ISA 2.03(おそらくBook3e)準拠で、この開発キットを提供できるとしていた。

このPowerPC周りに関してはもう少し話を聞く機会がこの後あるので、また改めてレポートしたい。

Photo01:これはJW Marriottのホテルそのもの。この左、1Km弱の所にRits-Carltonがあり、間をConference Centerが繋いでいる。

Photo02:仕事をする気を完全に無くす光景。もっともこの写真を撮った1時間後には猛烈なスコールが来て、「ざまあみろ」とか思ったりしたのは内緒だが、スコールらしく30分もすると空は晴れ渡り、やっぱり仕事をする気を無くすのであった。

Photo03:右上が新しいPower.orgのロゴ。個人的には昔の方が好きだった。

Photo04:IEEEを真似るのはいいのだが、IEEEがしばしば政治的抗争の場と化してる事を想像すると、ちょっとヤな気分になってみたり。まぁ今のところはそうした話はないようだが。

Photo05:Bus Architectureとは、SOC内部で使われるBusで、External Busではないとの事。またStorage Virtual Partitioningは名前の通りNAS向けの話で、これはIBMが主導を取っている(というか、IBMのニーズに合わせて作られた)らしい。

Photo06:この後説明するPAPRが唯一Approveされており、Reference PlatformとかBus Architectureはまだ開発段階。Storage Virtual Partitioningはまだドラフト前だし、Home Media Serverは構想段階だそうで。

Photo07:IBMはサーバー向けの機能、FreescaleはEmbedded向けの機能をそれぞれ必要とし、これを個別に拡張する形でいままで来た。よく互換性がとれてたものである。

Photo08:Book 1 / 2はIBMとFreescaleの両方で使うもの。Book 3sはIBM系を引き継ぐServer向け、Book3eとBook VLEはFreescale系を引きつぐEmbedded向け。

Photo09:このあたりはx86なども似ているが、Virtual Environmentが定義されているあたりがちょっと異なる部分か。もっとも最近x86もVTやらAMD-Vやらが出てきて、ほぼ同じ事になってしまっているが。

Photo10:ちなみに話題に出てこなかったBook VLEとはVariable Length Encodingで、要するにARMで言うThumb / Thumb2やMIPSで言うMIPS16に相当する、16bit長の命令セットである。これは通常の32bit命令に混在させることが出来、最大30%のコード密度向上が可能なものだそうだ。



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