【レポート】

日本で初めて"浮いた"リニアのその後

1 リニアモーターカーとは何か

    日高彰  [2006/07/18]

    愛知県長久手町で、愛知万博へのアクセス路線として話題になった「リニモ」が開業して1年4カ月。日本初の磁気浮上式リニアモーターカーとして、万博会期中は単に会場への交通としてだけでなく、ひとつの万博出展物であるかのように注目を集めていた。しかし、万博が閉幕して以降、利用客は当初の想定を大きく下回っているという。日本初の浮上式リニアのいまを取材した。

    本格的な営業路線としては日本初の磁気浮上式リニアモーターカー「リニモ」(愛知高速交通東部丘陵線)

    リニアモーターカーは必ずしも「未来の超特急」ではない

    まずはリニモの特徴について振り返っておこう。2005年3月6日に開業したリニモの正式な路線名は「東部丘陵線」といい、名古屋市から東側の長久手町に広がる丘陵地帯を走る8.9kmの路線である。この丘陵地帯は新興住宅地や大学・研究機関などが並ぶが、これまで長らく鉄道(※1)の空白地帯で、1992年に旧運輸省の運輸政策審議会は「2008年までに中量軌道系の交通システムとして整備することが適当である区間」と位置付ける答申を出していた。リニモはこの答申に基づいて整備された路線であり、つまり形式的には愛知万博の開催とリニモの建設は無関係なのだが、実際にはこのタイミングで事業化され開業に至ったことが、万博の影響であるのは間違いない。そして最大の特徴は、本格的な営業路線(※2)としては日本で初めて、磁気浮上式リニアモーターカーを採用したということだ。

    ※1:なお、法的な区分ではリニモは「鉄道」(根拠法:鉄道事業法)ではなく「軌道」(同:軌道法)だが、この記事では両方を含む広い意味をとって、リニモも「鉄道」と表現することにした。
    ※2:1989年の横浜博覧会で約500mのHSST路線が鉄道事業としての免許を受けており、厳密にはこれが日本初の磁気浮上式リニアモーターカーの営業運転となる。

    通常の鉄道で台車にあたる部分は、モジュールと呼ばれる平型のユニットが占めている。浮上はわずか8mm程度なので、見ても浮いていることはほとんどわからない

    リニアモーターカーというと、浮き上がって走る未来の超特急というイメージがなぜか定着してしまったが、そうである必要はない。「リニアモーター」とは、回転ではなく直線的な運動をするモーターのことで、最近では電動シェーバーや自動扉などにも利用されている。リニアモーターカーとは、前に進む力(推進力)を生み出すためにリニアモーターを使う鉄道のことを言うのであって、浮くか浮かないかは関係ない。

    具体的には、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線(1990年開業)や都営地下鉄大江戸線(1991年開業)をはじめとして、リニアモーターによって駆動される鉄道は既にいくつもの路線が開業している。これらの路線では、普通の鉄道と同じようなレールと車輪があるが、モーターで車軸を回して進むのではなく、車体に取り付けられたコイルが発生させる磁力と、地上に敷かれた金属板(このコイルと金属板がリニアモーターの関係になっている)に生じる誘導電流の相互作用によって前に進む。浮上してはいないが、これも立派なリニアモーターカーである。"浮かない"リニアはこれまでにもあったのだ。

    逆に、磁力によって浮上していても、推進力にリニアモーターを使わない、「リニアモーターカーでない浮上式交通」も考えられる。例えば、磁力で車体を宙に浮かせておき、プロペラやジェット噴射によって前に進むといったものだ。これは確かに速そうだが、飛行機が地上すれすれを飛んでいくようなもので、騒音や排気などの問題のため実用にはならないだろう。

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