【レポート】

Web2.0の原初「オリジナル文学」 - 群雄割拠から三国鼎立時代を迎えた中国・文学サイトのゆくえ

1 Web2.0としてのオリジナル文学 - 中国では商業化の道を歩む

    西山楓  [2006/07/16]

    2006年は「Web2.0の年」と言っても過言ではないかもしれない。数多くの新しい概念と、聞き古されたような呼称、またBlog、SNS、Wiki、Podcastなどなどが世の中に溢れている。しかし、中国のネット世界においては、これらのほかに無視できない新しい勢力が現れた。

    それが、「原創文学」(オリジナル文学)のサイトである。Web2.0の核心がユーザー参加型、ユーザーが主体的に関わるコンテンツの創造だとすれば、オリジナル文学サイトはWeb2.0の最も原初的な姿であるとも言える。

    1995年、中国にインターネットが登場して以来、オリジナル文学作品は、インターネットにおいて欠かすことのできないものとなった。以後、瞬く間に大量のプロやアマチュアの文学サイトが出現する。それから11年の歳月が経つが、これらの文学サイトは、激動のインターネット時代を生き抜き、成長してきた。

    現在流行している「玄幻文学」に属する作品は、その内容から見ると、ゲームをしたあとに書いた感想文にも似たようなものだとされている。玄幻文学はある意味で、この時代の芸術的想像力の貧困を表しており、それこそが昨今の玄幻文学の一大特色でもあると指摘する専門家がいる。少し前の『仙剣奇侠伝』、『暗黒破壊神』などのPCゲームから、近年の『天堂』、『魔獣世界』、『伝奇』などのネットゲームまでの期間を通じ、中国のネットゲーム愛好家数はすでに3,000万に達するまでになった。2005年のネットゲーム市場の総売上高は37.7億元で、関連産業を合わせれば実に400億元にも達すると報じられている。

    ネットゲームが迫真の演出と奇妙玄幻のストーリー展開により、一定の文学表現能力をもつ愛好家の創作意欲を誘発、これらの愛好家たちがゲームの中で体験した自らの印象を表現する。あるいはまた、一部の愛好家たちはゲームストーリーの背景からさえ脱し、他の要素を自在に取り入れてストーリーを創作していく。前者は事実上一種の体験小説だが、後者は本当の意味での玄幻小説に近いと言えるだろう。この方面で名高いのは『小兵伝奇』で、いまのところ「最も人気の高いネットゲーム小説」との評価を受けている。

    商業化の道を探り、歩み始める文学サイト

    ネットゲーム市場とその周辺市場のあまりの巨大さゆえ、玄幻小説は、いまやネットゲーム産業チェーンの一部のごとき存在になっている。そのため、少なからぬ玄幻小説専門サイトが出現し、多くの書き手がオンラインで創作、また多くの読者が有料で閲覧するようになった。しかし、そもそも玄幻文学のサイトはネットゲーム企業と関係の深いもの――たとえば「起点中文」のサイトは盛大傘下のサイト――である。この意味では、現在の玄幻小説はネットゲームの付属物に過ぎない、とも言えそうだ。

    もちろん、ネット文学は玄幻文学にとどまらない。ネット文学を構成するもう1つの重要な局面は、参加人数がより多く、作品数もより膨大なオリジナル文学だ。

    1997年に『初対面の親密な接触』がヒットして以来、全国で増殖するインターネットユーザーたちは、それこそ空前の情熱をもってオリジナル文学に注目、ネット文学創作の潮流に乗り始めた。ネット文学は草創期から人々の文学観に大きな衝撃を与えてきたが、現実社会に存在する文学もまた、ネット文学から娯楽という強烈な色合いを与えられてきた。インターネットユーザーたちは、ネット文学が文学創作の平民化をもたらすと小躍りしているが、こうした現象が従来の図書出版の仕組みまでをも揺さぶっているのだ。この意味では、ネット文学はもはや現代の文化現象の1つであり、ネット文学の土台である文学サイトは、自然の成り行きとして、この現象のもっとも有力な推進者となったのである。

    ネット文学の空前の繁栄はまた、巨大なネット文学市場を形成しつつある。しかし、多額の資金サポートやそれ相応の運営モデル、成熟した市場経験がなければ、「文人」たちと市場との間には隔たりができてしまう。そのため、各文学サイトは商業化への容易ならざる道を探り、歩み始めたのだった。

    2006年という現在の地平から振り返ると、「ネット文化の商業化」という文脈で、様々な展開がなされてきたことがわかる。そもそも「ネット文化商業化」という言葉には、3つの要素が含まれている。「ネット」、「文化」、「商業(産業)」という3要素だ。中国国内には数多くの新旧文学サイトがあるが、真の意味でこの3つの要素をみたし、「産業」と呼び得るものはほとんどないと言ってよい。多くの文学サイトは、ただただ生き残りのために必死で、外来の商業資本に吸収合併されたり、あるいは提携を求めてなんとか「産業」の体裁を整えているというのが実情だ。

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