【レポート】
8日より全国の松竹・東急系映画館にてアニメ映画『ブレイブストーリー』が公開となる。直木賞作家・宮部みゆきの同名長編小説を原作とするこの作品は、フジテレビを筆頭にワーナー・ブラザース映画、アニメ制作会社のGONZOなどが4年の歳月をかけて取り組み、世界配給を目指す一大プロジェクト作品。2006年の夏休みアニメ大作映画としては、1日公開の『カーズ』に続く早いタイミングでの公開となる。
物語は平凡な11歳の少年、ワタルが廃ビルで奇妙な扉を見つけるところから始まる。その直後、ある不幸な出来事に巻き込まれたワタルは、転校生のミツルから「扉の向こうに行けば運命を変えられる」と教えられ、扉を抜けて「幻界(ヴィジョン)」と呼ばれるファンタジー世界に足を踏み入れる。やがてワタルは旅を進めるうちに先に幻界に入っていたミツルと出会う――というもの。扉の向こうの世界では剣や魔法やドラゴンが登場する王道的なファンタジーを貫きながらも、同時に扉のこちら側である現実世界では、主人公たちに家族問題やいじめといった非常に今日的な難題がふりかかるという、原作最大の特徴はそのままに、1,000ページにも及ぶ壮大な内容を映画ではワタルとミツルの物語としてまとめている。
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見習い勇者として幻界を冒険するワタル。勇者の剣を使ったギミックやユニークなモンスターなども見どころ。 |
監督は『LAST EXILE』でも異世界を構築し、評価の高い千明孝一。脚本は『OVERMAN キングゲイナー』のシリーズ構成で「東京国際アニメフェア2003」の脚本賞を受賞した大河内一楼。キャラクター原案・デザイン・総作画監督を担当した千羽由利子は近作『プラネテス』でも大河内とも組んで印象深い仕事を残しており、本作でも一般からアニメファンまで幅広くアピールする魅力的なキャラクターを作り上げている。製作総指揮は『踊る大捜査線』シリーズや『ローレライ』などで日本映画のヒットメーカーとして名高い亀山千広。音楽は『マトリックス』シリーズにも参加したテクノユニット、JUNO REACTORが80名規模のオーケストラを率いて海外録音を行った。
このほかにも『ブレイブストーリー』は、キャストの豪華さで公開前から大きな注目を集めている。主人公の少年・ワタル役は女優の松たかこが演じており、11歳の心の揺れを表現するという難しい役どころに持ち前の演技力で挑戦している。もうひとりの主人公とも言えるミツル役はタレントのウエンツ瑛士が担当し、影のある美少年像を好演。幻界でワタルを助ける水人族の大男キ・キーマには、着々と声優経験を積み上げいまや地元の北海道だけでなく全国区の人気を誇るタレントの大泉洋。そのほかにも常盤貴子、今井美樹、田中好子、高橋克実、柴田理恵、石田太郎、インパルス、北陽、伊東史朗、樹木希林など著名人が大挙して参加。テレビでおなじみの芸能人の口調がそのまま劇中でも聞けたり、あるいは意外な声色を発揮していたりと、そのあたりを聞き分けるのも楽しみのひとつとなっている。また重要な役どころには斎藤千和、川澄綾子といったアニメ業界の最前線で活躍する声優も配しており、単に芸能人を起用しているだけではないこともうかがえる。
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ミツルは辛い過去を抱え、周囲に心を開こうとしない。幻界では魔導士となり、目的達成のために非情な一面すら見せる |
原作での綿密な描写は、密度の濃いビジュアル描写へと転化することでスケール感を損なうことなく圧縮されている。マーケティング調査を重ねたという世界観は、まさにゲーム好きなら一度は夢見るファンタジー世界そのもので、一種のテーマパーク的な楽しみもふんだんに含んでいる。世界配給をうたうだけあってクセも少なく(例えば原作ではゲーム用語が頻出するが、映画では控えめとなっている)、夏休みに親子で映画館に足を運ぶ際の選択肢のひとつとして必ず入るよう、CMをはじめとするプロモーションにも非常に力が入れられている。ただ作品自体は少し優等生的にまとまりすぎているようにも感じた。もちろんメインターゲットである小学校高学年に向けたジュブナイル作品としては申し分ないのだが、この夏は『ポケモンレンジャーと蒼海の王子 マナフィ』や『ゲド戦記』という冒険アニメ映画の大作が続くだけに、欲を言えば、映画版『ブレイブストーリー』ならではの突出した魅力が欲しかったところ。
ゲーム好きで知られる宮部みゆきが原作を手がけたこともあって、やはりゲームとも相性がよいらしく、映画公開に合わせて3タイトルがリリースされた。PS2用の『ブレイブストーリー ワタルの冒険』(7,140円)は映画版のストーリーを再現したアクションアドベンチャー。PSP用の『ブレイブストーリー 新たなる旅人』(5,040円)はオリジナル主人公、タツヤを操るスタンダードなRPG。DS用『ブレイブストーリー ボクのキオクとネガイ』(5040円)も主人公はオリジナルで、ワタルもしくはミツルと旅を進めるアドベンチャー。いずれも発売中となっている。
(C)2006 フジテレビジョン/GONZO/ワーナーエンターテインメントジャパン/電通/スカパー!WT
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