【レビュー】

電動サイクル・電動バイクは本当に"エコ"なのか?

4 短距離コミューターと割り切って使う電動バイク - Passol インプレッション

    西尾淳  [2006/06/29]

    車載状態でも充電できるバッテリー

    試乗した電動バイクはヤマハの「Passol-L」。同じパワーユニット、タイヤを使用する「EC-02」というモデルもあるが、こちらはクルマへの車載を考慮した超コンパクトな、遊び心をもったモデルという位置づけ。実用性ではPassolのほうが高いだろうと、こちらを試すことにした。

    バッテリーは24Ahと、PASのそれに比べて6倍以上の容量。手に下げるとずしりと重い。それもあって、取り外して単体でも充電できるが、車体に搭載したままでも充電できるようになっている。ガレージにコンセントがあれば、そのほうが面倒はないはずだ。ちなみに電装類はバッテリーに合わせて24Vのものが使われている(通常の乗用車・バイクは12V)。

    バッテリーの充電時間は約5時間で80%、約6時間でフル充電になる。走った後は一晩つないでおくという使い方になるはずだ。もちろんメーターにはバッテリー残量計があるが、バッテリー本体にもインジケーターが付いていて、ひと目で充電具合が分かるようになっている。

    また、四輪のハイブリッド車ではブレーキ時の力をモーターに伝えて発電する「回生ブレーキ」を利用するものもあるが、Passol-Lでは滑らかな走行フィーリングを実現するためにこれを採用していない。バイクはデリケートなのだ。

    無音で走り出すおもしろさ

    ポジションは原付スクーターそのものだが、ボディがものすごく細い。スクーターはステップボードと呼ばれる平たい部分に足を載せるのだが、Passol-Lは左右に飛び出たステップを使用する。雨天時など足がカバーされないのは残念だが、それ以上に車体の軽さ、見た目の軽快さを優先したためだろう。ボディが細身ということもあり、足付き性はとてもいい。

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    Passol-LとPAS CITY-Fリチウム。PASは普通の自転車の大きさだが、Passol-Lは非常にコンパクト

    左サイド。ステップボードなどが非常に薄いことがわかる。ホイールベースは1,040mmしかない

    右サイド。シート下はほとんどバッテリーで、ホイール一体のYIPUが目を引く。リヤサスペンションは片持ちだ

    正面から見るとまるでトンボのように細い。ステップが外に出ていて、スクーターとは異なる。レッグシールドはオプション

    メインキーシリンダーは一番左がハンドルロック。右に回してロックが外れ、さらに右に回すと電源が入る。通常のバイクと同じだ。オンにするとメーター表示が入り、セルフチェックの後、ボタンを押すように指示が出る。キーだけでは走れないわけだ。このあたり、エンジンをかける必要のない電動バイクならではのセーフティー機構だろう。

    キーをひねってメーター下のどれかのボタンを押すと走行可能になる。しかし止まったままでは「ピーピー」という警告音が鳴り続ける。走り始めるか、リヤブレーキをかけると音は止まるのだが、「早く走らんかい!」と急かされているようでこれはちょっと気になった。

    足付き性は素晴らしくよい。ライダーの身長は153cmだが、両足までべったりついてしまう

    ユニークなメーター。電源を入れた後、下のボタンを押さないと走り出さない。トリップと積算計は切り替え式

    フロントはドラムブレーキ。制動力はちゃんとあるが、フィーリングがいまひとつ

    リヤホイール回り。モーターや減速機、コントローラー、リヤブレーキなどが一体になっている

    とりあえず走り出す。「ヒューン」というモーター音は聞こえるが、普通のエンジンバイクに比べると無音といっていいほどの静かさ。なんとも妙な感覚だ。四輪の燃料電池車「FCX」に試乗したときはその力強い加速に驚いたが、Passol-Lの「標準モード」ははっきりいって遅い。交通の流れに置いていかれる。そこで「パワーモード」に切り替える。うん、これならいい。ちょっと遅い原付バイク程度の加速が得られるから、安全に走れるはずだ。

    Passol-Lの最高出力は1.2kW/2,250rpm。一般的な原付スクーターが3~4kW程度であることを考えるとかなり低い。しかし最大トルクは大きく、7.5N・m/310rpmもある(一般的なスクーターは3.5~4.5N・m程度)。回転数ゼロからでもトルクを生み出すモーターならではの特性だろう。

    テールランプの上にシートロックのためのキーシリンダーがある。ウインカー類もコンパクト

    シートを開いても、ヘルメットは入らない。コンセントが近くにあれば、バッテリーを車体に入れたまま充電できる

    走行感は「軽快」の一言。パワーは少なくても47kgしかないボディには十分。自転車のような軽快さとも違って、ちょっとしっとりした感じ。たぶん、ホイールに重量のあるモーターが組み込まれているためだろう。

    アクセルはモーターの出力をコントロールする。絶対パワーが低いこともあって、アクセル開度とトルクの出方に違和感を覚えるようなことはない。ただ、回るほどにパワーが出てくるガソリンエンジンと違って、低速域でパワーを出し切ってしまう感覚。逆にいえば、速度の延びが遅く感じるのだ。もう少し速度に乗る感じが欲しいと思った。

    短いホイールベースだが、安定性に問題はない。ただ、あまりに軽いためにハンドルを押さえつけるような乗り方をされないか心配だ。すべてのバイクに共通するが、ハンドルには力を加えないこと。リラックスして乗れば、Passol-Lも軽快に走ってくれる。

    自転車よりも取り回しはラク

    ちょっと驚いたのは、極低速での旋回が異様に安定していることだった。ハンドルをロックしたままの旋回が簡単にできる。ガソリンエンジンと違ってトルク変動が少ないせいだろう。ホイールベースが短いこともあって、小回りは得意中の得意だ。

    タイヤはころがり抵抗を減らした専用タイプを使用する。空気圧も前:200Pa、後:250Paと、かなり高めだ。かといって乗り心地は悪くないし、ブレーキに不安を感じるようなこともなかった。もう少しメリハリの効いたタッチのディスクブレーキがほしいとも思うが、現状でも制動力が不足するようなことはなかった。

    取り回して思ったのは、コンパクトさは偉大だということ。バイクというものに対する心理的プレッシャーがほとんどないし、小さなエレベーターにそのまま乗せられたのには驚いた。事務所のエレベーターは450kg、6人乗りで、内寸を計ったら103×123cmしかなかった。マンション住まいでも、玄関や室内まで簡単にもってこられるはずだ。一家に一台のスクーターはかくあるべしと思った次第。

    パワーと走行距離という課題

    そんなわけでひととおりPassolに乗ったのだが、完成度の高い原付スクーターに比べると、まだ発展途上のようにも感じた。たとえばもっとパワーが欲しい。混合交通で安全に走るためには、スムーズに流れに乗ることが必要だから。特に「標準モード」は、法定速度である30km/hでピタリと加速が止まる。法的には正しいのだが、交通の流れを妨げることになりそうだ。もっとも原動機付自転車という法規そのものが危険だと思うのだが……。

    そして走行距離。フル充電で25~30kmの走行が可能だという。通勤など、割り切って使えば問題ないが、「ちょっと寄り道したい」「足を伸ばしたい」といった融通がまったく利かないのがツライ。もともとバイクというのはそういった自由とセットになっているもの。バイクに乗っている人なら「どこかへ行きたいな~」という衝動が何度もあるはずだ。Passol-Lももっと走行距離を延ばしてほしいと思う。

    バッテリーを取り出すところ。24Ahの容量があり、重さは約6kgもある。さすがに重い

    Passol-Lのバッテリー(右)とPASの3.7Ahバッテリーを並べてみた。その大きさの違いがわかる

    といってもバッテリーの急激な大容量化は難しそうだ。やはり燃料電池のバイクに期待したい。すでにヤマハは2005年の東京モーターショーで、メタノール水溶液を使用する燃料電池バイク「FC-me」を出品した。燃料電池に必要な各ユニットを装備し、69kgという軽さにまとめている。さらにこの「FC-me」は静岡県に貸し出して、すでに公道を走っているというのがすごい。燃料の入手など、解決しなければ問題は多いが、早く登場してほしいものだ。

    コミュニケートできる新しい乗り物

    それでも、この電動バイクは多くの可能性をもっている。ガソリンタンクも、マフラーもない。第一エンジンがない(モーターはあるが、ホイール一体なのでエンジンらしさはない)。熱エネルギーではないので放熱機構もいらない。あっけないほどシンプルなのだ。さらにオイルも使わないので、動力回りは完全なメンテナンスフリー。ある意味、Passol-Lは夢のバイクなのである。

    ヘルメットホルダーはワイヤーを使う方式。シートを閉めれば取り外せない

    Passol-Lは事務所の6人乗りエレベーターにも、そのまま収まってしまった。マンション住まいでもこれなら安心

    こういった電動バイクが増えてくれば、それ用のチューニングバーツなども登場するかもしれない。「高出力・省エネが可能な手巻きコイル」とか……。そうなったらまた楽しいではないか。

    今回は都内をうろうろと試乗したのだが、その間に何人もの人に声をかけられた。多くは「静かなバイクだね」といったもので、年配の方も興味深そうに眺めていた。コンパクトなので心理的な抵抗もないのだろう。世の中、「うるさいから」「危ないから」と、バイクを嫌う人も少なくないが、Passol-Lはまったく逆だった。それだけでも人を含めた環境にやさしいバイクではないだろうか、と考えた次第。

    西尾淳(WINDY Co.)

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