【レビュー】

電動サイクル・電動バイクは本当に"エコ"なのか?

2 エコノミー度をチェックする!

    西尾淳  [2006/06/29]

    電動サイクルの走行コストは?

    まず、バスなどの公共機関と電動サイクルの電動サイクルの経済性を比較しようと思ったのだが、難しいのが1回の走行距離。つまりは何kmぐらいまでなら自転車を使うかということ。思いついたのは、晴れたら自転車、雨ならバスや電車を使う、という距離ではないだろうか? 1~2km程度なら雨が降ったら歩くだろうし、5~6km離れていたら晴れてもバスを使うはず。そうなると目安として3~4km、往復で6~8kmというところか。寄り道して買い物したりすることや、計算のしさすさ考えて、今回は1回(1日)10km程度の走行を目安にしてみた。

    JRや私鉄などの鉄道は、営業距離によって基本的な料金が決まっている。3kmまでは120~130円、1kmあたりに直すと40円強という計算になる。また、東京の都バスは200円均一(一部210円)だが、これも5km乗ると40円/kmになる。少々強引だが、1km=40円前後というのがある種の目安かもしれない。

    さて、電動サイクル「PAS」の3.7Ahバッテリーをフル充電するのに必要な電気代は10円程度。実際には完全にカラになってから充電することはあまりなく、つぎ足し充電になるはずだから、もう少し安くなるかもしれない。フル充電で20km走るとして、1kmあたり0.5円でしかない。ほとんど無視してかまわないほどの費用だ。

    しかし本当はそれだけで済まない。走っていればタイヤは減るし、ブレーキシューも交換しなければならない。なにより、電動サイクル本体を買う必要がある。また、バッテリーは消耗品だということを忘れずに。充電をくり返すと見かけ上の充電量が減って、極端に走行可能距離が短くなる。交換の目安は500回程度の充電、期間にして約2年とのこと。1台の電動サイクルを買って6年使うとすれば、2回はバッテリーを買わなければならない。表にまとめたが、この計算では1kmあたり11.4円の走行コストということになった。

    表:各種交通手段の1kmあたりコスト
    ※各値段はすべて目安です。使用状況などで大きく変わります。

    電動サイクル(PAS) ※6年1.5万kmを想定
    項目 金額 1kmあたり
    電気代 10円 0.50円/km(1充電で20km走行)
    車両 99800円 6.65円/km(6年で1.5万kmを想定)
    バッテリー 27090円×2 3.61円/km(2回交換を想定)
    タイヤ 8000円×1 0.53円/km(1回交換を想定)
    ブレーキ 1000円×2 0.13円/km(2回交換を想定)
    合計 11.43円/km
    JR東日本 都心部
    営業km 運賃 1kmあたり
    ~ 3km 130円 43.3円/km
    4~ 6km 150円 25.0円/km
    7~10km 160円 16.0円/km
    私鉄 (小田急電鉄)
    営業km 運賃 1kmあたり
    ~ 3km 120円 40.0円/km
    4~ 6km 150円 25.0円/km
    7~ 9km 180円 20.0円/km
    都営バス
    営業km 運賃 1kmあたり
    23区内均一 200円 40.0円/km(5km乗った場合)
    タクシー (東京都特別武三地区)
    営業km 運賃 1kmあたり
    2kmまで 660円 307.2円/km(5km乗った場合)
    274mごと 80円追加 317.3円/km(3km乗った場合)
    電動バイク(Passol-L) ※6年3万kmを想定
    項目 金額 1kmあたり
    電気代 16円 0.80円/km(1充電で20km走行)
    車両 209790円 6.99円/km(6年で3万kmを想定)
    補助金 -50000円 -1.67円/km(補助金を利用)
    バッテリー 57540円×2 3.84円/km(2回交換を想定)
    タイヤ 15000円 0.50円/km(1回交換を想定)
    ブレーキ 3000円×2 0.20円/km(2回交換を想定)
    自賠責 12650円×2 0.84円/km(3年保険×2回)
    合計 11.51円/km
    原付スクーター ※6年3万kmを想定
    項目 金額 1kmあたり
    ガソリン 120円/L 3.00円/km(40km/Lを想定)
    オイル 1000円×6 0.20円/km(半年に1回交換)
    車両 200000円 6.67円/km(一般的なスクーター)
    タイヤ 15000円 0.50円/km(1回交換)
    ブレーキ 3000円×2 0.20円/km(2回交換)
    自賠責 12650円×2 0.84円/km(3年保険×2回)
    合計 11.41円/km
    自家用車(軽自動車) ※6年4.5万kmを想定
    項目 金額 1kmあたり
    ガソリン 120円/L 12.00円/km(10km/Lを想定)
    オイル 4000円×6 0.53円/km(半年に1回交換)
    車両 600000円 13.33円/km(中古の軽自動車)
    タイヤ 30000円×1 0.67円/km(1回交換)
    ブレーキ 20000円×2 0.67円/km(2回交換)
    車検 60000円×2 2.67円/km(2回、保険等含む)
    合計 29.87円/km

    心理的障害がなくなることでコストが下がる

    11.4円/kmは高いのか、安いのか? もちろん安い。40円/kmの電車やバスよりもはるかに安い。電車は乗車距離が長ければ割安になるが、もともと何十kmもの距離を自転車で通おうとは思わないだろう。均一料金のバスは乗車距離が短ければコスト高になる。200円で2kmなら100円/kmだ。タクシーにいたっては初乗り(2kmまで)660円、5kmも乗ると1,500円以上になるから、300円/km強。比べ物にならない。

    「モーターのない普通の自転車ならもっと安い」と考えるかもしれない。もちろんそのとおり。電気代はかからないし、せいぜいおなかが空いて、ご飯のおかわりが一杯増える程度だろう。しかし、上り下りのある道だったらどうだろうか? 「坂を登るのが大変だからバスで行こう」と思わないだろうか? 電動サイクルの素晴らしいところは、そういった場所でも心理的なプレッシャーがずいぶん減ることにある(もちろん肉体的にもラクになる)。電車のひと駅かふた駅分、バスなら停留所数個分、そのくらいは自転車で行こうという気になる。結果的に移動のためのコストが下げられるわけだ。もちろん目的地の直近、たとえばスーパーの店先まで乗りつけられるという自転車本来のメリットはそのまま生きている。

    電動バイクのコストは原付とほぼ同じ

    今度は電動バイクのコストを見てみよう。Passol-Lのバッテリーをフル充電すると約16円の電気代がかかる。走行可能距離は25~30kmが目安とのことだが、これも余裕をみて20kmとすれば0.8円/km。これも安い。4ストロークの原付スクーターなら40km/lぐらい走るが、ガソリンが高い。リッター120円としても3円/kmだ。

    しかし車両価格まで含めて考えるとずいぶん話は違ってくる。Passol-Lの本体価格は209,790円。普通の原付スクーターも同じような価格なのだが、Passol-Lはやはり2年程度でバッテリーを交換しなければならない(500回程度の充電)。6年使うとなると、2回バッテリーを買うことになる。Passol-Lのバッテリーは57,540円。2回で10万円以上の出費になってしまうのだ。

    ちなみにPassol-Lには電気自動車等導入費補助事業による補助金制度が利用できる。これで最大5万円の補助金が受けられるのでぜひ利用したい。ちなみに最終受け付けは来年(2007年)2月末までとなっている。

    この補助金を利用しても、トータルでのコストは通常の原付スクーターとあまり変わらない。Passol-Lが11.5円/km、原付スクーターが11.4円/kmという計算になった。また、この計算に入っていない出費も必要になる。バイクなのだからヘルメットやグラブなども必要だし、自賠責保険だけでなく、任意保険も加入しておくべきだ。しかしすでにバイクをもっているならヘルメットなどは流用できるし、クルマをもっているならファミリーバイク特約などが利用できるので、ここの計算には入れていない。

    では、Passol-Lにはメリットがないのだろうか? いや、そんなことはない。

    排気ガス=ゼロ、騒音=ほとんどしない

    なによりスゴイのは、このバイクがまったく排気ガスを出さないということ。ハイブリッド車も結局はガソリンで動くのだから、CO2やNOxといったガスを放出する。「少ない」というだけのことで、環境に対してダメージを与えているのは同じなのだ。対してPassol-Lは、これがゼロなのである。

    もちろん電気も元をたどれは石油や原子力だし、車両を作るにあたっていろいろな廃棄物も出している。そういった製品の製造から破棄にいたるまでのライフサイクル全体における環境インパクトの評価を「ライフ サイクル アセスメント(LCA)」というのだが、Passol-Lは従来の原付スクーターに比べ、CO2:57%削減、NOx:約88%削減、SOx:約79%削減という高い環境性能を得ている(ヤマハ資料)。

    もうひとつ重要なのは、ほとんど騒音らしい音を出さないということ。モーター音やタイヤの走行音は聞こえるが、エンジン付きのバイクに比べれば無音としていいほどの静かさだ。深夜や早朝の市街地でも気兼ねすることなく走行できる。Passol-Lのカタログに書かれた「もっとも進化した乗り物のひとつ」というフレーズは、決してウソではないと思う。

    ただ、現状で問題がないわけではない。バッテリー容量が限られるために走行距離が短いこと、さらに充電に時間がかかることがネックとなる(フル充電まで約6時間)。しかし近距離の通勤や買い物など、近距離コミューターとして割り切って使えるなら、現状でも十分な実用性をもっている。なにより「電気だけで走る」というのがいいではないか。

    ※記事内のコストなどの数値は、あくまで机上で計算したものです。実際にこの通りになるとは限りません。目安として見てください。

    「PAS リチウム」。PASシリーズの中心的モデル。価格は94,800円。低いフレームで女性でも乗り降りがラク。ホイールサイズは24型と26型から選べる。また、大型7.5Ahのバッテリーを装備する「PASリチウムL」(117,800円)もある

    「PAS CITY-Sリチウム」。いわゆる軽快車と呼ばれる比較的スポーティーなモデル。価格は95,800円。27型ホイールを採用。また、大型7.5Ahのバッテリーを装備する「PAS CITY-SリチウムL」(117,800円)もある

    「PAS CITY-Cリチウム」。新しく追加された20型のコンパクトモデル。価格は98,000円。モノトーン(ブラック)に統一されたカラーが特徴。20型ホイールということもあり、シリーズ中もっとも軽い20.3kgに収まっている

    「PAS ワゴン リチウム」。大量に荷物を積んでも安定性が崩れない三輪タイプのPAS。価格は188,000円。バッテリーは大型の7.5Ahタイプを標準で装備する。ホイールサイズが小さく、サドルが低いのも便利

    「Passol-L」。スクータータイプの電動バイク。価格は209,790円。カラーはブラックのみだが、カラーチェンジキットがオプションで用意される。レッグシールドやバスケットなども追加できる

    「EC-02」。超コンパクトな電動バイク。価格はPassol-Lと同じ209,790円。バッテリーやパワーユニットはPassol-Lと共通。というか、こちらが先に登場した。カラーはシルバーとブラックがある

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