【レポート】

スタジオジブリに見るデジタルとクリエイティブの付き合い方

3 さらなる表現を追及できる「道具然」としたシステムの構築を(北川内氏)

    外村奈津子  [2006/06/28]

    膨大なデータ、消え行くCRT、他人の仕事領域に安易に踏み込む危険性

    発表後半では問題点、今後の課題などに話題を移した。まず、あげられたのが32bitアーキテクチャの限界ということだ。「搭載メモリが最大4GB、プログラムの1プロセスに割り当てられるのが2GBまでという限界」を痛切に感じるという。エフェクトによっては、1画面を分割してレンダリングする場合もある。なるべく早く、64bitアーキテクチャへの移行と、ネイティブで対応するアプリケーションが出揃うことを待望しているという。というのも「個人的にいろいろ模索をしているが、64bit OSの上で、64bit対応のアプリケーションが問題を起こすことはほとんどないが、32bitアプリケーションを使うと、トラブルが起こることが多い」(北川内氏)からだ。海外の大規模映像プロダクションは、メインアプリケーションを自社開発していることが多く、当然64bit化もスムーズになされているという。

    もうひとつはブラウン管モニタが終焉しつつあることだという。同社では制作系のモニタはすべてブラウン管モニタを使用している。またカラーマネジメントも厳密に行っているため、キャリブレーション可能なCRTモニタは必須。厳密な「動き」のチェックには、液晶モニタはブラウン管モニタに到底かなわない。このような現状を打開する技術の登場を希望している。

    3点目は、クオリティを突き詰め過ぎることの危険性が指摘された。同社では、完成画像が16bit、2,144×1,160ピクセルとHD以上のクオリティがある。そうなると完成画像だけで2.4TBのストレージが必要になる。さらにそれに加え、中間素材ファイルは常に1,000万個存在する。また、「メンタリティに関することかもしれないが」と北川内氏が前置きしつつ述べたのが、他人の領分を容易に犯してしまうことができるということだった。たとえば、青空の背景を美術部に描いてもらい、監督が「やっぱりこの部分は、やっぱり夕方にしよう」といわれたときに、簡単に夕焼けにすることができてしまう。「全体として、作業効率がよくなるように思えるが、その絵はあくまでも青空として描かれたわけなので、夕焼けでは違和感出てしまう」という。逆にクリエイターが「デジタルだったなんでもできるから、できる人にまかせればいいと考えてしまう。それぞれがそれぞれの仕事に責任を持つことが大事だと北川内氏は述べた。

    今後はさらなる表現を追及できる「道具然」としたシステムの構築を目指したいと述べつつ、Pixar Animation Studiosのクリエイティブ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントJohn Lasseter氏の言葉を引用して発表を終えた。

    The Art challenges the Technology, and the Technology inspires the Art.
    (アートはテクノロジーに挑戦し、テクノロジーはアートにひらめきを与える)

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