【レポート】

高学歴ホワイトカラーがハマる「殺人ゲーム」 - 中国

1 自己表現に格好のプラットフォームを提供する殺人ゲーム

    西山楓  [2006/06/26]

    日本の読者が聞いたらドキリとしそうな「殺人ゲーム」という言葉は、ここ数年、中国国内で流行ってきた心理ゲームや、映画『暗い夜になったら目を閉じて(天黒請閉眼)』などの追い風もあり、既に新しい言葉ではなくなっている。昨年からは、それらに代わり、もっぱら殺人ゲームを運営する実戦の地――「殺人カフェ」がホワイトカラーたちのお気に入りの場所となっている。

    ある統計によると、全国でいま、100万を超えるユーザーがこのゲームにハマっているのだという。北京、天津、上海、広州などでは、殺人ゲーム専門のクラブまででき、大規模なところでは会員数千名を擁するという。殺人カフェの登場は、殺人ゲームの愛好家たちにとってはそれこそ願ったりかなったりのこと。ようやく念願の「溜まり場」を見つけたといったところだろう。

    筆者はこのほど、北京市内のとある殺人ゲームクラブを訪れた際、その人気沸騰ぶりを実感した。開店して僅か半年足らずだというのに、常連の「殺し屋」が既に6,000人超。海淀区魏公村にあるこのクラブの営業時間は朝6時から夜8時までだが、筆者がこのクラブに着いたのは夜7時ごろだった。入り口を入った右側にレジがあり、正面中心部はロビーになっている。ロビーの両サイドにはそれぞれ個室とジュースの自動販売機が並ぶ。個室はすべて満員のようで、会員5名ほどがロビーのソファーで待っていた。ロビーに設置された液晶モニターには、個室内でゲームに興じる人の人数や、どの個室が空いたかなどの情報が表示されていた。

    殺人ゲームの呼び名は、英語で「mafia」、いわゆるマフィアのことだ(Illusion Softworksが開発した同名のゲームとは異なる)。初期段階のゲームでは主役がマフィアと村人だったが、次第に、これが殺し屋と庶民になってきたという。殺人ゲームの起源については、さまざまな説がある。一説によるとそれはMBAの訓練プログラムから来たもので、団体精神を涵養するための心理ゲームだったという。この説は、現在比較的幅広く支持されているものだ。もう一説によると、発祥の地はシリコンバレーで、IT技術者が発明した一種のストレス解消法だったという。この説、殺人ゲームが中国に伝わってきた当初は、比較的説得力があったようだ。さらに、もう一つの説は、登山愛好家たちがキャンプサイトで頂上を目指せる好天気を待つ間、退屈しのぎに発明したものだというものだ。

    いかにもそれらしい話が出来上がっているわけだが、殺人ゲームは誕生してから今日に至るまで、一歩一歩、熟成の道を歩んできた。この過程において、100を超える様々なゲームルールが発明されたといわれる。

    若い人、とりわけ都市部のホワイトカラー、高学歴の人びとが殺人ゲームを愛好し、それに熱中するのは、このゲームが彼らの自己表現に格好のプラットフォームを提供してくれるからだ。これらの人たちは、日頃の仕事や研究で日常的に多大なプレッシャーを抱えている。しかし、家庭や職場それぞれで確固たる社会的役割を与えられているため、溜まりに溜まったストレスを発散する機会を持てないでいる。しかし、ゲームの中では、斬新な役回りが彼らを根底から解放してくれる。自由気ままに「殺したり殺されたり」できる仮想空間で、現代中国の若いホワイトカラーは、IT時代特有の発散、あるいは一種のリラクゼーションを楽しんでいるのかもしれない。

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