【レポート】

Berkeley DB - Sleepycat元CEO Michael Olson氏、Oracleを語る

    後藤大地  [2006/06/15]

    日本オラクルにおいて15日、Sleepycat Softwareの元CEO Michael Olson氏を囲んだラウンドテーブルが開催された。Sleepycat Softwareは本年2月にOracleに買収されたばかり。Oracleによる買収の真のねらいはなにか、Michael Olson氏から真実を探る。

    Oracle、Berkeley DBポートフォリオを獲得

    Sleepycat Softwareは組み込み向けのオープンソースデータベースBerkeley DBの開発で有名なソフトウェアベンダ。Berkeley DBは組み込み機器やさまざまなFLOSSで採用されており、推定2億を越える機器やアプリケーションに配置されているとみられている。

    組み込みデータベース市場は今後拡大を続け、2009年までには32億ドル市場まで膨れあがる見通し。Oracleは2月14日(米国時間)、Sleepycat Softwareを買収したことを発表。これによって自社の組み込みデータベースポートフォリオOracle Lite、Oracle TimesTenにさらにBerkeley DBを追加。ポートフォリオを拡充し、市場の拡大に対応した。

    Oracle TimesTenはもともと買収によって獲得されたポートフォリオ。Oracle Liteも買収によって獲得されたプロダクト。Oracleは買収によって同社に不足している組み込みデータベースというポートフォリオを積極的に獲得してきた。

    Sleepycat Softwareの買収に関して詳細なやりとりは公開してもらえなかったが、Sleepycat Software側から買収先を調査したとき、世界的にデータベース市場で圧倒的な存在をもっていたOracleは最適な買収先だったということだ。

    Michael Olson、というその人

    Sleepycat Softwareの元CEOであるMichael Olson氏、カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータサイエンスの学士号および修士号を取得。Britton Lee、Illustra、Informixなどを経てSleepycat Sofotwareのセールスマーケティング担当バイスプレジデント、そして社長兼CEOに就任。そして現在の肩書きはオラクルコーポレーション、オラクルサーバ技術開発担当バイスプレジデントだ。

    図1 オラクルコーポレーション、オラクルサーバ技術開発担当バイスプレジデント Michael Olson氏

    Michael Olson氏はBerkeley DBの開発者のひとりとしてSleepycat SoftwareにおいてCEOを勤め、Sleepycat Softwareが買収された1カ月後の2006年3月にOracleに入社。同氏は技術開発、マーケティング、販売・経営管理などにおいて20年以上の経験を持つ同分野における第一人者だ。Oracleにおける今後のBerkeley DBの展開に、同氏の手腕が活かされる。

    ちなみに同氏は今回が初来日となる。今晩は寿司に連れていってもらえると聞いて楽しみにしていると述べたが、もちろんこれはリップサービスだ。来日した理由は寿司ではない。日本は組み込みデータベース市場として重要な位置にある。組み込み電子機器開発のリーダシップ的位置にあり、携帯電話機器の開発や普及においてトップクラスにある。

    今後は組み込み機器に対しても包括的なプラットフォームを提供していく必要があるというのがOracleの見解だが、その土壌が整っており、今後もっとも早い時期でそれを実現する地域は日本になるだろうという。今後の戦略展開を見極めるうえで、同氏の来日は必然といえるだろう。

    Oracleの組み込みデータベースポートフォリオ

    現在Oracleが整備している組み込み向けのデータベースプロダクトは次のものがある。

    • Oracle Lite - スケーラブルなSQL対応DB
    • Oracle Berkeley DB - SQLを使わない軽量組み込みDB
    • Oracle TimesTen - オンメモリのハイパフォーマンスなSQL対応DB

    図2 組み込みデータベースにおけるそれぞれの位置

    デバイス層における組み込みにはOracle LiteとBerkeley DB、アプリケーション層に対してはOracle LiteとBerkeley DB、TimesTenが対応する。そしてバックエンドのハイパフォーマンスデータベースとしてOracle DBが来るという形だ。

    Berkeley DB自身は次の3つのプロダクトが用意されている。

    • Berkeley DB
    • Berkeley DB Java Edition
    • Berkeley DB XML

    図3 Berkeley DBプロダクトライン

    Berkeley DBはC言語で開発されているがJavaやPerlなど多くのプログラミング言語から利用できる。Java EditionはJavaで開発されており、Java環境に最適化されている。そしてBerkeley DBに対してXQueryベースでのXML文書へのアクセスを実現したプロダクトがBerkeley DB XMLだ。

    最近ではJavaでプロダクトを構築することが増えており、そうした顧客の要望に対応するためにJava Editionを開発したという。Java EditionはすべてJavaで開発されており、そのままJavaプロダクトに組み込んで扱うことができる。

    Berkeley DB - FLOSSビジネス戦略

    Michael Olson氏はBerkeley DBのビジネスモデルとしてデュアルライセンスモデルを採用していると説明。同氏がBerkeley DBをビジネスとして展開したのは96年まで遡るが、正直なところ当時ははたしてOSSがビジネスになるか不安があったという。そして同氏がたどり着いたビジネスモデルがデュアルライセンスモデル。そして同会社は同ビジネスモデルのパイオニア的存在になった。

    デュアルライセンスによるビジネスモデルは、提供するプロダクトに区別は設けず、かわりに用途に応じてライセンスを使い分けるというものだ。多くの場合、OSSライセンスはソースコード開示条件が含まれているものを採用し、ソースコードを隠蔽したい場合は商用ライセンスを購入していただくという仕組みになっている。

    同氏はこのビジネスモデルは顧客にも開発側にも、そしてOracleにも利益があると強調した。

    OracleはBerkeley BDをどうやって展開していくのか

    Berkeley DBはOracleとしてもかなりユニークな製品となる。OracleはFLOSSへのコミットも厚いが、プロダクト自身がFLOSSというBerkeley DBはかなり特異な存在だ。Sleepycat Softwareを買収してBerkeley DBプロダクトラインを獲得したOracleだが、これから具体的にどのように展開していくのか、もっとも気になるところだ。

    「買収されてから、Oracleの顧客とBerkeley DBの顧客に重複することが多かったことに驚いた」Michael Olson氏は述べる。実は対立するものではなく、両方のプロダクトを採用する顧客が多かったという。キャッシュ部分にBerkeley DBを、基幹データベースにOracle DBを採用するという形だ。Berkeley DBとOracle DBと同時に展開していくことは、実は優れたソリューションだったといえる。

    「日本における今後のBerkeley DBなど、データベースに関するトータルな戦略については7月にはいってからお伝えすることになるとおもう。今お伝えできることは、セキュリティ、グリッド、ビジネスインテリジェント、コンテンツ管理、組み込みなどに注力したデータベース展開の取り組みをすでに6月1日からはじめており、組み込み機器に注力していくということだ」日本オラクル、執行役員、システム事業推進本部長、三澤智光氏は説明する。

    Berkeley DBはすでに多くの機器に組み込まれている。日本においても多くの機器に取り込まれている。すでにOracle Berkeley DBプロダクトも組み込みがおこなわれているが、現在においては発表できないとした。今後発表する機会はあるだろうという。

    現段階ではOracleがBerkeley BDをどのように展開していくのか、明確なメッセージは発信されていない。現状でいえることは、組み込みデータベース市場として日本が重要な市場だと認識されていること、Berkeley BDは組み込みデータベースとして日本においても積極的に展開されていくこと、その際のビジネスモデルにはデュアルライセンスモデルが採用されるだろう、ということだ。

    デュアルライセンスモデル、FLOSSビジネスモデルの今後

    FLOSSを取り巻くビジネスモデルは、付加価値販売モデル、デュアルライセンスモデルを経て、サブスクリプションモデルが主流になりつつある。付加価値販売モデル、デュアルライセンスモデルも依然として存在するが、どちらもビジネスとして成立させていくには舵取りが難しいというのが現実だ。

    しかし、Berkeley DBのようなプロダクトの場合、デュアルライセンスモデルというのは「座り」がいい。組み込み分野に対してはサブスクリプションモデルよりもデュアルライセンスモデルの方が、あるいは適しているのかもしれない。

    Michael Olson氏はデュアルライセンスモデルが必要十分なモデルになっており、顧客、開発者、Oracleのどれに対しても優れた仕組みである点を強調。ただし、これで決りということではなく、状況に応じて対応していくことが基本だと説明した。

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