【インタビュー】

世界一有名な無名デザイナー? Googleロゴを描いている"あの人"のデザイン観

2 変えてはいけないとされる企業ロゴ、でもユーザーは楽しんでくれている

    木村早苗  [2006/06/12]

    ロゴはすべて手描きだ。角度によって筆先の表現がしやすいのでタブレットを使うが、最近はタブレットPCが中心。紙や鉛筆やインクの質感などを出すため、PhotoshopやPainterも使用する。もっとも気を遣う部分は、やはり配色。「Googleのトップページはとてもシンプルで白い。ロゴの色合いで全体の印象が劇的に変わってしまいます。ですから、ロゴが変わってもGoogleだとわかるよう気をつけています」

    苦労したという日本の七五三のロゴ。上は2002年11月15日、下は2003年11月15日に掲載されたもの。

    ひとつのロゴにかける時間はさまざま。「最短はオーストラリアの『Melbourne Cup』(競馬の祭典)の5分かな。依頼があってから5分で作ってアップしました。オーストラリアのユーザーにはとても評判がよくて嬉しかったですね。逆に最長は日本の『七五三』。千歳飴の袋などにも形式がありますし、間違ったことは描けないので、時間がかかりました」

    各国版のロゴは、間違ったことが描けないので、時間がかかるとのこと。一方、ローカルスタッフからは「教えるのも一苦労」とのナイショコメントが。

    ロゴを描くようになって、他の国での出来事をより意識するようになったというHwang氏。日本の七五三など各国版のロゴを描く際には、Googleのローカルオフィスのスタッフに、その記念日や、描かれるモチーフについて念入りに尋ねるのだそうだ。

    ロゴにする題材の決め方は主に3つ。3カ月に1回のロゴ制作チームのミーティング、ローカルのオフィスからの依頼、そして、ユーザーから寄せられた情報・リクエスト。最近は特にユーザーの要望に応えることが多いという。その選定基準は「できるだけ多くの国で表示できるような」もの。「(アメリカに単一のドメインを持っていた).comの時代にはなかった苦労もあります。たとえば、繊細な問題が絡む『独立記念日』のようなものです。ある国には独立記念日でも、(その日が)敗戦日になる国もあるわけですからね。そういった部分には注意しています」

    ロゴの向こうに、さまざまなバックグランドを持ったユーザーがいるということを、Hwang氏は常に意識しているようだ。

    柔和な笑顔が印象的。自社ロゴで、ユーザーを楽しませる。それが彼の楽しみ。

    Web上のロゴは、企業がユーザーに示すことのできるサインとしては、もっともふさわしいものかもしれない。つまりCI。しかし、Hwang氏の担うCIは、従来のCIのセオリーとは正反対のものだ。通常のCIはといえば……「企業のロゴは変えてはいけないとマーケティングの本には書いてあるし、普通、ロゴには厳密な規則がありますよね?」。Hwang氏もそんな風に言っている。

    そして、こう続ける。「Googleは(自社の)ロゴに手を加えた最初の企業ですが、ユーザーは楽しんでくれています。ユーザーの感じがちなコンピュータの冷たさを、ロゴ(を変化させること)で和らげたり、企業のパーソナリティを伝えられたらと。そうやって楽しみたいんです。こういう企業がひとつくらいあってもいいんじゃないでしょうか」

    ユーザーと企業の真ん中に立って、コミュニケーションの担い手となる。それが今のHwang氏の"デザイン"なのだ。


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