【レポート】
宇宙空間でロボット同士を戦わせる……そんなガンダムのような「ROBO-ONE宇宙大会」構想が正式に発表されてから2カ月半。3日に川崎市で開催された「第8回 ROBO-ONE Technical Conference」では、その宇宙大会について、少しずつではあるが具体的なイメージが見えてきた。
3月19日、第9回ROBO-ONE大会の会場で発表された「ROBO-ONE宇宙大会」構想は、2足歩行ロボットの格闘技「ROBO-ONE」のまさしく"宇宙版"というものだ。2010年の開催を目指しており、4月1日に発表されていれば間違いなくジョークと思われそうだが、ROBO-ONE委員会の西村輝一代表は、超小型人工衛星「キューブサット」で実績のある東京大学・中須賀真一教授をすでにプロジェクトに巻き込むなど、かなり「本気」だ。
当初から"宇宙大会"の考えはあったという西村代表だが、具体的に動き出したのは1年くらい前から。すでにキューブサット「XI-IV(サイ・フォー)」の開発・運用に成功していた中須賀教授の研究室を訪れ、構想を話したところ、「できる」との答えが返ってきたのだそうだ。今後、技術面での検討を行う「宇宙大会技術評価委員会」を設置する予定だが、委員長には中須賀教授が就任することが内定している。
まだ検討中の部分も多く、競技規則も決定したわけではないが、今のところはこうだ。
まず母船となる"ROBO-ONE衛星"を用意し、これが地上との通信や電力の供給などを行う。一方、ロボットは10cm立方に格納され、宇宙空間に放出されてから2足歩行ロボットに変形する。衛星とロボットは命綱で繋がれ、バトルではじき出されてそれが伸びきってしまうとリングアウト扱いとなる。宇宙大会のオフィシャルサイトにはデモムービーが公開されているので、それを見ると手っ取り早くイメージがつかめるだろう。ただし「物理学は"一応"無視している」(西村代表)ので注意だ。
ところで誰もがまず疑問に思うのが、無重力なのに「何で足が要るの?」ということだ。これはまぁ、要らないといえば要らないのだが、ガンダムだって足があるわけで(ジオングはこの際無視)、とりあえず「そういうものだ」と思おう。ちなみに、西村代表は「地上で歩けるロボットでないとダメ」と明言していた。
中須賀教授は、キューブサットについて講演。衛星関連の話題が中心ではあったが、宇宙空間できちんと動くものを作るノウハウは、当然ながら宇宙用のロボットでも役立つ。参加者は熱心に中須賀教授の話に聞き入っていた。
3月の宇宙大会発表の席上、高真空・熱・放射線といった、宇宙空間での特殊な環境について説明したことに触れ、「"難しい"というニュアンスで捉えられたかもしれないが、それは違う」と中須賀教授。相違点を知ることが大事で、地上のものをただ宇宙に持って行ってもダメ、という点をまず認識して欲しいという。その上で、「ROBO-ONEの人たちであれば、そういった点だけ気を付ければできる」とコメント。
ところで一般に、人工衛星というと「最先端」というイメージがあるかもしれないが、じつは意外と保守的な世界だ。信頼性が第一に考えられるため、CPUは数世代前の検証済みのものが使われることが多い。ノートPCなどではもはや標準となったリチウムイオンバッテリも、まだほんの一部の衛星で使われているだけだ。中須賀教授はそういった大型化する衛星の問題点から、逆に超小型衛星に注目したのだそうだ。
キューブサットの特徴の1つとして、民生品を積極的に採用していることがあげられる。信頼性が保証された宇宙用部品は高価で、それが業界の高コスト体質の原因の1つとなっているが、秋葉原で買えるような部品が使えれば安上がりで(実際、学生が秋葉原まで自転車で買いに行くそうだ)、しかも最新性能のものが使える。信頼性については、当然放射線などで壊れる可能性はあるが、何度も繰り返すことで宇宙でも使える部品が分かってくる、という考え方だ。
ちなみに中須賀教授の研究室で開発したキューブサットにはカメラが搭載されているが、これはWEB通販で購入したものだとか。それでも、打ち上げ後3年になる今でも正常に動作している。もちろん、確率の問題と言えばそれまでだが、失敗を恐れずにチャレンジできるのがキューブサットなのだ。
宇宙用のROBO-ONEロボットでも、電子部品は民生品で大丈夫、と見る。ただ放射線によってビット反転が起こったりするのは防ぎようがないので、暴走したときに「リセットをかける仕組み」は必須だという。
そして最大の課題は、ロボットをどう移動させ、どう姿勢を制御するか、だろう。地面がないので、当然ながら、これまでとは全く異なる方法が必要となる。移動に関しては、衛星ではスラスタが一般に使われるが、圧縮空気を使えばそれほど難しい話ではないという。また姿勢制御については、小型のリアクションホイールが作れるだろうということだ。リアクションホイールも衛星では一般的。ただ、どちらも小型の衛星では使われないことが多く、こんな小さなロボットに搭載するには、小型で効率が良いものを開発する必要はあるだろう。
講演の最後には、今年1月に観測ロケット「S-310」で打ち上げられた実験機からの動画映像が紹介された。親機から飛び出した子機3機が引っ張ってアンテナを展開するという実験で、親機と子機にはそれぞれカメラを搭載。ロボットではないものの、すれ違いざまを映したシーンなどは臨場感があり、聴衆からは感嘆の声も漏れた。
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