【レポート】

ネットを活性化させるのはバーチャリアラー?--Web2.0考えるJANES-Way

    大川淳  [2006/06/02]

    多様な分野で活躍するインターネット関連企業のビジネスの最新状況を広く紹介する「JANES-Way(Japan Net business Success Way) episode1」(主催: Eビジネス研究所)が開催された。「Web2.0時代に激変する新世代ネットビジネスの真価を探る」をテーマとして掲げ、Web2.0の本質、将来性、その事業展開、それを推進する企業などについて多角的に考察する講演、討議が行われた。早稲田大学IT戦略研究所リサーチメンバーの青木孝次氏は、「ソーシャルネットワーク・サービス(SNS)『mixi』におけるネットワーク行動~『バーチャリアラー』の特性と果たす役割~」との表題で、mixiに集まる人々の動き、思考を分析、SNSというものの性質や方向性を新たな切り口で解明することを試みた。

    早稲田大学IT戦略研究所リサーチメンバーの青木孝次氏

    mixiにはリアルの世界が投影される

    いま、インターネットの世界では、これまで受動的に傾いていた一般ユーザーが、自ら情報を発信し、コンテンツを創り、この領域で主導的な存在として位置づけられる「Web2.0」が重要なキーワードとして脚光を浴びている。これまでのインターネット、いわば「Web1.0」の時代には、「リアルとバーチャルは対立していた。ネットコミュニティ、独特のバーチャルな世界に、特定の人たちが集まってきていた。それが、オタクな人ではなく、普通の人々が参加するようになった。その典型例がSNS」であると、青木氏は指摘する。

    そのSNSの代表的存在といえるmixiは急拡大している。ユーザー数は300万を突破(3月1日)、アクセス数も増加が続く。

    青木氏はSNSには2つの側面があるという。人が集まるネットワーク上の場がSNSだが、「人」に興味をもって集う層、ある「テーマ」に興味をもって集う層、の2つがある。mixiでいえば、マイミクシィを中心にする人たち、コミュニティ志向の人たちとがいる。これらの関与する対象の差異は、コミュニケーションのつながり方でも違ってくるとして、青木氏は「マイミクシィ間のつながりは『小部屋訪問型』、コミュニティでのつながりは『メイン会場集結型』」と説明する。

    このような分類は、リアルな世界でもあてはまる。mixiにはリアルな行動が反映されている。1人のユーザーからみると、マイミクシィ内には、実際に面識のある「友だち」と、実際には会ったことのない「友だち」がおり、「リアルとバーチャルが混在している」(青木氏)。このような状況の下で、実際に知っている人とのつながりに関わる「リアル特性」と、見知らぬ人とのつながりへの積極性である「バーチャル特性」が浮上してくる。mixiのようなSNSの場合、システム上での規制---参加への一定の制約など---が、不審者の特定といった効果を生み、コミュニティとしての穏やかさが保たれる。

    ここで、青木氏は、リアル特性、バーチャル特性が、ネットコミュニティの中でどのような行動につながるのか、その相関関係を調査した。その際、立てた仮説は、リアル特性の高い参加者は、ネットワークでのコミュニケーション活動にも積極的であるとともに、ネット内でも相手を信頼しやすく、影響を受けやすい、というものだ。

    青木氏は、ネットを通じて、mixiの参加者に対しアンケート調査を実施した。その結果、「実際には知らない友だち」への信頼が高い層は、最もネットワーク活動が活発で、情報からの影響を受けやすく、何かを購入するような消費行動でも、情報からの影響を良く受ける、ということが判明した。

    こうした結果を受け、青木氏は「バーチャリアラー」という概念を提唱する。「バーチャリアラー」とは、「リアルな関係に依拠し、リアルな人脈を大切にしながら、バーチャル特性が顕在化した人々」(青木氏)で、「最もネットワーク活動が活発であり、他人にも信頼を置く存在」(同)だという。「バーチャル特性」は、ネットワークを活発化させるが、それだけでは、「Web1.0」の頃のネットワークに留まってしまう。一方、リアルな基盤への信頼は、穏やかさの源泉となるのだが、ネットワークは十分に活性化しない。

    「リアルな基盤とバーチャルな特性をあわせもつことが、SNSを発展させる」と青木氏は話す。「Web1.0」の時期には、リアルとバーチャルは「対峙していた」(同)わけだが、「Web2.0」時代には、リアルとバーチャルが融合する。そのような流れのなかのネットコミュニティでは「リアルとバーチャルとの間を、うまく行きかうことのできるスキルが必要であり、そのバランス感覚のある人たちがバーチャリアラーなのではないか」(同)という。

    リアルでなければできなかったことが、バーチャルで実現するものに置き換わっていく事象が、さまざまな分野で起こっている。しかし、まだまだ、すべてバーチャルで、というわけにはいかないのもまた当然だ。青木氏は「Web1.0から2.0への進化は、連続性をもっており、2.0は、1.0の価値の否定ではなく、1.0を補完するものとして捉えるべき」と語る。インターネットとモバイル機器の急激な進歩により、SNSに限らず、今後ますます、リアルとバーチャルの融合、錯綜は進んでいく。そのような状況のなか、バーチャリアラーという発想は、Web2.0時代を読み解く指標のひとつとなるだろう。

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