【レポート】

BSDCon 2006 Canada/FreeBSD developer summit - 仮想サーバ、AFS、デバイスドライバ、セキュリティフロー、リリーススケジュール、ほか

 

BSDCan 2006の2日目となる13日(東部標準時)も、あいにくの曇り空。5月もなかばといえど、オタワは曇りともなると肌ざむい。BSD Conference 2006 Canada/FreeBSD developer summitの最終日となる本日も、3並行でセッションが開催され、興味深い発表が展開された。セッションのうち面白そうなものをいくつかを取り上げて紹介する。

BSDCan 2006 開催場所 SITE, Univertisy of Ottawa

Network Protocol and Kernel Development in a Virtual Environment

FreeBSDデベロッパであるGeorge V.Neville-Neil氏からはバーチャル環境におけるカーネルやネットワークプロトコルの開発に関する発表がおこなわれた。

FreeBSDデベロッパ、George V.Neville-Neil氏

George V.Neville-Neil氏はFreeBSDの設計と実装についてまとめた書籍 "The Design and Implementation of the FreeBSD Operating System" の共著者として有名。日本に滞在していることから、日本人ではないFrom Japan's committerとしても有名であり、流暢な日本語を使いこなすことから日本における繋がりも広い。日本と世界のデベロッパを結びつける重要な人材である。両言語を使いこなし、両文化に精通し、両国に顔がひろいデベロッパはGeorge V.Neville-Neil氏のほかにあまりいない。

仮想サーバへの要求

仮想サーバ使用 その1

仮想サーバ使用 その2

サーバ環境は実際の機器にOSをインストールするといったスタイルのほかに、ひとつの機器に複数のバーチャル環境を用意し、そのうえでいくつものOSをインストールして運用するというスタイルがもうひとつの主流となりつつある。これはハードウェアパワーが向上していることと、物理的・電力的な問題などからたくさんのPCを保持することができないという状況からの帰結である。

George V.Neville-Neil氏は仮想化技術や、仮想化された環境の特徴、そういった環境における注意点をまとめてから、実際に運用している仮想マシンについて紹介をおこなった。PCベースの仮想マシンと、MacBook Proベースの仮想マシンである。

VMware Server実行例

FreeBSD on VMware Server 実行例

FreeBSD on VMware Server ホストOSとサーバOSのリソース割り当て

次に実際に仮想マシンとして動作しているサーバに接続して、仮想マシン上のOSを起動して動作を示すデモンストレーションが実施された。ホストOSはRed Hat Enterprise Linuxで、そこでVMware Serverが動作している。そこでFreeBSDサーバを起動し、ホストOSやゲストOSの動作状況について説明がおこなわれた。

Mac OS XやRHELにおいて仮想環境を用意し、そこで複数のFreeBSDサーバを運用するというスタイルは今後さらに増え続けるだろう。

Using the Andrew File System with *BSD

研究者であるHugo Meiland氏からは、FreeBSD/OpenBSD/NetBSDにおけるAndrew File Systemに関する発表がおこなわれた。Andrew File System(AFS)はネットワークベースの分散ファイルシステムで、1984年にカーネギーメロン大学で開発されたもの。かなり歴史の古いファイルシステムである。2000年にはIBMがAFSのソースコードを公開しており、同年、OpenAFSが設立されている。

Hugo Meiland氏

AFSは*BSDのみならず、Mac OS XやSolaris、Linux、Windowsにおいても動作する。Kerberosをベースとしたセキュリティや認証機能も用意されている。ACLを使ったアクセス制御も可能だ。

インターネットを経由したファイル共有にはFTP、WebDAVなどがあり、セキュリティの確保にはたとえばVPNなどの仕組みをつかうことができる。AFSの代替となるファイルシステムとしてはNFSv4、Coda、WebDAV、Microsoft DFSなどがある。

*BSDやLinux向けに開発されたOpenAFSクライアントにはほかにArlaがあり、これはThe BSD Licenseのもとで提供されている。インフラストラクチャ寄りの技術実装の場合、ライセンスがThe BSD Licenseかそうでないかは*BSDのデベロッパにおける共通の関心ごとだ。The BSD Licenseであればベースシステムに取り込むことができるからだ。

ArlaはFreeBSD 5系では動作するが、VFSに変更が加わったため今のところFreeBSD 6.0では動作しない。これは将来的にArla側で対応する事項にあげられる。将来的には、次の作業が進められると考えられている。

  • OpenBSD: サーバサイドOpenAFS実装をportsに追加
  • FreeBSD: サーバサイドOpenAFS実装をportsに追加
  • FreeBSD: Alraをベースシステムにマージ

AFSはほかのネットワーク共有ファイルシステムとくらべて概念や動作の仕組みを理解するまでが難しい。現状ではそれほど普及しているとはいえない状況だが、分散共有システムを構築して運用するには便利なシステムだ。興味がある方はOpenAFSをサーバに、クライアントにはAlraを採用して実験検証するといいだろう。

How to write a Device Driver in FreeBSD

FreeBSDデベロッパ、John-Mark Gurney氏

FreeBSDデベロッパであるJohn-Mark Gurney氏からは、FreeBSDにおいてどのようにデバイスドライバを開発するかという発表がおこなわれた。デバイスドライバの開発はいつの時代においても重要な事項。デバイスドライバを開発したり既存のデバイスドライバに改良を加える、または提供されていないデバイスを対応させたいという考えはデベロッパであれば一度は考えることだ。本セッションには多くの聴講者がかけつけた。関係者の関心の高さが伺える。

FreeBSDのデバイスドライバ開発における関連フレームワークは次のとおり。デバイスドライバを開発するには、まずこれらフレームワークの概要を把握しておく必要がある。

  • kld
  • newbus
  • rman/bus_space(9)
  • cdevsw
  • bus_dma(9)
  • sysctl
  • SYSINT

キャラクタデバイスのような一般的なUNIXオペレーションへのインターフェースは次のとおり。

  • open
  • read
  • write
  • ioctl
  • mmap
  • poll
  • selecp
  • close

John-Mark Gurney氏からは具体的なソースコードをとりあげながら、それぞれのAPIをどのように使うのか、APIが処理する内容や注意事項などの説明がおこなわれた。デバイスドライバを開発するには、まずはどれも抑えておきたい内容だ。

そして当然であるが、発表に使ったドキュメントをFreeBSD Handbookに統合しないかという質問がおこなわれた。デバイスドライバ開発に関しては、内部の事情に詳しくないデベロッパが取りかかるにはまとまった資料が少ないのが現状だ。ドキュメントに追加してくれというのは会場の誰しも思ったことだろう。

What is a security flaw?

FreeBSDデベロッパであるColin Percival氏からはThe FreeBSD Projectにおいてどのようにセキュリティ関連の処理がおこなわれているかという発表がおこなわれた。同氏は作業の6割はポリシーの策定であり、技術的な割合は1割程度だと述べた。

FreeBSDデベロッパ、Colin Percival氏

FreeBSDはカーネル、ユーザランド、サードパーティアプリケーションまで包括的なセキュリティ情報が提供されており、カーネルおよびユーザランドにおいては組織化されたセキュリティアドバイザリの提供があるなど、FOSSプロジェクトにおける活動としてはもっとも包括的なもののひとつになっている。

同氏はFreeBSD、Linux、OpenBSD、Intelなどの例をあげながら、どのようなポリシーでセキュリティの処理がおこなわれているかを説明。つぎに、sh(1)のヒアドキュメントに問題があって2つめのヒアドキュメントがコードとして実行されてしまう問題があったが、これをどう扱うのかといった例をあげた。qmailにおいて2GBをこえるメールを受信した場合に問題が発生することに触れ、問題が発覚した当時は「2GBものメールを送ることはない」で問題なかったかもしれないが、現在ではこれは問題ないとは言い切れないだろうという認識をあげ、セキュリティ処理のポリシーに関する難しさを述べた。

どの問題をセキュリティ問題とみなすのかというのは難しい問題である。バグとみなすべきか、セキュリティ問題とみなすべきか、仕様とみなすべきか、それを調査し決定すること、その作業そのものが困難で難しいことだと説明した。また、セキュリティ問題はAPIの使い方を間違ったことに起因することが多いため、APIの詳細な使い方を説明したドキュメントを充実させ、こういった問題を回避していくことが重要だと説明した。

FreeBSD 6系/7系 リリーススケジュール

急遽FreeBSD developer summitに参加できなくなったthe Release Engineering Team, Scott Long氏からは、開発者向けに今後のリリーススケジュールについて報告があった。

FreeBSD 6.2は7月中にフリーズを開始し、9月中にはリリースしたい意向。FreeBSD 6.3は2007年1月ごろ、可能であれば2007年5月にFreeBSD 6.4をリリースしたいとしている。FreeBSD 7.0は2007年5月にはリリースしたい方針だ。

FreeBSD 7.0にはPTY/PTSの変更、TCPロッキングのオーバーホール、BSDInstallerの成果物などが盛り込まれる見通し。同氏は上記スケジュールを踏まえたうえで、デベロッパ各位は自分の活動スケジュールを考えるようにとしている。

BSD Conference Euro 2006 / Asia 2007

BSDCan 2006の開会式では、BSD Conference Euro 2006やBSD Conference Asia 2007についても発表がおこなわれた。BSD Conference Asia 2007について発表したのはGeorge V.Neville-Neil氏。同氏は2007年春を目途に日本でBSD Conference Asiaを開催したい旨を発表。BSDCan 2006同様、国際会議スタイルのカンファレンスで、英語をベースとしたカンファレンスを開催したいとした。

BSD Conference Euro 2006の発表をおこなうPoul-Henning Kamp氏。一番右がBSD Conference Asia 2007を発表したGeorge V.Neville-Neil氏。両者の間にいるのがBSDCan 2006の実質的な主催者であるDan Langille氏

日本と米国は近くて遠い国だ。日本からのThe FreeBSD Projectの参加や貢献はけして少なくない。しかしながら、英語圏からの参加に比べると明らかに露出度が低い。たしかにそこに日本のデベロッパがいることはわかっていながら、実態がなかなか見えてこないのである。

国際会議スタイルのBSD Conference Asia 2007を開催し、両国のみならず世界のデベロッパと日本のデベロッパの間の認識を強めることは、今後のFreeBSDの発展にとって有意義なものになるといえるだろう。その点において、ロカール会議ではなく「国際会議 BSD Conference Asia」を開催することは重要だといえる。

BSDCan 2006 / FreeBSD developer summit をおえて

カナダはオタワにおいて10日から13日(東部標準時)までの4日間、FreeBSDやほかの*BSDデベロッパ、研究者や他のOSの関係者も参加していたが、発表や議論を通し、充実した時間をすごした。

FreeBSDはLinuxに比べるとビジネスやエンタープライズにおける露出度が低い。Red HatやSuSEのように強力なディストリビュータは現われていないし、IBMやHPのように全面的に強力な支援を実施しているビッグカンパニーにも限りがある。もちろんYahoo!やほかの企業のようにFreeBSDを支援している企業も多いが、エンタープライズやビジネス全体から見た場合、FreeBSDはやはりLinuxのようではないのである。

BSDCan 2006のスポンサーたち

ここでもう一度振り返るべきなのは、国際会議 BSDCan 2006はフォーマルなカンファレンスではなく、草の根活動的な国際会議であるということだ。FreeBSDは誕生してから草の根的な活動を根幹として活動してきた。このパワーそのものが、FreeBSDのパワーである。もちろん大手企業数社の資金的援助が得られればもっと多くの作業ができるようになるが、そうでなくてもここまでの活動を実現し、そして世界中で経済活動を支えている。それがFreeBSDである。

BSDCan 2006の反省点や今後の改善点などについて参加者から意見を募るDan Langille氏。ときにジョークを交えながら会場はつねに笑いが絶えなかった。発表者も聴講者もエンターテイメントに対する意識が高く、互いにジョークを飛ばす呵吽の呼吸は日本では見られない欧米ならではのものかもしれない

そしてこのFreeBSDを支えている人々が、まさにBSDCan 2006/FreeBSD developer summitに参加している方々であり、国際会議の運用するパワーになっている。サミットにおける議題もBSDCan 2006におけるセッションも、今後のFreeBSDの方向性を示したものとしてどれも興味深いものだ。時代の流れを把握したものばかりで、今後も重要な位置でありつづけることは当面は変わらないといえそうだ。

盛況のうちに幕を閉じBSDCan 2006。次のカンファレンスは2006年11月に開催されるBSD Conference Euro 2006だ



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