【レポート】

BSDCon 2006 Canada/FreeBSD developer summit - カナダに集結、FreeBSDの頭脳たち

    後藤大地  [2006/05/11]

    カナダの首都はカナダ東南部、オンタリオ州とケベック州のあいだに位置するオタワ。風光明媚な気候風土に、英国とフランスの両文化に立脚した美しい概観を備えた都市で、5月にもなると陽がなかなか落ちず、長い間街を美しく照らしている。カナダの公用語は英語とフランス語。このため看板や案内文に両方の単語が使われており、なんとも不思議な雰囲気をだしている。

    風光明媚な風景 Canada, Ottawa

    2006年5月10日(東部標準時)、このオタワにあるオタワ大学に、現在のFreeBSD開発を実質的に率いているFreeBSDの頭脳たちが集結した。きわめてアカデミックで密度の濃い会議が繰り広げられるこの期間に、FreeBSDの開発に関する多くの議論がおこなわれる。4日間に渡って繰り広げられるデベロッパたちの様子を日本のユーザにお伝えする。FreeBSDの実際の「今」がどういったものであるか、それを少しでも感じていただきたい。

    英語とフランス語の両方で表記された看板

    University of Ottawa

    国際会議 BSD Conference

    FreeBSDの開発はインターネットを通じて世界中でおこなわれる。とくに米国からの参加が積極的だが、欧州、アジア、そしてもちろん日本からも開発者が参加しており、日々開発をおこなっている。議論はメーリングリストやIRCを通じておこなわれる。米国を中心とした開発以外では、日本や欧州の各国のようにローカルに開発者が集結して開発をおこない、米国に成果をバックポートするといったやり方もおこなわれている。

    日本と違い、とくに米国や欧州の開発者は物理的に遠隔地に位置していることが多く、週末に集まって会議というわけにもいかない。ただし、面と向かい合って議論をおこない、開発の方向性や成果物に対する意見収集などをおこなう機会も必要だ。対面での議論は、メーリングリストやIRCを通じておこなわれる議論よりもはるかに濃密で有用な議論が繰り広げられる。何につけても意志の疎通がてっとりばやくすむ。

    その代表的な存在がFreeBSDデベロッパの国際会議であるBSD ConferenceとFreeBSD developer summitだ。これまで米国、欧州、カナダで開催されており、世界規模でみると年に1回から2回の頻度で開催されている。歴史を遡ると90年代後半にはすでにBSD Conferenceに相当する国際会議が催されている。今回のBSDCon 2006 Canadaのように学術色の強いきわめて高度な発表がおこなわれるBSD Conferenceは、今回で5回目か6回目になる。

    FreeBSD developer summit

    BSD Conferenceに付随しておこなわれるサミットがFreeBSD developer summitである。今回は10、11日(東部標準時)にFreeBSD developer summitが開催され、12、13日(東部標準時)にBSD Conferenceが開催される。

    BSD Conferenceは国際会議色が強い発表会で、事前に発表論文の募公募をおこない、審査に通過した論文を発表するといったスタイルになっている。これはFreeBSD committerに限らず、だれでも投稿することができる。雰囲気は国際学会に近いものがあり、採り上げられる論文もFreeBSDの設計や実装、新しい技術に関するものやテクニカルなものなど、きわめて高度な内容がそろっている。

    BSDCon 2006 Canada / FreeBSD developer summit 開催場所

    それとかわってFreeBSD developer summitは、FreeBSDデベロッパが一同に集結し、思い思いに議題を提案しては議論をおこなうサミットだ。日本ではほとんど開催されることがないスタイルである。日本においてもいくつかのユーザグループはこれに近い取り組みをおこなっているところがあるが規模が小さい。FreeBSD developer summitは集結する人数も関係者のレベルの高さも桁が違う。まだ1日目の参加だが、すでに3~40名のデベロッパが参加している。日本からは5名ほどの開発者や関係者が参加している。

    要するにFreeBSD developer summitは今をときめくアクティブなFreeBSD developerが集結する会議でありあり、多くの方針に関与する議論がおこなわれ、デベロッパ間の共通認識が育てられるものである。

    そして注目するべきは、BSD ConferenceもFreeBSD developer summitも、The FreeBSD ProjectやThe FreeBSD Foundationが主催している正式なカンファレンスやサミットではなく、あくまでも主催したいデベロッパによって開催されている草の根的な活動だということだ。草の根活動でここまで活動するパワーがFreeBSDの特徴ともいえる。

    BSDCon 2006 Canada / FreeBSD developer summit

    アジアにおける状況

    アジアにおいても過去何度かBSD Conferenceという名前がついた会議は開催されているが、今回取材しているBSDCon 2006 Canadaとはほとんど別物だ。国際会議であるBSC Conferenceの方は主催したいデベロッパが中心になって開催しているもので、地域や担当者によって内容や趣旨が異なる。

    日本でも過去何度かBSD Conferenceという名のもとにカンファレンスが開催されているが、欧米やカナダで開催されているものとは規模も内容もかなり違う。日本やアジアで開催されているカンファレンスは、どちらかというとビジネスカンファレンスのような色合いが強い。発表も論文を公募したものではないし、ローカル会議だから発表も日本語などが使われる。国際会議ではないのである。

    余談だが、黎明期に比べると日本からのFreeBSDに貢献は少々露出度が減少傾向にある。FreeBSDデベロッパは英語の上手下手に関してかなり寛大だが、それでもやはり言語の違いは、そのまま日本から本家メーリングリストやIRCへの参加の足かせになっていることは間違いないところだ。

    このような現状を鑑みるに、日本においても定期的にFreeBSD国際会議の機会を設けることが、今後の日本と世界の開発者間における柔軟な意志の疎通実現や、日本におけるデベロッパ啓蒙において重要ではないかと考えられる。このため日本において世界中のデベロッパを対象とした国際会議スタイルのBSD Conference開催する必要があるのではないかという認識が日本のデベロッパの間でも広がりつつある。

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