【レポート】
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神戸空港ターミナルの森井章二代表取締役社長 |
最後に、ユビキタス空港情報提供サービスの実験会場となった神戸空港ターミナルの森井章二代表取締役社長が、今回の実証実験および今後の発展について、様々な思いを語ってくれた。
森井氏によれば、神戸空港ターミナル内には、ユビキタス・コミュニケータ(UC)などへ情報提供を行う無線ICタグ(RFIDタグ)が約1,200個設置されており、そしてそのほとんどが、ターミナル施設のフロア床下に埋め込まれているという。基本的に365日オープンする空港全体が、これほど大規模なユビキタス情報提供サービスを行うには、困難なプランニングや作業が求められる。しかしながら、ちょうど建設工事に入る前に、タイミングよく「自律移動支援プロジェクト」のモデル施設となるプランが出された。森井氏は非常に嬉しかったと語る。
同氏は、だれもが利用しやすいユニバーサルな空港を造っていく上で、「いつでも、どこでも、だれでも」アクセスでき、恩恵が受けられるサービスの提供を目指すという点において、ユビキタス社会とは、共通するビジョンがあると感じているという。
例えば神戸空港では、点字ブロックの代わりに、電子白杖とユビキタス・コミュニケータのコンビネーションで、視覚障害者向けのサポートを提供する方針が採用された。視覚障害者誘導ルートは白いラインで引かれており、そのため、ターミナル内のフロアは凹凸のない、お年寄りや車イスの利用者にとっても、より移動しやすい環境になっているという。自律移動支援プロジェクトの実証実験は、これまで主に屋外で行われてきたが、同氏は、限られたスペースで多くの人にサービスを提供する必要がある、屋内の施設で導入する価値が、これから高まっていくと感じているようだ。
また、とかく障害者に向けたサービスが強調されがちだが、同氏は、「基本的にはすべての人に優れたサービスを提供できる完成度に仕上がっている。だからこそ、いろいろなハンディキャップを抱える人にも便利なサービスを提供できる」という流れを大切にしていきたいと語った。
一例としては、これから食事をしたいのだが、どのレストランで、何を食べようか? こんな状況で、わざわざ各レストランの前まで行かなくても、その場に居ながらにして、ユビキタス・コミュニケータ上で次々と欲しい情報を閲覧できる。また、災害が発生して、緊急避難が求められるが、現在位置からの最も安全な避難ルートはどこだろうか? この場合、緊急モードとなったユビキタス・コミュニケータが、適確な最新情報でナビゲーションを行う。こうしたサービスは、だれにとっても便利なサービスであり、その延長線上に立って考えることで、より障害者にとって優しいサービスを膨らませていくことができると、同氏は考えている。
その観点から見るならば、ユビキタス・コミュニケータで実現するサービスは、まだまだ発展途上の段階にあるという。提供コンテンツの充実もさることながら、同氏は「やはり最大のネックは、特殊な専用端末を必要とする点にあるのではないでしょうか。携帯電話ならばどうでしょう。もう今ではほとんどの人が使っています。最終的には、ユビキタス・コミュニケータのようなデバイスではなく、この携帯電話でサービスを利用できるようになるでしょう。それも今のような携帯電話ではありません。例えばそのサイズが、腕時計のように、身に着けていても邪魔にならないくらいにまで進化していき、機能もユビキタス・コミュニケータと一緒になったら、本当にすばらしいでしょうね」と、今後の課題を指摘した。
同氏は、これまで見てきた、一連のユビキタス空港情報提供サービスの準備・実験段階の期間だけでも、技術革新が目まぐるしく進む様子を感じ取ることができたという。フロア床下にRFIDタグを埋め込む工事は大がかりだったものの、店先に貼った「ucode」シールに、ユビキタス・コミュニケータをかざすだけで、情報を得ることができる。この仕組みを初めて知り、体験したときは、同氏も驚いたそうだ。
また、今回の実証実験には間に合わなかったが、大型スクリーンを装備した「街角情報ステーション」の設置も計画されているという。街角情報ステーションは、ユビキタス・コミュニケータが近づくと認識するセンサーを備え、ユーザーに応じた案内をスクリーンに出すほか、コンテンツのダウンロードセンターとしての役割ももつという。
ユビキタス・コミュニケータの実用化に関しては、まだ具体的なスケジュールは明らかにされておらず、しばらくは今後も、バージョンアップした実証実験が続けられるとされている。幾らか課題の残る実験結果が届いてもいるという。とはいえ、より鮮明に"ユビキタス"をイメージできるデバイスやサービスが姿を現し、未来のユビキタス社会に向けた研究開発が、着実に進歩していることを少なからず実感できた。その意味においては、大きな期待を抱かせる完成度のサービスであったと、筆者は感じている。
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