【レビュー】

最強の毛筆シミュレーションソフト現る? MoXiレビュー

1 東洋の画材、毛筆をデジタルで再現することができる?

大賀葉子
 
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とことん毛筆のにじみにこだわったシミュレーションソフト

ペイントシミュレーションソフトの代表格の「Painter」(現在は「Corel Painter」)を長年愛用している私だが、デジタルでイラストレーションを描き始めた頃には、毛筆の描き味を何とかパソコン上で再現できないかと苦労したものだった。もともと日本画を専攻していたし、毛筆でイラストレーションを作成していた時期もあったので、毛筆の描き味をデジタルで再現することは私にとって重要な課題だった。

演算星組のペイントツール「Mac書道Pro」や「Mac書道山水」も使ってみた。墨汁っぽさでは満足できたのだが、解像度の不自由さなど使いづらい点もあった。「Painter」で毛筆と言われているブラシはあまり毛筆っぽくないので、ほとんど毛筆系ブラシは使っていない。

ある日、「一週間でマスターするPainterIX」の編集者に紹介されて、「MoXi」のサイトを訪れた私は、本当に驚いた。そのリアルさだけでなく、水やインクが影響し合う様子は、これまでのどのソフトよりも筆と半紙の関係を理解していると思えた。さすがに中国系(サイトでは英語だが)の開発者ならではである。薄墨や、水がしみて滲む、筆からぽたりと落ちる、それらをこのソフトは理解し、再現しているかのように見えた。

花を描いて、周りにスプレイモードで筆からポタポタ(というよりひゅっと飛ばす感じだが)絵の具を落としてみた。描いた直後は、色が干渉しあうのだが、時間を置くとインクのアウトラインが乾燥していき、色は完全には、混ざらなくなっていく。時間の経過もこのソフトの面白い要素になっている。スプレイモードはまだまだコントロールなどに調整が必要だが3D的に筆を上の空間から絵の具を飛ばすという発想が面白い。

さっそくこのソフトウェアを研究・開発している(リアルタイム・インク・シミュレーションとある)一人であるNelson Chu氏にメールを書いた。彼は、香港科技大学(Hong King University of Science and Technology)のコンピュータ科学学部の博士課程に在籍し、研究の一環としてこのソフトウェアを研究・開発しているという。

「このソフトウェアは本当に素晴らしい! 発表する時期を是非教えてください! それはMacでは使えますか?」と書いたところ、Chu氏は「まだ、プロトタイプ段階ですが、試してみますか? ただ、スムーズに動作させるには、かなりハイスペックなグラフィックカードが必要です。でもMacでは残念ながら動きませんよ。」と返事が届いた。Intel Macが出るよりも前の話だ。FAQを見ると、グラフィックカードは、最低でもNVIDIA GeForce 6600、スムーズに動かすならGeForce 6800 Ultra以上が必要とのこと。というのも、MoXiはインクのシミュレーションとレンダリングをGPUで行う設計になっているからだ。「試したいけれど、新しいWindowsマシンとグラフィックカードをいきなり買うのは無理です。商品化するときは教えてね」と返事を書いて泣く泣く諦めた。

さて、数カ月が経ち、編集者のとりなしで、MoXiの動くNVIDIA GeForce 7800 GTXを搭載したデルのトップエンドマシン「XPS 600」を、試用させて頂けることとなった。現在MoXiはプロトタイプ段階で、ここそこにバグなども残っている。それについては置いておいて、現在使える機能について書いてみたい。

MoXiとは、「墨戯」つまり「インク遊び」という意味の中国語だそうだ。そう言われてみればトップページのChu氏の筆文字にはそう書いてある。しかし、彼はこれを書道・水墨画のシミュレーションに留まらず、毛筆による絵画やアーティストによる使用に重点を置いて作っているそうだ。

何よりも特筆したいのは、そのインク(墨、と表現したいが色も使えるのでとりあえずインクとする)のしみこむリアルさだ。MoXiのサイトにはムービーを多数用意していて、その様子や動きを見ることができるので参照して頂きたい。

半紙に描かれたインクの色のまわりに、薄い水のしみこみを作り、線の中心がかなり濃くなって、また乾燥して少し明るめの色に変化していく様子が、リアルタイムで目の前に再現されるのだ。しかも、他の色や水だけのブラシをその上に加えることで、インクや水が干渉し合ったり、混合されてさらに広がったりしていく様子は、コンピュータ上での出来事とは思えない。よくぞここまでやってくれた。ある意味、ここまで本物とそっくりなら、初心者さんが何の抵抗もなく入っていけるのではないだろうか。いや、小学生の書道の時間はすべてMoXiでいいかもしれない、とまで夢想してしまえる。実際、Chu氏に訊くと、「私達も小学生の時に書道を習います。書道のシミュレーションは私の目指すもののひとつです。」とのことだ。確かに、サイトには彼自身が書いた書道の作例もたくさん載っている。さすがに達筆だ。

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インデックス

目次
(1) 東洋の画材、毛筆をデジタルで再現することができる?
(2) シンプルなインタフェースと毛筆ならではのカラーや水分量の設定
(3) どうしてこんなに目立つ"3D筆"のインタフェースが必要なのか?
(4) 水分がなくなると割れるデジタルの毛筆

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