【レポート】

日本問題とITによる貢献 - P・ドラッカーの日本への遺言を考える

1 日本の抱える2つの社会的課題

    近勝彦  [2006/05/08]

    はじめに

    世界的な経営学者、P・ドラッカーは、2005年11月に亡くなられた。彼は、95年に及ぶ生涯の中で、実に多くの著述を残した。その代表的なものとして、「経営者の条件」、「断絶の時代」、「マネジメント」、そしてここで取り上げる「ネクストソサエティ」がある。これらの著作は、どれも多くの示唆に富んでおり、彼は、「近代経営学の父」と呼ばれたのである。

    そのドラッカーは、「ネクストソサエティ」(上田惇生訳、ダイヤモンド社)の中で、今の日本問題を鋭く指摘している。この本の「日本の読者へ」の中で、「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとっての最大の問題は社会のほうである」、と喝破している。その日本の社会制度や国家政策や社会慣行は、戦後長らく有効に機能していたが、現在は、そのどれも機能不全に陥り、その改革が急務であると指摘しているのである。

    人が作ったものは、建物や生産設備などのハードウエアであり、社会制度や社会慣行などのソフトウエアであれ、数十年もたてばすべては老朽化し、新たな再構築(rebuilding)が必要であろう。

    日本の多岐にわたる社会問題のすべてを取り上げることは、紙面の関係で到底出来ないので、ここでは、2つの大きな社会的課題の全体像を眺めた後に、IT資本によるそれへの貢献の可能性を論じてみたい。その2つの課題とは、第一が、「少子高齢化と社会保障関係費増大の問題」である。第二は、「日本社会に進行しつつある格差社会の実体」である。それを、「IT資本への社会領域への応用」によっていかに解決していくかである。この2つはきわめて大きな課題であり、ここで詳細に議論できないので、そのポイントのみを示し、今後の論議のさきがけとしたい。

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