【レポート】

小規模制作のCGアニメがメディアを席巻中「蛙男」「くわがたツマミ」って?

    野口智弘  [2006/04/19]

    少人数制作によるCGアニメーション業界が活況を呈している。アニメーション作成ソフトなど製作環境が充実することで作り手側の敷居が下がっている一方、ここ数年でPCやモバイル端末での動画配信が一般化したことから、配信サービスを手がける側は常に新しいコンテンツを求めており、需要側と供給側双方の要求がここに来て合致した形だ。『ほしのこえ』『スキージャンプ・ペア』『惑星大怪獣ネガドン』など、業界外から見ていても個人作家主導によるCGアニメーションが商業性を備えた形で表舞台に登場してきている印象を受ける。

    今月5日からは、その先駆けとして蛙男商会によるアニメ番組『ザ・フロッグマン・ショー』がテレビ朝日などで放送されている。ネット上で公開されていたFlashアニメが好評となり、テレビ地上波進出という快挙を果たした。深夜帯ながら視聴率も放送2週目で各局中2位につけており上々とのこと。同じくFlashアニメ作品で現在人気を呼んでいるのが、CGアニメ作家のラレコ氏が制作した『くわがたツマミ』『やわらか戦車』という一連のシリーズ。ラレコ氏本人の歌に乗せて動き回るキャラクターのかわいらしさがネット上で評判となり人気コンテンツに。『くわがたツマミ』の公式サイトは公開2カ月で100万以上のアクセスを記録。同キャラクターの着メロや着うたも配信され、グッズ化も進行中という。Flashアニメは比較的低予算でも工夫次第で個性的な作品が成立することから、最近とくに注目が高まっている。

    テレビ朝日と朝日放送にて毎週水曜深夜26時台放送中の『ザ・フロッグマン・ショー』より。制作者であるFROGMAN氏が脚本・監督・作画・声優のほとんどをひとりでこなす。(c)蛙男商会/DLE

    クワガタムシのパパと人間のママの間に生まれた『くわがたツマミ』。そのキュートな活躍ぶりは毎週公式サイトにてアップされている。4月19日現在11話まで公開中。(c)ラレコ/(c)SUCCESS

    こうしたムーブメントをバックアップする試みとして、3月に開催された東京国際アニメフェアでは、新進気鋭のCGアニメ作家を紹介する「クリエイターズワールド」が行われた。様々な形でCGアニメに情熱を傾ける、4人の制作者の方にお話をうかがうことができたので、厚みを増しつつある業界の経過報告として、ここで駆け足で紹介しておきたい。

    アート系の若手作家の筆頭とも言えるのが半崎信朗氏。シュールレアリスム絵画がそのまま動き出したかのような作品『Birds』は「デジタルクリエイターズコンペティション2005」の最優秀賞、「平成17年度文化庁メディア芸術祭」短編アニメーション部門の推薦作品に選ばれるなど各方面の識者から絶賛を浴びた。もともと絵画を手がけていた半崎氏は、CGアニメの絵画と音楽を組み合わせられる点に魅かれたということで、音楽も自作。映像面だけではなく、トータルで演出された同作品は非常に高い完成度を誇る。アニメフェアでは現在準備中の新作も一部公開されていた。

    半崎氏と代表作『Birds』

    『Birds』では「都市も生物である」というテーマを表現。色味を抑え、画面にもノイズを施して独特の味わいを演出した。(C)ToshiakiHanzaki

    同じく若手ながら、鉄やブリキといった古めかしい機械が大活躍するFlashアニメで存在感を示すのが塚原重義氏。巨大なネズミ駆除機がネズミ相手に暴走する近作『ウシガエル』は「第三回インディーズアニメフェスタ」と「BroadstarAWARD2005」でグランプリを獲得した。「機械なんだからということでどれも人型ではない変な形にしています」と語る塚原氏が生み出した機械は、いわゆる人型ロボットではないもののどこか妙に人間くさい。どの作品もすでに塚原流と言うべき独特のレトロフューチャー感を漂わせている。

    イラストのようにどこか和風の機械描写を得意とする塚原氏。「雰囲気を出すことを一番に考えるので、ストーリーは後付けが多いですね」とのこと。(C)2006 TSUKAHARA Shigeyoshi

    個人のCGアニメ作家というと、大学生や専門学校生といったイメージがあるが、花房真氏はカプコンの人気ゲーム『鬼武者3』などでムービーCGアートディレクターを務め、現在も日本のエンターテインメント業界の最前線で活躍している。「大人数で制作するゲームのCGムービーとは違って、ひとりでやれる規模のものを日曜大工的に作っています」と謙遜気味に語る花房氏の展示ブースでは「不気味だけどかわいい」と「未来の道具」をキーワードとしたオリジナルの作品が並べられており、その出来はさすがのひと言。仕事と趣味(?)の創作活動を両立させている花房氏の姿勢から得るものは多い。

    花房氏と、出展された「FRANKEN GENIE」。PS2のコントローラを操作すると画面の怪物が様々な動きを示すインタラクティブ作品。(C)花房真

    Flashアニメを活用したスピード感のある動きで、ポップなキャラクターをさらに魅力的なものとしているのがルンパロ氏。本職はイラストレーターで、自作のキャラクターに動きをつけることによって性格も演出できるのがFlashアニメの魅力だという。またルンパロ氏はWEBアニメイベント「JAWACON(=Japan Web Anime Convention)」のプロデューサーとしても知られている。個人活動と思われがちな業界において横の連帯を取り、作品制作だけでなく、作品の流通まで視野に入れたルンパロ氏の活動の重要度は非常に高い。クリエイティブな仕事に長く携わっている同氏ならではと言える。

    ルンパロ氏とキャラクターのヌペペ。公式サイトではプルプル震えて小気味よく動くFlashアニメが楽しめる。病院の待合室などに向けた子供の案内用ソフトも開発中という。(C)2006 rumparo-tita

    こうしたさまざまな経歴を持つ人たちが、それぞれのスタンスでCGアニメ制作に取り組んでいるからこそ現在の活況がある。今後も多彩なCGアニメ作品が発表されることを期待しつつ今後も注目してみたい。

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