【レポート】
続いて電気通信大学の伊藤毅志氏が、認知科学の観点から将棋における人間とコンピュータの思考方法の違いについて解説した。
伊藤氏は「人間はどのようにして将棋のような複雑なゲームをプレイしているのか」という観点から、2つの実験結果を紹介した。一つは将棋のある局面を画面に出し、被験者はそれを記憶した上で空の盤面に再現するテスト。実際にある対局の途中の局面でテストを行ったところ、アマチュア初級者と上級者・プロ棋士ではあきらかに視線の動き方が異なるほか(記憶にかかる時間もプロ棋士の方が圧倒的に短い)、正解率も大きく差が出たという。一方同じテストをランダムに生成した局面(実際にはまず起こりえないような局面)で行ったところ、正解率はアマチュア初級者もプロ棋士もほぼ同じ数字になったということで、伊藤氏は「強い人になればなるほど経験で局面を記憶する」と語った。
もう一つは実際のある将棋の対局図を見て次の一手を予想してもらいその、思考過程を比較するというテスト。この場合も強い人になればなるほど局面の理解・候補手の生成にかかる時間が短く、さらにその後の読みについても「読みが非常に直線的なうえ、あまり深い手数は読まない」という結果が出たとのこと。これに対してコンピュータ将棋では前述の通り非常に多くの手を探索する上、読みの手数も深いという違いがあり、「プロ棋士と鶴岡さん(=激指)は正反対の方向に向かっている」と伊藤氏は指摘した。
伊藤氏は「人間同士の対局は、結局はいわゆる『大局観』同士の戦い」「さらに『人間はミスをするもの』という前提に立って、相手に揺さぶりをかけたり、逆に早い段階で大差をつけようとしたりする」と述べた上で「コンピュータ将棋は人間から見ると非常に歪な進化をしている」と語った。
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